◆21.イメージ
僕はスタジオを慌てて飛び出し、車を走らせた。
(今日は道が空いてるし、ちゃんと着けそうだな)
そう思った途端、見覚えのある交差点で信号につかまってしまった。
そこはいつも僕が利用してる、アクセサリーショップの前だった。
僕はふと思い立ち、車をアクセサリーショップの裏の駐車場まで進ませた。
彼女に何かできることはないだろうかと、あの日からずっと考えていた。
なのに何も思い浮かんでこなかった。
僕は車を降りると、いつものように裏口のドアを開けて中に入った。
「五十嵐さん、いらっしゃい」
専属デザイナーの山下さんが僕に挨拶をした。
「ちょっと、欲しいものがあるんだけどいい?」
「ええ。どんな感じの?」
「ちょっと、お世話になった女性にお礼がしたくて」
「わかりました。じゃあ、いくつか持ってきます」
彼はそう言うと、さっと席を立ち店内へと入っていった。
彼のデザインは斬新ではあるが、優しさや繊細さが交わってつけているだけで気持ちいい。
まるで・・・。
彼女のようだ。
「お待たせです」
彼はそう言うと、僕の前に5つのペンダントを並べてくれた。
「イメージがあれば言ってください」
彼の言葉に僕は即答した。
「あのね。桜みたいな柔らかい感じの・・・。ある?」
「ありますよ。ちょうど昨日、そんな感じで作ったのが!!」
「それ見せてもらっていい?」
「今もってきます」
僕は彼が戻るまで、目の前のペンダントを眺めていた。
どれもお洒落なデザインに仕上がっている。
でも、トップが微妙に大きくて、彼女の魅力がかき消されてしまう気がした。
「これです」
彼が差し出したペンダントを見て、僕は何かを感じた。
「これ、包んでくれる?プレゼントだから」
彼はにっこりと頷き、また店の中へと戻っていった。
僕は、あのペンダントをつけている彼女の姿を思い浮かべていた。
ピンクの小さな石がちりばめられていて、トップがゆらゆらと優しく揺れる。
彼女のイメージにぴったりだった。
僕は彼女の喜んだ姿をイメージしながら、ラッピングが終わるのを待っていた。
「五十嵐さん、あのタイプのメンズもありますよ。どうですか?」
「そうなんだ。見てみたいけど、今日はちょっと慌ててるから」
「わかりました。結構いい出来ですから、また時間のあるときでも」
「そうさせてもらうよ」
僕はドアの向こうでラッピングが仕上がるのを首を長くして待っていた。
「おまたせしました」
お店の男の子が、小さな袋に入ったペンダントを持ってきてくれた。
「ありがとう」
僕はそう言うと、袋を受け取り、お店を後にした。




