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- 第18話 扉の向こうへ -

雪が溶け、

村に春の匂いが戻ってきた。


ぬかるんだ道に足を取られながらも、

子供たちは元気に走り回り、

大人たちは畑を耕し始める。


そんな、

いつも通りの春だった。


俺は、

相変わらず修行を続けていた。


剣も、魔法も、

少しずつ、少しずつ、手応えを感じ始めていた。


指先に集める風は、

前よりもずっと強く、しなやかになった。


剣を振る腕にも、

確かな重みが宿ってきた。


それでも──


(この村だけじゃ、きっと足りない)


そんな想いが、

ふと、胸の奥に芽生えた。


ある日、

父が村に来た旅人と話しているのを見かけた。


旅人は、

町の様子や、他の国の話をしていた。

•もっと大きな都市のこと

•遠く離れた異国の文化

•魔物と戦う冒険者たちの噂


聞いたこともない言葉に、

俺の胸は、不思議とざわついた。


(この村の外には、俺の知らない世界が広がってる)


それは、

怖さよりも、

強い憧れだった。


夜。


暖炉の前で、父に聞いてみた。


「俺も、いつか……村の外に行ってみてもいい?」


父は、少し驚いたように目を見開き、

それから、穏やかに笑った。


「ああ、いいとも」


「……本当に?」


「ああ。だけど──」


父は、俺の頭に手を置いた。


「お前が本当に行きたいと思ったとき、自分で決めろ。無理に急ぐ必要はない」


その言葉に、

胸の奥がじんわりと温かくなった。


俺の選択を、信じてくれる。


それだけで、

不思議と、世界が少し近くなった気がした。


まだ、すぐに村を出るわけじゃない。


ここには、守りたい家族がいる。

大切な仲間がいる。


でも──


いつか必ず、

この小さな世界を越えて、

もっと広い世界に踏み出す。


そのときまで、

俺は、ここで力を蓄える。


──ライナス、八歳の春。


扉の向こうに広がる世界を、

初めて意識した春だった。

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