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- 第8話 妹との日々 -

妹──フィリアが生まれてから、

家の中は、前よりもずっと賑やかになった。


小さな泣き声。

笑い声。

時折、静かに響く子守唄。


世界が、ほんの少し、広がった気がした。


俺は、できる限りフィリアのそばにいた。


母が忙しいときは、

そっとフィリアの揺り籠を覗き込んだり、

泣き出せば慌てて駆けつけたり。


まだ赤ん坊のフィリアは、

俺が顔を近づけると、

きょとんとした顔をして、時々小さな手を伸ばしてきた。


その手に、俺の指が触れるたびに、

胸の奥が、ふわっと温かくなった。


こんなにも小さな存在が、

俺の世界の中心になっていくことに、

自分でも驚いていた。


ある日。


母が、フィリアを抱きながら微笑んだ。


「ライナス、あなたは立派なお兄ちゃんね」


その言葉に、

胸が、どきりと跳ねた。


誇らしいような、

くすぐったいような、

でも確かに嬉しい気持ち。


俺は、

もっと強くならなきゃと思った。


魔法の練習も、

今まで以上に熱が入った。


──この手で、守れるように。


フィリアの笑顔を、

母の優しさを、

父の誇りを、

全部、守り抜けるように。


とはいえ、

赤ん坊との生活は、甘いものばかりじゃなかった。


フィリアは、よく泣いた。

夜中に大声で泣き出して、

俺も眠れずにぼんやり起きることもあった。


そんなときは、

父が俺の肩を抱いてくれた。


「これが、家族ってやつだ」


眠そうに笑いながら、

父は小さなフィリアをあやしていた。


俺はその背中を見ながら、

(家族って、簡単じゃないんだな)

と、子供ながらに思った。


でも。


それでも──


やっぱり、ここにいてよかったと、思えた。


ふとした瞬間に、

フィリアが俺に向かって笑った。


無垢な、曇りのない、微笑み。


たったそれだけで、

疲れも、不安も、すべてが吹き飛ぶ気がした。


この子は、

俺に、無条件に微笑んでくれる。


俺が何か特別な存在だからじゃない。

ただ、

ここにいて、手を伸ばしたから。


(俺も……

 この子にとって、そんな存在でありたい)


そんな願いが、

小さく、小さく、心の奥に芽生えた。


──ライナス、六歳の冬。


妹フィリアとともに、

俺の世界は、少しずつ、広がっていった。

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