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◆18.バースデープレゼント

僕は敬音を起こさないように、静かに玄関のドアを閉めた。

家の中は静まり返っている。


僕は、フローリングの床を鳴らさないように、つま先を立ててリビングまで移動した。


リビングのドアを開けると、つけっぱなしになったテレビから敬音の大好きなCMが流れていた。

僕は急ぐあまり、テレビを消すこともせずに、出かけていた。


リビングの奥に隠してあったカノンの新しい住まいを取り出し、準備を始める。


説明書にさっと目を通し、書かれている通りに組み立てる。


ただ、こうしている間も僕は彼女のことを思い浮かべていた。

そんな自分にやるせなさを感じた。


さっき店長が言った言葉が引っかかっていたのも事実だ。


彼女は結婚をしていて子供がいる。

僕が踏み入れることのできない彼女の生活。

それを想像しただけで、胸の置くがキリキリと音を立てて痛み出す。


(今頃ちゃんとやすんでいるのかな?)

(何であの時、彼女の番号を聞かなかったんだろう?)

僕は自分の行動をひどく後悔した。


彼女から直接何事もなかったことを聞けば、もっと気持ちは和らいでいただろう。

ただ現実は、僕はこれ以上何もできない。


僕は様々なことを考えながら、カノンの住まいを完成させ、狭いキャリーからゆっくりと移動させた。

カノンは小さな体をチョコチョコと動かし、、短い尻尾を命一杯振っている。

僕に一生懸命に存在をアピールしてくるカノンが愛しくなる。

そして、真っ直ぐな眼差しで見つめるカノンの瞳が、今朝の彼女の瞳と重なり、切なさが募っていった。


「まーくん、帰ってたの?」

背後からの悠美の声に僕はドキリとして振り返った。

「うん。どう?カノン?可愛いでしょ?」

「ほんと。小さいね」

「敬音、きっと喜ぶと思うんだ」

「じゃ、起こしちゃう?」

「僕が行くよ」

僕は敬音の喜ぶ顔を想像しながら、2階の子供部屋へと上がった。


敬音はまだ眠っている。

「敬音?」

僕は敬音を軽く揺さぶってみた。

「ぱぱ?」

敬音は目をしきりに擦りながら、僕に視線を合せて、体を起こした。


「敬音、今日は何の日?」

「僕のお誕生日!!」

「プレゼントあるんだよ」

「ほんと?」

「うん。下に行って見ておいで。ママがいるから」

敬音はいつにない大きな声で『はーい』と返事をしてから、バタバタとすごい音を立てて、階段を下りた。


「わぁー!!」


敬音の声が階段の上り口まで聞こえてくる。

僕は敬音のリアクションが見たくなって、追いかけるように下へ降りた。


敬音は小さなカノンを抱えて、満面の笑みを浮かべていた。


「ぱぱ、かわいいね」

「そうでしょ?」

「敬音。パパにありがとうは?」

悠美に促され、敬音はカノンを抱えたまま

「パパありがとう」

そう言うと、すぐに視線をカノンに戻した。


「ちゃんとお世話してね」

悠美は敬音の様子を見て、少し呆れたようにそう言った。

「はーい」

敬音は、右手を高く上げて返事をした。

「今日はいつもと違ってすごくいい返事なのね」

悠美はそう言って苦笑いしながら、立ち上がった。

「お世話するのよ」

「はーい」

敬音は、カノンの頭を撫でながら、半分上の空で返事をしているようだった。


「この仔ね、カノンって名前なんだよ」


僕は、そういい終えると、また彼女のことを思い浮かべた。

香音カノン・・・。

彼女から一字もらってつけた名前。

僕は不覚にもあの時から、彼女に好意を持っていたのかもしれない。


「カノン!!ぼくけいとだよ」

敬音はそう言うと、何時間もカノンを話さなかった。



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