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◆8.蕾

僕は、今朝も日課をこなすため、玄関に出て敬音に靴を履かせていた。

悠美は半分呆れ顔で

「誰に似て、こんなにしつこい性格なんだろう・・・」

そう言うと、溜息をこぼした。

「敬音が楽しみにしてるんだから、そんなこと言わないの。僕だって結構楽しいんだから」

僕は、悠美を宥めて散歩に出かけた。



並木の桜は、蕾が早く咲きたいと言っているように、大きくなって膨らんでいる。

あと数日で、満開になるだろう。

僕は、じっと空を見上げながら歩いていた。

「パパ。わんわん」

敬音は一目散にお目当ての犬の元に走っていく。

「おはよう。ケイトくん」

3頭を連れて歩いている子は、あのペットショップの沙希という女の子だ。

子供が好きなのか、いつも敬音の相手をしてくれる。


彼女は、僕の存在を確認すると、決まって体を硬直させ

「おはようございます、五十嵐さん」

そう言って深く頭を下げる。

僕はいつものように

「おはよう」

というとにっこり微笑んでみる。

彼女にとって、ここにいる僕と、ブラウン管の中にいる僕は、同じ五十嵐雅弘なのだ。

そのイメージを崩してはいけない。


「ケイトくん、パパとお散歩楽しいね」

敬音は犬に夢中で、彼女の言葉も聞こえてこないようだ。

「敬音。お姉ちゃん、お店に戻らなくちゃいけないだろう?」

僕はケイトを宥めて、犬たちの群れからそっと引き離した。


「店長が、いい仔見つかったっていってましたよ」

彼女の言葉に僕はまた、にっこりと微笑んで

「しーっ!!」

僕は、人差し指を口の前に当てた。

「あっ!!!それじゃ失礼します」

彼女はそう言うと、また体を硬直させ、深く頭を下げて歩き出した。

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