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- 第19話 外の風 -

春の陽射しが、村を包み込むようになったころ。


また、一つの出会いが訪れた。


その日、

村に珍しく、大きな商隊が立ち寄った。


荷車に山と積まれた品物。

見たこともない服を着た人々。


村の広場は、

まるで小さな祭りのような賑わいだった。


俺も、ティオと一緒に、興味津々で商隊を眺めた。


見たことのない果物。

色とりどりの布。

不思議な形の剣や、光る石。


一つひとつが、

まるで別の世界からやってきたみたいだった。


(こんなものが、世界にはあるんだ……)


胸が高鳴った。


でも同時に、

少しだけ、怖くなった。


こんな広い世界で、

俺はちゃんと生きていけるのだろうか。


そんな中で、

一人の旅人と出会った。


旅人──といっても、

まだ若い男だった。


武具の手入れをしている彼のそばに、

ふと立ち止まった俺に、旅人は気さくに話しかけてきた。


「おお、小僧。興味あるか?」


「う、うん……」


言葉に詰まりながらも、頷く。


旅人は、笑って、

腰に下げた剣を軽く抜いて見せた。


それは、

今まで見たどんな剣よりも、重厚で、鋭かった。


「これが本物の剣だ。旅に出るなら、こういうのが要るぜ」


俺は、

息を呑んだ。


「お前も、いつか旅に出たいのか?」


旅人の問いに、

少しだけ迷ってから、頷いた。


旅人は、しばらく俺を見て、

それから、にやりと笑った。


「なら、覚えておけ」


「……なにを?」


「旅に出たらな、強いだけじゃ駄目だ」


旅人は、手にした剣を、鞘に収めた。


「信じられる仲間と、帰る場所が必要だ。そうじゃなきゃ、どんな強さも、空っぽだ」


そう言って、

旅人は、手を振りながら商隊の中へ消えていった。


その言葉が、

胸に刺さった。


(帰る場所……)


俺には、家族がいる。

ティオがいる。

守りたいものが、ここにある。


(それを、忘れないようにしよう)


どれだけ世界が広がっても、

この想いだけは、きっと、変わらない。


春風が、村を通り抜けた。


新しい季節の匂いとともに、

俺の胸にも、

小さな決意が芽生えていた。


──ライナス、八歳の春。


外の世界を知り始めた少年は、

それでも、大切なものを胸に抱いていた。

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