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詐欺師の恋  作者: lahai_roi
21/23

メッセージ

よく、思い出せないんだけど。




最後の視線は、貴方と、交わっていたかなぁ。





私の目は、確かに貴方を捉えていたのだけれど。





愛しい、金色の髪。




少し遠すぎて、表情までは見えなかったような気がする。





それでも十分過ぎるほどに、私の胸は、ドキドキしてた。





あの、長い階段を降りれば、貴方に会える。




そうしたら、長い間空いた時間も縮まって。





そう、まるでお伽話に出てくる主人公みたいに。






再び、出逢う。




そうなると、確信してた。







だから。





お願いだから。






目を覚ましたら、昨日の朝とかに戻っていて。





全部、夢だった、なんてことにはならないで。








百歩譲って、もしも、夢なのだとしたら。




いっそ、このまま。




目を覚まさなくて、良い。





夢の世界で生きていかせて。





そうして。




どうか。





夢の続きを見させて。




==========================










春の暖かな木漏れ日が、穏やかな風と共に窓から入り込む。






私は、スルスルと途切れることなく落ちていく林檎の皮を、食い入るように見つめた。






「足を滑らせて階段から落ちる、とか。本当に、花音ってばドジなんだから!!」





憲子はさっきからぶつぶつと小言を言っているのだけど、慣れた手つきは少しもブレない。






「しかも駅に行くのに、どうして普段使わない歩道橋とか使うのよ?!反対でしょうよ!?」





「いや、えっと…ちょっと冒険してみたくなって…」





「馬鹿!意味わかんない!」





理解できないというように、憲子は頭をぶんぶん振って、切り終わった林檎のひとつを、私の口に放り込んだ。






「ん!おい…ひぃー」






階段から落ちた直後の記憶は、飛んでて、ない。




医者の話によると、私は階段の中腹にある踊り場で止まったらしく。下まで転がっていたら死んでいただろうねとさらっと言われた。




幸い、打撲と腰のなんとかって部分を骨折しただけで済んで。



頭の検査も済ませたが、異常なしとのことだった。




二週間と3日の入院。





大体元気なので、暇です。




「あー、でも救急車、初体験だったのに、乗った記憶がないとか残念すぎるなぁー」





林檎を飲み込んだ後、残念そうに呟くと、憲子が呆れた顔をした。





「そんなんより、入院中に誕生日っていうのの方がよっぽど残念だと思うけど?」





「うっ…」





誕生日というキーワードを聞いて、私の脳裏には嫌なことしか思い浮かばない。





入院して5日になるが、当然の事ながら、この大騒動は親にも伝わっていて。





勿論、誕生日に会う予定だった祖母の耳にも入ったらしく。





大騒ぎして見舞いに来た両親からとんでもないことを伝えられた。






『おばあちゃんそれはそれは心配してねぇ!見合い相手も日取りも完璧決めちゃったのよ!!』



心配した後の矛先が間違っている気がする。



余りな出来事に腹を立てた私は、世話をしに、暫くこっちに滞在するつもりだった両親を、半泣きで追い返した。




けど、お見合いはなくならない。




「…いいもん。どうせ退院したらロクなこと待ってないもん。」






私はぶすっと膨れっ面を作り、枕を抱いた。






憲子はパイプ椅子に座り、そんな私を今度は哀れそうに見つめる。






「本当に、ツイてないわよねぇー。」




「・・・」






ぎゅうぎゅうの六人部屋だけれど、窓際だった事だけはツイていたと、私は内心思っている。




それからとりとめのないことを暫く話して、憲子が帰る支度を整え始めた頃。






「櫻田さん、また、届いてますよ。」






看護師さんが、カーテンの間からひょっこり顔を出した。






「あ、ありがとうございます。」





「毎日、良いですね。」





差し出されたそれを受け取ってお辞儀すると、看護師さんはにこりと笑って部屋を出て行った。






「…こないだから気になってるんだけど、どんどん増えていくその花、誰から??」





その様子を黙って見ていた憲子が、眉を寄せ、首を傾げた。




「それが、、、わかんないんだよねぇ…」





入院して次の日から。




丸い形をした薄いピンクのバラが、二輪ずつ、病室に届く。






差出人は、名前を言わないのだと看護師さんが言っていた。




一瞬、中堀さんかもしれないと期待して、髪色を訊ねたら、黒だった。







「多分…藤代くん辺りかと思うんだけど。」






