◆2.僕と息子
今週は仕事を入れずに、全てオフの予定だった。
家でゆっくりして、家族サービスもしたい。
何よりも、無理して作り笑いをしなくてはならない、テレビに出ることは極力避けたい。
言いたくないことを言わされて、それでも笑っていなければならない。
僕はいつも笑っているわけじゃない。
悲しいときも、悔しいときも、機嫌の悪いときもある。
でも、それを表に出すことができない。
仕事だから・・・。
今でこそ、テレビ局からのオファーも新曲が出たときくらいになったが、昔はそうじゃなかった。
事あるごとにテレビに出ては、やりたくないこともやらされた。
それがテレビって世界なんだと、諦めもした。
自分達を売り込むために、通らなくてはならない通過点だったんだ。
今こうしていられるのも、あの時があったからだと思ってはいる。
でも、やっぱり苦痛であることには変わりない。
言い方は悪いけれど、それから逃れる為に、家族サービスにかこつけて、オフをとる。
もちろん、家族が大切であることは事実だ。
でも僕は「LoveMaterial」のボーカルである前に、五十嵐雅弘というただ一人の人間だ。
普通の人と同じように育ち、同じように生きて行きたい。
そんな些細なことにプライドを持って生きている。
メンバー達も同じように思っていてくれるから、それが救いだ。
結成して20年にもなるけれど、よく言われる『解散の危機』というものは、今のところありえない。
「おはようございます。今日もお天気いいですね」
お隣の奥さんは、いつも決まってこの時間に玄関の掃除をしている。
僕は少しはにかみながら
「そうですね」
そう言って、敬音の手を引き散歩に出発する。
それがオフの日の日課だ。
子供は少し見ない間にも、どんどん成長していく。
『はいはいができた』とか『立ち上がった』とか、どんどん目に見える変化を見せてくれる。
それが楽しくて、嬉しい。
親というのはこういう些細なことを喜びにしているのだろう。
だから、敬音との時間は僕にとっては、本当に大切な時間だ。
「ぱぱ、きょうそうするよ」
敬音のキラキラした目を見つめていると、愛しくてたまらなくなる。
「じゃ、よーいドン!!」
僕の掛け声に合せて、少しふらつきながらも、走り出す敬音の姿をいつまでもめに焼き付けていたいと思った。




