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- 第13話 初めての勝負 -

夏の終わり。

村では、毎年恒例の「子供たちの模擬試合」が開かれることになった。


木剣を使った、

子供同士の簡単な勝負。


怪我をしないように大人たちが見守り、

優勝者には、小さなご褒美が出る。


広場は、活気にあふれていた。


「ティオ、一緒に出ようぜ!」


「もちろん!」


ティオが、満面の笑みで答えた。


俺も、胸の奥がわくわくと高鳴った。


(負けたくない──)


自然に、そんな気持ちが湧き上がってきた。


試合は、トーナメント方式だった。


小さな子供たちが、順番に戦っていく。


俺もティオも、

それぞれ別のブロックで試合に臨んだ。


最初の相手は、俺よりも少し大きな少年だった。


緊張で手汗がにじむ。


木剣を構え、父に教わった基本を思い出す。


──深く息を吸って、前を見ろ。


父の言葉が、心に響いた。


合図とともに、相手が突っ込んできた。


その勢いに、体がすくみそうになる。


けれど、

必死に、剣を振るった。


がつん、と木剣同士がぶつかり合う音。


腕に、衝撃が走った。


(怖くない──)


そう思った瞬間、

体が自然に動いた。


足を踏み込んで、

もう一度、剣を振るう。


「勝負あり!」


審判役の村長が声を上げた。


俺の勝ちだった。


勝った──。


生まれて初めての、

正真正銘の勝負。


胸が高鳴った。


ティオも別の試合で勝ち進んでいた。


何度か試合を重ねるうちに、

決勝まで勝ち進んだのは、俺とティオだった。


広場の真ん中で、向かい合う。


ティオは、にやりと笑った。


「手加減しねーぞ、ライナス!」


「俺もだ」


お互い、木剣を構える。


どちらも、

この日まで必死に練習してきた。


ふざけあって、笑いあって、

だけど、本気で競い合ってきた。


──負けたくない。


心から、そう思った。


合図とともに、ティオが仕掛けてきた。


速い。

力強い。


でも、

俺だって負けられない。


全身の力を込めて、

剣を振るい、受け止め、打ち返す。


互いに汗を飛び散らせながら、

必死に、必死に戦った。


どちらかが倒れるまで、

どちらかが勝つまで。


──結果は。


俺の負けだった。


最後、踏み込みが遅れた。


ティオの一撃を避けきれず、

木剣が肩に軽く触れた。


その瞬間、試合が終わった。


悔しかった。


心の底から、悔しかった。


だけど──


「ライナス! すげーよ! マジで強かった!」


ティオが、嬉しそうに手を差し伸べてきた。


俺は、一瞬、ためらった。


けれど。


次の瞬間、笑ってその手を握った。


負けたけれど。

負けただけじゃなかった。


ここまで、本気で戦えたことが、

何よりも、誇らしかった。


──ライナス、七歳の秋。


初めての勝負。

初めての敗北。


だけど、

それ以上に、大切な何かを手に入れた気がした。

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