来る時間帯は不規則で。



夜だったり、朝だったり、今みたいに昼だったり。





腰が痛くて、歩くのも難しいので、誰か確認する為に追いかけることも叶わない。






「へぇ、藤代??忙しそうなのにね。よっぽど花音の事が好きなのねぇ。」





憲子が茶化すように言うので、そんなんじゃないと苦い顔をして見せた。




私と一緒に転がった携帯は、ものの見事に破損して。




連絡は病院の公衆電話から、実家と会社と憲子だけにしかしていない。私の記憶力の限界だ。






社内で憲子は藤代くんを何度か見かけているらしいけれど、忙殺されていて、まともに話もできやしないと言っていた。





だから、忙しい合間を縫って、とりあえず花だけ届けにきてくれているのだろう。




藤代くんのことだから、きっとすごく心配しているに違いない。






あの夜の告白を信じていいのなら、まだ私のことを好きで居てくれているから。




残念ながら、私にはその気持ちに応えることはできないけど。





「入院中にバラだけってどうかと思うけど…花音にあげるっていう点に限っては、まぁまぁセンスがあるわね。やるじゃん藤代。」





ベージュのスプリングコートを羽織った憲子が花瓶に近づき、花を人差し指でそっとつつく。





「センス??」






今しがた受け取った花のリボンを解きながら、私は横目で憲子を見て訊き返す。






「うん。花音さ、このバラ、なんて名前か知ってる??」






えっと。





すごい、可愛いバラだなとは思っていたけれど、知らない。





花瓶に挿さっている六つの内の一本を、憲子はすっと取り出して、首を振る私の頬に近づける。







「正解は、アプリコットファンデーション。」





「え?」





なおも首を傾げる私を見て、憲子はくすりと笑った。








「この花、色白の女の子が頬を染めたみたいに見えない??」








言いながら、憲子は持っていた花を花瓶に戻す。







「花音に、そっくりの花だよね。」





========================




それから二日後の夕方。






「遅くなってごめん。」





藤代くんが、大きな果物バスケットを抱えて、病室に訪ねてきてくれた。





「いや…ていうか、どこに置けばいいの、それ。」





「一応、総務の皆から、なんだけどね。」





藤代くんも苦笑いだ。





「藤代くんはもう課が変わったんだし、忙しいんだから、憲子にでも頼めば良いのに。」






呆れ顔で言うと、藤代くんは渋い顔をした。






「その篠田から早く行けってせっつかれたんだよ。元々行くつもりだったけどさ。」





とりあえず、パイプ椅子を出してもらい、その上に置いてもらうことになった。





入院なんて初めてしたから、わからなかったけど。




剥いていくれる人がいないと、果物って面倒よね。




直ぐ悪くなっちゃうし。




ていうか、こんなに食べれないし。




もらうだけもらっておきながら、心の中ではこんなこと考えてるんだから、私も誰かのお見舞いに行く機会があったら、気をつけようっと。




藤代くんは、果物バスケットの隣にもう一つパイプ椅子を出して、そこに腰掛ける。




「…ずっと気になってたんだ。櫻田が怪我したの、あの夜だろ?直ぐに確認したかったのに、携帯は繋がらないし…」




神妙な面持ちで話し出す藤代くんからは、緊張めいたものも感じた。








「なぁ・・・、足滑らせた、なんて、嘘だろ?」





一瞬の沈黙の後の、藤代くんの声は、静かで、低い。





「・・・・」






私はベッドから起き上がった状態で、無言で俯いた。





「俺、、結局あれからあの人に会いに行かなかった。けど、向こうからの連絡もなかった。…すごく、不安で…だから、もしあの人に何かされたなら俺、、」





「違うよ。」





藤代くんを遮って、私は首を振った。





「けど、櫻田」




「私がおっちょこちょいだっただけ。」






笑って舌を出すと、藤代くんは困ったような顔をする。






「櫻田。助かったから良かったものの…」




「いいの。」





今度は窘めるような口調になる藤代くんに、私はきっぱりと言い放った。




「っっ…」




そんな私の様子を見て、一瞬藤代くんは何か言いかけたようだったけど、やがて大きく溜め息を吐く。







「ホントに、頑固だよな。」






「別に頑固っていうわけじゃ…」




膨れる私の頬や、腕に貼られた湿布に、藤代くんは無言で痛そうな視線を送ってくる。




やがて一通り辿り終えると、私の視線と再び重なった。






「…ごめん。」





「え?」





ぽつり、呟く藤代くんに、私は虚を衝かれた。






「俺、、、本当に馬鹿なこと…、、守るって言っときながら、結局傷つけて…」




