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- 第17話 守りたいもの -

初雪が降った日の夜。

フィリアは、熱を出した。


母は、

やさしく冷たい布を額に当て、

父は、そっとフィリアの小さな手を握った。


俺は、

何もできず、ただ傍らに立っていた。


苦しそうに眉を寄せるフィリアを見ているだけで、

胸がぎゅっと締めつけられた。


(俺に、何かできることは──)


焦りだけが空回りする。


冬祭りの準備が進む村の賑やかさとは裏腹に、

家の中は静かだった。


薪がはぜる音だけが、

ぽつり、ぽつりと響いている。


「ライナス」


母が、微笑みながら呼んだ。


「フィリアのそばにいてあげて。あなたの声なら、きっと安心するから」

母は俺の気持ちを察してくれたかのようだった。


俺は、

頷いて、フィリアの隣に座った。


そして、

ぎこちなく、手を伸ばす。


小さな小さな、

俺の妹。


その手は、

思ったよりも冷たかった。


しばらくの間、

俺はただ、フィリアの手を握っていた。


何もできない自分が、

悔しくて、情けなくて。


でも──


ふと、

フィリアが、うっすらと目を開けた。


かすかに、微笑んだ。


弱々しくても、

確かに俺に向けられた、

世界でたった一つの笑顔。


(守りたい──)


心の底から、そう思った。


強くなるとか、戦うとか、

そんなことじゃない。


この小さな命を、

あたたかい日々を、

守りたい。


それだけだった。


外では、

村人たちの笑い声や歌声が聞こえた。


きっと今頃、広場では灯火がともり、

小さな雪だるまたちが並んでいるだろう。


だけど、

俺にとって、今大切なのはここだった。


この手の中にある、

小さな温もりだった。


俺は一晩中妹のそばにいた。


フィリアは、

夜明け前には落ち着いた。


安堵した母が、そっと俺の肩を抱いてくれた。


「ありがとう、ライナス」


俺は、何もできなかった。

ただ、そばにいただけだった。


でも、

母の言葉に、不思議な満足感が広がった。


──ライナス、七歳の冬。


世界のすべてを手に入れたわけじゃない。


それでも、

たった一つだけ、大切なものを、

この手で守り抜きたいと、心から思った冬だった。

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