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◆20.マルの日

あれから僕は、ツアーの準備で毎日をアタフタと過ごしていた。


数週間彼女と会わなければ、僕の想いも消えてしまうような気がしていた。

それでいいんだと思っていた。


でも、そんな風に思えば思うほど、彼女の存在が気にかかり、想いは膨らみ続けた。


僕は手帳を広げ、ツアーまでの日程を確認していた。

すると、今日の日付にマルが付いていて、矢印で引いた先に、小さく殴り書きした自分の文字を確認した。

そうだ!!今日はカノンのトリミングの予約の日だった。


僕はなぜか浮かれていた。

「今日は早めに切り上げてもいいかな?」

雄太が少し驚いた顔をした。

「ナンだ?珍しいな。マサがそんなこと言うなんて」

「奥さん怖いもんなぁ」

林原も一緒になって僕のほうを見た。


「違うよ・・・。今日は犬のトリミング・・・」

北澤は僕の言葉を最後まで聞かずに、噴出した。

「お前、悠美に相手にされなくなって、犬に走ったのか?」

「何とでも言ってくれよ」

僕は半ばあきらめムードで、北澤の返事を待った。


そんな間も、僕の頭の中には彼女の優しい笑顔が浮かんでいた。


「じゃ、今日は早めに切り上げようぜ。俺、飲みにでもいこ」

「悪いね」

「いいよ。1週間以上詰めてきたから、息抜きも必要だよね」

陽一もにんまり笑っている。

「俺、買い物行きたかったんだよね」

「俺も行くわぁー」

「来なくていい!!」

北澤と、陽一がじゃれあうのを、他のメンバーが、少し覚めた目で見ていた。


「さっさとやって、さっさと終わろうぜ!!」

「ラジャー」

「了解」

「ほーい」

林原の言葉を合図に僕達は、一旦曲の流れを確認してから、明日の開始時間を決め解散した。

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