第19話 手裏剣流星群
体育館の一角。
森下と優が、フィールドで向かい合っていた。
「じゃ、やろっか」
「はい。お願いします」
優は少し緊張した様子でグリップを握り直す。
その少し離れたところでは、奏多がカカシと向かい合っていた。
森下との試合を断ってまで続けたかったトレーニングだ。
同期の練習の成果はやはり気になったのだろう。付いてきていた。
グリップを振る。
また振る。
先ほど掴みかけた感覚を確かめるように、黙々とカカシへ攻撃を繰り返している。
そして、フィールドでは試合が始まった。
森下の手にはブレード。
優の手には短い刀。
その周囲には、いくつもの手裏剣が浮かび上がる。
「ニンジャか」
「はい」
優は刀を構える。
森下もブレードを構えた。
先に動いたのは優だった。
距離を保ったまま、手裏剣を放つ。
一発。
森下は身体をずらしてかわす。
続けてもう一発。
今度はブレードで弾いた。
さらに一発。
「おっ」
森下に当たる。
小さなダメージ。
だが、森下の目は優から離れていない。
その隙に、優が踏み込んだ。
狙うのはブレードではない。
森下本人。
手裏剣で動かし、刀を直接通す。
優が刀を振る。
だが、森下は慌ててブレードを合わせなかった。
すっ、と一歩だけ後ろへ下がる。
「……!」
優の刀が、森下の目の前を通り過ぎた。
届かない。
直後、森下のブレードが伸びる。
こちらは届く。
「っ……」
優に攻撃が入った。
すぐに距離を取る。
自分の刀を見る。
そして、森下のブレードを見る。
ほんのわずかな射程の差。
だが、そのわずかな差を、森下はきっちり使ってくる。
優はもう一度、手裏剣を放った。
森下は一発目をかわす。
二発目をブレードで弾く。
三発目が腕に当たった。
「また当ててくるなぁ」
森下が苦笑する。
その間に、優は先ほどとは少し角度を変えて踏み込んでいた。
刀を振る。
森下は、また一歩だけ下がる。
届かない。
すぐにブレードが返ってくる。
今度は優も刀を合わせた。
刀とブレードがぶつかる。
優はすぐに刀を引いた。
まともに打ち合い続ければ、耐久の低い刀の方が先に苦しくなる。
森下は無理に追ってこない。
ブレードを構え、優の出方を見ている。
優は少し考え、スキルを選択した。
「耐久保護」
発動。
それでもニンジャを使い続ける。
再び手裏剣。
一発を森下がかわす。
もう一発をブレードで弾く。
次は当たる。
「ちぃっ」
ダメージは小さい。
だが、何発ももらいたいものではない。
そのうえ、手裏剣に気を取られれば、優は刀を持って踏み込んでくる。
また手裏剣が飛ぶ。
森下は横へ動いてかわした。
「これ、地味にやだなぁ……」
スキルを選択する。
「通信妨害」
発動。
優が次の手裏剣を放つ。
「……」
手裏剣を使うたび、mAhへの負担が重くなる。
それでも優はニンジャを解除しない。
「装填」
わずかに優のニンジャのエネルギー(mAh)が回復する。
さらに手裏剣を放つ。
森下が一発をかわす。
もう一発をブレードで弾く。
そこへ優が踏み込んだ。
刀を振る。
森下のブレードとぶつかる。
優はすぐに刀を引いた。
刀の耐久も苦しくなってきている。
「リペア」
優はまたスキルを使った。
ニンジャの武器耐久が少し回復する。
森下はその様子を見ていた。
耐久保護。
装填。
リペア。
そこまでして、ニンジャを残そうとしている。
「……」
森下は試合時間を確認した。
もうすぐ一分。
「……ああ」
理由に気づく。
スペシャルだ。
優は、そこまでニンジャを持たせようとしている。
また手裏剣が飛んでくる。
森下がかわす。
続けて飛んできた一発をブレードで弾く。
そこから優が踏み込んだ。
刀。
森下は一歩下がる。
やはり届かない。
反撃できる。
ここから一気に刀の耐久を削ることもできる。
だが、森下はそれをしなかった。
(……まぁ、撃たせてやるか)
勝負を捨てるつもりはない。
ただ、さきほど「自分は強くない」と言おうとしていた後輩が、ここまで必死にやりたいことを通そうとしている。
なら、一度くらいやらせてやろう。
優は少し息を切らしながら、それでもニンジャを構えている。
そして――。
一分。
スペシャルが使用可能になる。
「……!」
優の表情が変わった。
「よし」
すぐにスペシャルを選択する。
表示された必殺技の名前は――
《手裏剣乱舞》
優がグリップを振り上げた。
「手裏剣流星群!」
その声とほとんど同時だった。
優の頭上の空間に、五十個の手裏剣が一斉に現れる。
体育館の隅。
カカシへグリップを振っていた奏多も、その光景に気づいて手を止めた。
「うわぁ……派手なスペシャル……」
五十個の手裏剣が、優の頭上に浮かんでいる。
森下はそれを前に、ブレードを構えていた。




