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第5話 初めての試合

ガトリングの銃口が火を噴く。


 しかし――


 弾が出ない。


「……あれ?」


 奏多はもう一度引き金を引いた。


 やはり、何も出ない。


「まずいまずい!」


 視線の先では、相手が大鎌を振りかぶっている。


 奏多は慌てて武器を切り替える。


 ガトリングが消え、大剣が生成された。


 間に合った――と思った瞬間。


 大鎌が振り抜かれる。


 奏多の身体を刃が通り抜け、視界にダメージ表示が走った。


「うわっ!」


 奏多はたたらを踏む。


 すぐに体勢を立て直し、大剣を構えた。


「よし……!」


 相手がこちらを見る。


 その口元が、わずかに笑った。


「……!」


 奏多はその意味を考えるより先に、前へ出た。


「このぉ!」


 大剣を振りかぶる。


 相手は逃げない。


 むしろ、ほんの少しだけ距離を取って大鎌を構えた。


 その構えを見て、奏多の頭に最初の攻防が蘇る。


 ――大鎌に、大剣は不利だ。


「うぅ……」


 分かっている。


 でも、ここで引いたら攻められない。


「……行く!」


 奏多は踏み込んだ。


 大剣を振り下ろす。


 その瞬間――


 カァンッ!


「えっ!?」


 大剣が弾かれた。


 大鎌ではない。


 いつの間にか相手の手元に現れていたシールドが、大剣の一撃を正確に受け止めている。


「ジャストガード……!」


 奏多が目を見開く。


 相手はすぐさまシールドを構え直した。


「まだっ!」


 奏多は横薙ぎに大剣を振る。


 カァンッ!


 まただ。


 シールドが、寸分違わぬタイミングで大剣を受け止める。


「うそぉ!?」


 直後――


 パキィンッ!


 大剣に亀裂が走った。


「え?」


 次の瞬間、大剣は光の粒となって砕け散った。


「武器、壊れた!?」


 観客からも歓声が起こる。


 その中で、栞が思わず声を上げた。


「そう来るかー!」


 驚きと悔しさの混じった声だった。


 奏多は一瞬だけ呆然としたが、すぐに顔を上げる。


「……武器変えよう!」


 中央のリングが光る。


 次に奏多の手に現れたのは、ブレード。


 ほぼ同時に、相手も武器を切り替える。


 現れたのは――ガトリング。


「また変えた!」


 観客から声が飛ぶ。


「スタート!」


 合図と同時に、ガトリングが連射を始めた。


 奏多は横へ飛ぶ。


 一発。


 二発。


 三発。


 弾丸が次々とすり抜けていく。


 奏多は走る。


 また避ける。


 さらに避ける。


「速い速い!」


 栞の実況が飛んでくる。


「……!」


 奏多は思わず笑った。


 さっきまで大剣で攻めあぐねていたのが嘘みたいだ。


 避けて、走って、隙を探す。


 次の弾をかわした瞬間――


「そこだ!」


 一気に踏み込む。


 ブレードを振り抜いた。


 ズバッ!


 命中。


「おぉー!」


 観客が沸く。


「やった!」


 奏多も思わず声を上げた。


「いけるいける!」


 栞が拳を握る。


 相手も一瞬、驚いたように目を見開いた。


 だが、すぐに表情を戻す。


 そして後ろへ下がる。


 距離を取った。


 ガトリングが再び奏多を狙う。


 連射。


「くっ!」


 一発をかわす。


 次の一発もかわす。


 しかし――


「うわっ!」


 弾が奏多を捉えた。


 さらにもう一発。


 前へ出ようとしても、弾幕がそれを許さない。


「くそっ!」


 奏多は武器を切り替える。


 ブレードが消え、大剣を選択する。


 ――しかし。


 大剣が生成されない。


「……あれ?」


 奏多はもう一度操作する。


 それでも出ない。


「なんで!?」


 視界のUIを確認する。


 そこに表示されていたのは、エネルギー不足の表示。


「しまった!」


 武器を次々と切り替えた。


 その消費が、ここで響いた。


 相手がガトリングを構え直す。


 照準が奏多を捉えた。


「あっ!」


 栞の声が響く。


 奏多も気付いた。


 だが、今からでは間に合わない。


 ガトリングが一気に火を噴いた。


 奏多に次々と弾が命中する。


「うわっ!」


 さらに被弾。


 ガトリングの弾が奏多を捉える。


 視界に次々とダメージ表示が走る。


 奏多の動きが止まる。


 そして――


 KO。


 試合終了の表示がフィールドに浮かんだ。


 奏多はその場に立ち尽くす。


 負けた。


 初めての大会。


 初めての試合。


 そして――初めての敗北。


 相手が近づいてくる。


 二人は向かい合い、礼をした。


「ありがとうございました」


「ありがとうございました」


 頭を上げると、相手が少し笑った。


「強気だったな」


「……え?」


「武器、何回も変えてたろ」


「ああ……」


 奏多は自分の手元を見る。


「いっぱい使ってみたくて」


「ははっ。なるほどな」


 相手はそう言って、自分の戻る場所へ歩いていった。


 奏多もその背中を見送り、フィールドを後にする。


「結城くん!」


 栞が駆け寄ってきた。


「惜しかったね!」


「何発か当たったのになぁ」


「うん!」


 栞はすぐに頷く。


「ブレードのとき、結構よかったよ!」


「そう?」


「うん!」


 二人は会場を歩きながら、さっきの試合を振り返る。


「ガトリング、弾切れにならなかったらなぁ」


「でも、武器いっぱい使ったね」


「……うん」


 奏多は少し考える。


「難しいね」


 負けた。


 悔しい。


 けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。


 もっと上手くなれば、もっと戦える。


 そんな気がする。


「もっと練習しよう」


「うん!」


 二人は受付の方向へ歩いていく。


 すると――


「あれ?」


 前方に人だかりができている。


「なんだろ?」


 奏多が人だかりを見る。


 その隣で、栞の足が止まった。


 受付の近くで、何かが配られている。


 キーホルダー。


 栞は、それを見つめた。


「……」


 奏多はまだ試合のことを考えている。


 あそこで武器を変えたら。


 もっと早く攻めていたら。


 エネルギーを残していたら。


 そんなことを考えながら歩いている。


 その隣で、栞はキーホルダーを見る。


 配布は続いている。


 栞は何も言わない。


 ただ、その表情には少しだけ複雑なものが浮かんでいた。


 奏多は、まだ気付いていない。


 ――次回「キーホルダー」

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