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第11話 スキルとスペシャル

森下との練習試合が終わった。


奏多はしばらく、その場から動けなかった。


最後の攻防が、まだ頭の中に残っている。


ブレードに持ち替えた森下。


そこから突然、動きが変わった。


そして――一気に押し切られた。


奏多は森下を見た。


「……さっきの何?」


「ん?」


森下が振り返る。


「急に速くなって、そのあと一気に……。」


「ああ」


森下は納得したように頷いた。


「最初のはスキル」


「スキル?」


「オーバークロックってやつ」


その言葉と同時に、奏多の頭にさっきの光景が蘇る。


大鎌を解除。


ブレードへ変更。


そして――オーバークロック。


そこから森下の攻めが、一段変わった。


「……結城くん」


横から栞の声がした。


「はい?」


「スキル、教えたよね?」


「……。」


奏多の動きが止まる。


「最初に練習した時」


「…………あ」


思い出した。


「しかもアプリに登録したよね?」


奏多は無言でスマホを見る。


アプリを開く。


そこにはきちんと、三つのスキルが登録されていた。


「……してる」


「使わなかったなー」


森下に言われ、奏多はそっと目を逸らした。


「なんで?」


「……。」


奏多の頭に、初めて大会に出た日の光景が浮かんだ。


初めての実戦。


相手の攻撃。


武器を出して、攻撃して、守って、武器を変えて。


次に何をすればいいのか、それだけで頭がいっぱいだった。


「必死で……」


奏多は小さく答えた。


「忘れてました」


「つーか」


今度は黒瀬が口を挟んだ。


奏多がそちらを見る。


「お前、最初の試合でもスキル食らってるぞ」


「え?」


奏多が固まった。


また、あの日の試合が蘇る。


対戦相手が何かを操作した直後、奏多の視界に表示が出た。


――通信妨害。


その後、攻撃するたびに、それまでより多くのmAh(武器エネルギー)が減っていった。


「通信妨害」


黒瀬が言う。


「攻撃に使うエネルギーを、10秒間10%増やすスキルだ」


「……あれ」


奏多は記憶の中の表示を思い出した。


確かに出ていた。


ちゃんと名前まで。


「あれスキルだったの!?」


「そうだよ」


栞があっさり答える。


「全然分かってなかった……」


自分でも呆れてしまう。


先生が口を開いた。


「スキルは武器とは別枠だ」


奏多が顔を上げる。


「試合前に三つ登録する」


先生が示した先には、奏多のスマホ。


そこには今も三つのスキルが並んでいる。


「試合中は、その中から選んで使う」


「なるほど……」


今度こそ、奏多は理解しながら頷いた。


だが、そこで一つ疑問が浮かぶ。


「じゃあ……」


さっきの試合。


森下がブレードで一気に攻め込んできた、最後の場面。


「最後のあれもスキル?」


「あれは違う」


森下が答えた。


「違う?」


「スペシャル」


「スペシャル……」


「さっき使ったのは、ブレードの『連撃』」


奏多の脳裏に、もう一度あの瞬間が蘇った。


ブレードに変更。


オーバークロック。


そこから――。


森下のブレードが、立て続けに奏多へ襲いかかる。


一撃につき2度ダメージ。


さらに一撃。


休む間もなく、次が来る。


「あれがブレードのスペシャル」


「スキルとは別なんだ」


「そうそう」


先生が続ける。


「スペシャルは武器ごとに用意されている」


「武器ごと……」


「ただし、アプリにセットできるのは各武器一つだけだ」


奏多は考える。


ブレード。


大剣。


大鎌。


これまで自分が使ったもの、戦ったもの、見てきたもの。


「……あれ?」


何かが引っかかった。


黒瀬がそれに気づく。


「それもお前、もう見たんじゃないか?」


「え?」


黒瀬は自分を指した。


奏多はその顔を見る。


そして――思い出した。


あの日、街中で足を止めた時

街角モニターに映っていた決勝戦。


黒瀬の手には、大剣。


相手はシールドを構えていた。


黒瀬が大剣を振り抜く。


強烈な一撃がシールドに叩き込まれ、その耐久が一気に削られる。


そして。


――シールドブレイク。


あの瞬間を、奏多は確かに見ていた。


「大剣のスペシャル――」


黒瀬が言った。


「『破砕撃』」


奏多は黒瀬を見る。


「……あれも?」


「スペシャル」


頭の中で、今まで見てきたものが次々と繋がっていく。


森下の――オーバークロック。


初戦の相手が使った――通信妨害。


森下のブレードによる――連撃。


そして黒瀬の大剣――破砕撃。


知らないものだと思っていた。


けれど、そうじゃない。


奏多は手元のスマホへ視線を落とした。


そこには、自分で登録したスキルが並んでいる。


「知らなかったわけじゃないのに……」


「忘れてたんだよね」


栞が言う。


「……はい」


森下が笑った。


「試合になると余裕なくなるよなー」


「……。」


奏多はもう一度、スキルの欄を見る。


そして、さっき森下に何もできず押し切られた場面を思い出した。


スキルを知っていた。


自分のアプリにも入っていた。


それなのに、一度も使わなかった。


奏多は画面を見ながら呟いた。


「……次は忘れないようにしよ」


「次?」


森下が聞き返した。


「あ」


奏多が顔を上げる。


一瞬、間が空いた。


――次。


自分は今、当たり前のようにそう言った。


もう一度やるつもりで。


もう一度、戦うつもりで。


奏多は自分のスマホを見つめた

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