表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

- 第20話 遠い日を想う -

春の終わりが近づくころ。


村は、次の季節を迎えるために、

静かに忙しくなっていた。


畑を耕し、家畜を育て、

また新しい命を迎える準備をする。


そんな日々の中で、

俺も変わらず修行を続けていた。


朝は剣の素振り。

昼はティオと鍛えあい、

夕暮れには、魔素を集め、風を練る。


日々を積み重ねるごとに、

剣は重みを増し、

魔法も少しずつ、意図した形を保てるようになってきた。


(まだまだ、だけど──)


確かに、前より強くなっている。


それだけは、胸を張って言える。


ティオも、負けずに成長していた。


「オレ、絶対すっげー騎士になるからな!」


そう言って笑うティオに、

俺も負けじと笑い返した。


「俺も、負けない」


どちらが上でも下でもない。

ただ、お互いに励まし合い、競い合いながら、

少しずつ前に進んでいた。


夜。

家族で囲む食卓。


母の作る温かなスープ。

父のにぎやかな話声。

フィリアの笑い声。


当たり前のように思っていたこの時間が、

いつか、当たり前じゃなくなる日が来るのかもしれない。


(俺も、いつか、村を出る)


旅に出る日を、

まだはっきりとは決めていない。


でも、

胸の奥には、

小さな覚悟が生まれ始めていた。


フィリアは、

俺の膝の上にちょこんと座って、

無邪気に笑った。


その小さな手を見つめながら、

思った。


(守りたい)


どこにいても、

どれだけ遠くに行っても。


この手を、

この温もりを、

絶対に忘れない。


風が、春の匂いを運んできた。


遠い日。

まだ見ぬ未来へ。


小さな一歩を、

俺は静かに踏み出し始めていた。


──ライナス、八歳の春の終わり。


少年は、

家族と、仲間と、

そして未来へと繋がる道を、静かに歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