◆6.プレゼント
それから1週間。
僕は毎日同じように時間を過ごしていた。
今日は、朝からの雨で、敬音を散歩に連れ出すこともできなかった。
僕はソファーの上で大の字になって、天上を見上げてみる。
(何か浮かばないかな?)
今日は、いいフレーズも浮かびそうにない。
敬音は、リビングにこれでもかという位におもちゃを広げ、一人で黙々と遊んでいる。
僕は、それを横目に、ダイニングへ移動した。
ダイニングでは悠美が、朝食の後片付けをしていた。
「ねえ。こないだの話考えてくれた?」
僕は、悠美の手を止めないように、そっと呟いてみる。
「あの話?本当に大丈夫なのかな?」
悠美は、不安を含ませた笑みで僕を見た。
「大丈夫だよ。敬音だって喜ぶから」
僕は、その不安が少しでも軽くなるように、穏やかな顔を作り、悠美を諭した。
「仔犬がきたら、僕のいないとき、敬音に散歩をせがまれることもなくなると思うしね」
もうすぐ、敬音の3歳に誕生日だ。
そのプレゼントは何がいいかと、悠美と前から話していて、僕は仔犬をプレゼントしようと提案した。
悠美はまだ早すぎると、心配していた。
でも、僕が家を開ける日にも、敬音は悠美に散歩をせがんでいる。
悠美はそれが苦痛なようで、僕が家に帰るたびに愚痴をこぼす。
このプレゼントは、敬音の為でもあり、悠美の為でもあるんだ。
「でも、動物を飼うってそんな簡単なことじゃないでしょ?」
悠美の言うことも分かっている。
「大丈夫だよ。もちろん僕がいない日は、悠美にも少し手伝ってもらうことになるけど・・・。でも敬音が喜ぶと思うから」
悠美はしぶしぶ頷くと
「私は少し手伝うだけだからね」
そう言って、汚れた食器をキッチンへと運んでいった。
僕は、ダイニングチェアーに座り、悠美の行動をじっと観察する。
「コーヒー飲む?」
「うん」
悠美はそう言うと、手際よくコーヒー豆を挽き始める。
僕はそれを見届けると、携帯を取り出して、ペットショップに連絡を入れた。
「もしもし、五十嵐です」
「いつもありがとうございます」
腰の低い店長は、いつもこんな調子で電話に出る。
「こちらこそ、いつもお世話になってます」
店長は僕の返事を聞いてから
「あ・・・。例の仔、今必死で探してますので、もう少しお待ちいただけますか?」
そう言って、僕の返事を待った。
「うん。本格的にお願いします。一応、女の子で・・・」
「はい、分かってます。見つかりましたら、またご連絡いたします」
悠美は僕の電話の内容を静かに聞きながら、テーブルの上にコーヒーカップを差し出した。
「息子の誕生日のプレゼントなんで、間に合うようにお願いしますね」
「はい。一番可愛い子を探しますから、もう少しお待ちください」
「よろしくね」
僕は電話を切ると、悠美の入れてくれたコーヒーをゆっくりと飲み干した。




