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◆1.仮面

今日は朝から、何となく気だるい感じで目を覚ました。


昨日までの仕事の疲れが出たんだろう。


テレビや雑誌の仕事は、事の外疲れが溜まる。

カメラマンや記者達の言いなりになり、自分とは違う仮面を被り、別人を演じる。

きっと本当の僕を知る人など、ほんの一握りの人たちだけだろう。

仮面を被った僕を、世の中の人たちは、本当の僕だと思っている。

「違う!!」と叫んでみたところで、誰かに届くわけもない。


何度か瞬きをしては、窓から見える景色が変わらないかと思っていた。


「パパ。あさだよ」

息子の声で、張り詰めていた空気は一気に柔らぎ、僕はいつもの僕に戻る。

「おはよう。敬音」

息子は僕ににっこり笑うと

「おさんぽ。おさんぽ」

とせがむ。

その姿が可愛くてたまらない。


仕事で家を開けることが多い僕は、家にいるときはなるべく息子と一緒の時間を大切にしたいと思っている。

散歩もその中の一つだ。


「まーくん。敬音がまた駄々こねて困ってるんだけど、行ってくれる?」

妻はそう言うと、ちゃっかり玄関に敬音の靴を出し、ささっと履かせる。

僕は、その手際のいい様子をじっと見ながら

「しかたないなぁ・・・」

そう言って、下駄箱から靴を出した。

「それじゃ、いってらっしゃい」

妻はそう言うと、軽く手を振り、家の中へと入っていった。


「ぱぱ、わんわんみにいこうよ」

もうすぐ3歳になる敬音はずいぶんとしゃべるようになって、可愛さも増してきた。

今の時間に散歩をすると、近くのペットショップの犬達の散歩と出くわすことになる。

敬音は、それがお目当てらしい・・・。


僕は結成20年のバンドのボーカルをしている。

自分で言うのもなんだけれど、そこそこ有名だ。

もちろん、息子にはそんなことは関係ない。

散歩に行くことも、誰かと会うことも、お構いなしだ。

でも、妻は違う。

僕の妻になってからというもの、外に出るときには、時間をかけて化粧をし、愛想笑いを振りまかなくてはならない。

それが嫌なんだろう・・・。

あまり外に出たがらない。

そんな妻の気持ちもわかる。

僕だって同じなんだから・・・。


歌が好きで、ギターが好きで、何となく始めた音楽だった。

そこに友達が集まって、いつの間にかバンドという形ができた。

そして、気がつくと、テレビのカメラの前で僕達は歌っていた。


両親は、それを心から喜んでくれた。

僕も、ちやほやされることに有頂天になっていた。

夢を掴むって言うことは、簡単なことなんだと、天狗になっていた頃もあった。


そして、今は少し疲れていた。

新しいものを生み出すということも、大きな看板を背負っていくということにも・・・。

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