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- 第10話 小さな冒険 -

七歳になった春。

俺は、村の中でなら一人で歩き回れるくらいに成長していた。


剣の練習も、魔法の修行も、まだまだ拙いけれど、

小さな自信を少しずつ胸に育てていた。


そして、

世界は、少しだけ広がろうとしていた。


ある日の昼下がり。


広場で顔見知りの子供たち──

同じ年頃の少年少女たちが集まって、

何やら話し込んでいるのを見かけた。


「なあ、あっちの林の向こう、行ってみねえか?」


「え、でも……親に怒られるかも」


「ちょっとだけだよ。すぐ戻ってくるって!」


無邪気な誘い。

それに戸惑いながらも興味をそそられる面々。


俺も、

声をかけられた。


「ライナス、お前も来るか?」


正直、迷った。


危ないことは、避けろと父に言われている。

でも──


胸の奥が、ざわざわと騒いだ。


前世で、

世界に背を向けて生きた俺。


今度こそ、

世界を、少しでも受け入れたい。


──だから。


「うん、行く」


そう答えた。


林の向こうは、

想像していたよりも静かだった。


木々の間を風が抜け、

柔らかな陽射しが差し込む。


足元には、見慣れない花が咲いていた。


俺たちは、はしゃぎながら林を抜け、

小さな川辺にたどり着いた。


水がきらきらと光っている。


思わず、

笑ってしまった。


(こんな世界が、すぐ近くにあったんだな)


そのとき。


「きゃっ!」


誰かが悲鳴を上げた。


見ると、小柄な女の子が足を滑らせ、

川岸に落ちかけていた。


咄嗟に──

体が動いた。


俺は、手を伸ばし、

ぎりぎりのところでその子の手を掴んだ。


「だ、大丈夫か!?」


息を切らしながら引き上げる。


女の子は、

涙目でこくりと頷いた。


ホッと胸を撫で下ろした瞬間、

背後から声がかかった。


「お、お前、すげえな!」


振り返ると、

短い金髪の少年が、目を輝かせて俺を見ていた。


「オレ、ティオっていうんだ! すっげー! お前、かっこよかった!」


興奮気味に、ティオと名乗った少年が、

無邪気に手を差し出してきた。


俺も、思わず笑って、その手を握った。


──こうして。


俺は、生まれて初めて、

自分から誰かと「友達」になった。


帰り道、

俺はふと思った。


もし、あのとき一歩踏み出していなかったら。

もし、怖がって断っていたら。


この出会いは、なかったかもしれない。


(少しだけ、変われたのかな)


そんな、

小さな、小さな確信。


──ライナス、七歳の春。


小さな冒険と、小さな出会い。

それは、俺の世界を、また一回り広げた。

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