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◆12.報告

僕は、お店を出ると、真っ直ぐ家に帰るのがもったいなく感じて、あの並木通りに立ち寄った。


ぷっくりと膨らんだ蕾は『早く咲きたい』と僕に訴えかけているようだ。


(敬音と一緒のときは、ゆっくりと見ることもなかったな)

僕はジーンズの後ろのポケットに両手を突っ込んで、桜を見上げた。


正面の大きな木は背伸びをしているように、真っ直ぐと枝を伸ばしている。

僕はそれがうらやましくて、少し嫉妬した。


自由でのびのびと、自らの命を輝かせている桜の木が羨ましかった。


僕は首が痛くなるくらい、木々を眺めてから家に戻った。



「ただいま」

玄関を開けると、悠美が駆けつけてきた。

「おかえり。どうだった?敬音まだ寝てるから」

敬音を起こさないように、小さな声で悠美は言った。

「すごく可愛かったよ。名前も決めちゃったし」

「え?名前?」

「そう、香る音で、カノン!!可愛いでしょ?」

悠美はそれを聞くと

「どこの女の名前?」

僕をギッと睨みつけた。

「違うよ。敬音・香音!!何か兄弟みたいで可愛くない?」

悠美はまだ少し疑っているようだった。


「嫌だからね。他に女の人とか!!許さないから!!」


「心配しないで。悠美だけを愛してるよ・・・」

ヒステリックになった悠美に一番効く魔法の言葉を言ってみた。

「本当に私だけ?信じていいの?」

「もちろん。僕には悠美以外は考えられないから」

僕は悠美の顔を眺めながらも、どこか遠くで彼女のことを気にかけていた。

そんな自分がとても不思議だった。


「今日はまーくんの好きなもの作ってあげるからね。何食べたい?」

悠美の言葉で、僕は現実に戻された。

「あ・・・。何でもいいよ。お任せします」

僕は慌てて話を合せた。


「まーくん?やっぱりおかしいよ」

「そんなことないよ。カノンが来たらどこにハウスを置こうかなって考えてた」

僕は適当な言い訳を考えて、それを吐き出した。


「もう・・・」

悠美はそう言うと、クルリと後を向いて、バタバタとスリッパの音を大げさに立てながら歩いていった。


(怒らせちゃったな・・・)


僕は慌てて靴を脱ぎ、悠美の後を追った。

「悠美、怒んないでよ」

悠美は振り返りもせず、キッチンへと向かった。


「悠美?」

「・・・。」

「起こってんの?」

僕は悠美の背後に回り、優しく抱きしめ、首筋にキスをした。


「まーくん。敬音が起きちゃう」

悠美は僕の腕をさらりと振り解き、耳元に顔を近づけると

「あとでね」

そう言って、何事もなかったかのようにコーヒー豆を炒りはじめた。


「まーくんも飲むでしょ?」

「うん。もらうよ」

「じゃ、あっちで待ってて」

僕は悠美の指示通り、リビングのソファーに座り、コーヒーが入るのを待っていた。

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