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- 第16話 白い息の中で -

冬の匂いが、空気に混じり始めた。


朝は吐く息が白く、

日暮れもどんどん早くなっていく。


村の人たちは、忙しそうに冬支度をしていた。


薪を積み上げる者。

畑を片付ける者。

家畜たちに厚い毛布をかける者。


そのどれもが、

どこか、少しだけ活気に満ちていた。


俺も、変わらず修行を続けていた。


剣の素振り。

そして、風魔法の制御。


寒さに震えながら、

それでも手を止めなかった。


指先はかじかみ、

魔素を練るのも一苦労だったけれど。


それでも──


(前より、ずっとスムーズに集まる)


ふと、そう思った。


風を作る。


まだ小さなものだけれど、

手のひらに集まった魔素が、確かに形を持って動く。


思い通りに、空気が揺れる。


(できた──)


心の中で、静かにガッツポーズを取った。


もちろん、

まだまだ拙い。


ティオに見せたら、笑われるかもしれない。


でも、

それでも。


数ヶ月前の自分より、

確実に前に進んでいる。


そんな確信だけは、胸にあった。


ある日。


広場で、ティオと剣の稽古をしていたとき。


ふと、ティオが言った。


「なあ、ライナス。なんか最近、お前、すっげー落ち着いてね?」


「落ち着いて?」


「うん。前はもっと、こう……バタバタしてたっていうか?」


ティオは、剣を振りながら、無邪気に笑った。


俺は、ちょっとだけ苦笑して、

それでも、心の中が温かくなるのを感じた。


──努力は、きっとちゃんと伝わっている。


自分では気づかない変化も、

誰かが見てくれている。


それは、

想像していたよりも、ずっと嬉しいことだった。


雪が降り始めるまで、

もうそう遠くはない。


世界が白く染まる季節が、

すぐそこまで来ていた。


そして、その先には、

また新しい何かが待っている気がした。


──ライナス、七歳の冬。


白い息の中で、

俺は静かに、自分の成長を噛み締めていた。

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