第4話 大会開始
会場に着いた瞬間、奏多は足を止めた。
「……結構いるな」
大会用に設けられた会場には、すでに多くの参加者が集まっている。
受付へ向かう人。
試合を待つ人。
モニターを見上げる人。
奏多が周囲を見回す。
「初心者大会って、もっとこう……初心者ばっかりなのかと思ってた」
「ん?」
栞が振り返る。
「初心者大会じゃないよ?」
「え?」
「誰でも参加できる大会だよ」
「……誰でも?」
「うん」
栞は何でもないことのように答えた。
「初めて大会に参加した人には、キーホルダーがもらえるだけ」
「……あ」
奏多が固まる。
「じゃあ、初心者しかいないわけじゃないの?」
「最初からそう言ってないけど」
「……」
奏多は改めて周囲を見回した。
どうやら自分は、とんでもない勘違いをしていたらしい。
「結構、強い人もいるよ」
栞がそう言った。
その言葉に、奏多は会場を見渡す。
あちこちで試合が行われている。
参加者たちの動きは、前日の練習で見たものとは明らかに違っていた。
「……なるほど」
奏多は少しだけ表情を引き締めた。
*
三人は受付を済ませる。
「こちら、大会終了後にお渡しします」
係員から渡された案内には、参加記念のキーホルダーについて書かれていた。
「大会の後なんだ」
栞が少し嬉しそうに反応する。
奏多はその様子を横目に見ながら、受付を離れた。
「じゃ、行こうか」
三人は試合会場へ向かった。
会場内には、すでにいくつもの試合が行われている。
実際に戦っている選手。
その試合を取り囲む観客。
そして、試合の情報を映し出す大型モニター。
奏多はそれらを眺めながら歩いていた。
前日の練習とは、やはり雰囲気が違う。
今日は本番だ。
しばらくして、奏多はアプリの選択画面を開いた。
(アプリとはアクションプリセット、武器3種など競技用の設定のことである)
画面には、いくつものアプリが並んでいる。
その中に、一つの名前が見えた。
――最強。
奏多は迷うことなく、それを選択した。
「決めてます」
そう言って、奏多は画面を閉じる。
栞には、そのアプリの中身までは分からない。
奏多は少しだけ笑った。
「どうせなら勝ってきます」
その言葉を残し、奏多は試合会場へ向かった。
*
やがて、奏多の試合が始まる。
対戦相手が姿を現した。
奏多も試合場へ入る。
向かい合う二人。
会場の空気が静まっていく。
そして――
ゴングが鳴った。
奏多の手元に、大剣が生成される。
対する相手が選んだのは、大鎌。
両者が武器を構えた。
その頃、会場のモニターには試合に関する情報が表示されていた。
奏多の使用アプリ。
その構成。
表示された内容を見た栞の目が大きく開く。
「えぇ!?」
隣にいた黒瀬もモニターを見る。
「俺と同じか」
黒瀬は奏多のいる試合場へ視線を移した。
そして、小さく呟く。
「見てたのかな」
「……あちゃー」
栞は困ったような顔をした。
だが、試合はもう始まっている。
奏多は大剣を構え、相手へ向かって踏み込んだ。
「いけっ!」
振り下ろす。
しかし――
避けられた。
奏多はすぐに切り返す。
もう一度。
さらにもう一度。
大剣が空を切る。
ブンッ。
ブンッ。
その間にも、相手の大鎌が奏多を狙う。
次の瞬間。
大鎌の刃が奏多を捉えた。
「ぐっ……!」
奏多が後退する。
モニターの数値が減少する。
まずい。
そう思った奏多は、再び距離を詰めた。
大剣を振る。
届かない。
もう一度。
届かない。
それに対して、大鎌は届く。
「くっ!」
奏多は一度、距離を取った。
大剣を見つめる。
このままでは当てられない。
なら――。
奏多は武器を切り替えた。
大剣が消える。
次の瞬間。
新たな武器が生成される。
ガトリング。
奏多は構えた。
そして、引き金を引く。
大量の弾丸が放たれた。
相手はすぐにシールドを展開する。
弾丸がシールドに弾かれる。
だが奏多は止まらない。
射線を変える。
相手が避ける。
さらに撃つ。
そのうちの数発が、相手を捉えた。
観客から声が上がる。
「おっ!」
栞も身を乗り出した。
「いい!」
奏多の口元が緩む。
当たる。
さっきまでとは違う。
相手が押されている。
奏多はさらに撃った。
撃って、撃って、撃ち続ける。
「いける!」
その瞬間だった。
ガトリングのエネルギー表示に警告が出る。
しかし、奏多は気づかない。
まだいける。
そう思って撃ち続ける。
そして――
「……あれ?」
引き金を引いた。
何も起こらない。
「……あれ?」
もう一度。
撃てない。
画面にエネルギー切れの表示が出た。
奏多の顔が固まる。
その向こうで、相手が動いた。
距離を詰めてくる。
「え……」
奏多が後退する。
相手の大鎌が大きく振り上げられた。
奏多の表情が強張る。
次の一撃が――迫る。




