◆9.遠慮
お昼過ぎ、僕の携帯にあの店長から電話があった。
「可愛い子が見つかりまして、お店に取り寄せてありますので、ご都合のいいときに見にきてください」
「そう。どんな感じの仔?性格とかはどう?」
仔犬を迎えることを楽しみにしているのは、敬音ではなく僕のほうなのかもしれない。
「とってもおとなしくて、可愛いですよ」
「そうなの?楽しみにしてるよ。明日にでも行けそうだったら、連絡入れます」
「では、お待ちしております」
「じゃ、よろしくね」
僕はそう言うと、電話を切った。
「悠美、いい仔見つかった見たいだって。明日一緒に見に行かない?」
ソファーの上で寝息を立てている敬音の横顔を見つめていた悠美は
「まーくんが見てきて。敬音には内緒なんでしょ?」
「そっか・・・。じゃ、僕が決めちゃってもいいの?」
「まーくんが一番嬉しいんじゃないの?どうぞ。でも、ちゃんと見極める力あるのかな?」
そう言ってからかう。
「僕は女の人を見る目はあると思うよ。こうして側に悠美がいてくれる。ちがう?」
悠美は僕の肩を軽くポンポンと叩いてから
「ありがとう。まーくんがいなかったら、こうして幸せな家族をもつこともなかったと思うの」
神妙な顔でそう言った。
「あいつのことはもういいだろう。許してあげなよ」
「そうじゃないよ。許すとか、許さないとかそういうことじゃない。逆に誠には感謝してる。こうしてまーくんと出会わせてくれたこと」
「そっか・・・。僕はあいつに少し遠慮してるのかもしれないね。もう終わってることなんだけど、あいつの性格を考えると、ちょっと考えちゃうかな?」
悠美は僕の言葉に驚いた顔をして、咄嗟に立ち上がった。
「そんなことずっと考えてたの?もう、終わったことだし。私が浮気されちゃったてことは、誠から見て、私には魅力がなかったんだと思うの。だから・・・」
「ごめんね。なんか変なこと言っちゃったね。コーヒー入れてくれる?」
「いいよ」
僕は、どんよりとした空気を変えようと、悠美をキッチンに向かわせた。
そして、僕も後を追うようにしてキッチンへと向かった。




