◆5.なんだか違う
家に戻ると、また同じように時間が流れていく。
同じことの繰り返しで、多少飽きてきているのかもしれない。
僕は、その中で敬音の成長を感じることで、自分の存在をしっかりと確認しているようだった。
悠美との買い物も、敬音との散歩も、僕にはどれもがかけがえのない出来事のはずなのに、なんだか違うような気がしていたのも事実だった。
それは僕だけが思っていることなんだろうか?
それとも3人がそれぞれに思っていることなんだろうか?
しばらくして、新曲のプロモーションの為にテレビの仕事が入ったと連絡があった。
まだ出来上がって間もない曲で、発売前だというのに、ドラマの主題歌ということもあって、曲側もかなり力が入っているようだった。
(北澤は休みが欲しいといっていたけれど、大丈夫だろうか?)
7月には入れは、新曲を引っ連れて、ツアーも始まる。
(あいつの休みというのは、どのくらいのことなんだろう?)
いろんなことを考えながら時間を過ごすと、そう長くは感じない。
僕はリビングのソファーの上で、悠美が洗う食器が奏でる音を黙って聞いていた。
それは、軽快にリビングまで届き、とても心地いい音楽に聞こえる。
「ねえ?」
僕は悠美の顔が見たくなって、声をかけた。
「なに?まーくん?」
そう言うと、悠美はまた軽快な音楽を奏で始める。
「ツアーに入る前に、どっかいかない?気晴らしにさ」
僕の誘いに、悠美は返事をしなかった。
「嫌だった?嫌なら別にいいんだけどさ」
悠美は僕の返事を聞くと、キッチンから駆けてきた。
「嫌じゃないんだけどね。逆に疲れちゃうと思って」
「そっか・・・。敬音も家にばっかりじゃ、息が詰まっちゃうと思ったんだ」
悠美は僕の言葉を黙って聞き終えてから
「まーくんの一番は、敬音なんだもん」
少し頬を膨らませて、拗ねて見せた。
「拗ねないで。僕の大切な奥様」
僕は悠美のご機嫌を伺いながら、話を終わらせようとしていた。