「…良いの。」





項垂れて明らかに気落ちし、また自責の念に駆られている藤代くんを、私は笑って許す。






「櫻田…」






私の言葉に勢い良く頭を上げた藤代くんの顔は、切なさを引き連れている。



そして。





「俺…あの夜、、飯山先輩に、言われたんだ…」





ぽつぽつと躊躇いがちに、話し出す。





「『俺を騙した仕返し』って。」





聞きながら、すれ違い様に何か言われていた言葉はこれのことだったのかと、思った。




飯山、性格悪。




あいつ、次会ったら蹴飛ばしてやろうかしら。



「言われて、はっとした。確かに俺は先輩達を利用したけど、それについては悪いなんて思わなかった。けど…同時に櫻田も騙してるんだなって。そしたら、自分のしてることは、何なんだろうって。」





言いながら、藤代くんの目がまたうろうろと彷徨い始める。





「一体何が正しいか、わからなくなって。最終的にはあの人の言いなりになってる自分がいて。。自分で判断することをやめて、後も先も考えてなかった。ほんと、、ごめん。。。」





「もう、いいってば。」




再び頭を下げた藤代くんに、私はぶんぶんと手を振った。





「あ、やべ。」





そこへ、携帯が鳴り響き、藤代くんが慌てて切る。







「中途半端で悪いんだけど…もう、行かないと。また、来るから。」





「あ、うん。忙しいのに、来てくれてありがとう。」



けれど。




急いでジャケットを羽織って立ち上がった藤代くんの動きが、急にピタリと止まる。





「?どうしたの??」






不思議に思って、訊ねると、藤代くんは罰が悪そうな顔をした。







「あのさ…、実はずっとひっかかってることがあって…こんなんで罪滅ぼしになる、とかチャラになる、とかは思わないけど……もしも、櫻田さえ良かったら―」






========================









「あ、忘れちゃったな…」





藤代くんが帰ってから、私はふと思い出して、ベットからよろりと立ち上がる。





「いてて…」





痛みに顔を顰めながら、花瓶の花達を見た。




「お礼言うの、忘れちゃった。」




小さく反省しながら、さっきの藤代くんとの会話を思い返した。




ちょうどその時。





コンコン、とノックの音がして。





「櫻田さん」






いつもの看護師さんの声が私の名前を呼んだ。





「あ、はい。」




バラから視線を外し、入り口の方に目をやって。





「え?」




私は固まる。





「また、今日も届きましたよ。」






看護師さんが差し出したのは、紛れもない、いつものバラ、二輪。



それを受け取りながら、私の頭の中をクエスチョンが駆けずり回っている。





「……あ、あの…」




おかしい。




藤代くんは、つい15分前に帰った筈だ。





もしも持ってくるつもりだったのなら、さっき渡せばいいのに。




つまり。





「さっき…お見舞いに来た人じゃ、なかったですか?」





私の質問に看護師さんは、首を振った。





「え?いえ…さっきの人とは違いますけど…」





バラの送り主は、、藤代くんじゃ、無い。





まさか。




「っ、その人、どっちに行きました!?」





気持ちが、逸って。




思わず駆けようとして、身体がよろけた。





「どっちって…、櫻田さん。こんな身体じゃ、追いかけられるわけないでしょう。」





看護師さんが驚いた顔をして、私を支えてくれる。





「でも…」





「いつも、裏口から出て行くみたいだったから。もしかしたらそこの窓から見えるかもしれませんよ。」





私の必死な形相を見て、看護師さんは思い出すようにそう言って、私の後ろの窓の外を指差した。





「!!!」





お礼を言うのも忘れ、私は直ぐ様窓際にへばりつく。




三階の窓からは、裏口を出た所から続く道路がよく見えるけれど、普段から人通りが少ない。




案の定、今も、一人の後ろ姿以外は、誰も居なかった。





もしかして、が、確信に変わる。





少し俯き加減で、早歩きの、その、後ろ姿に。





私は見覚えがあって。





その、背中も。




歩き方も。




全てが。




私の中の全神経を掻き乱すには十分過ぎる。







「空生っっ!!!!」






閉まっていた窓の鍵を開けて。




思い切り、大声で、名前を、呼んだ。







振り返りはしないけれど、後ろ姿のまま、中堀さんが、立ち止まる。






髪色は、黒いけれど。




夕陽を浴びて、やっぱりきらりと輝いている。




隠せないその髪色を、貴方は嫌いだと言うけれど。




私はその髪色が、大好きだ。




痛みも、全部、忘れて。




ただ、感じるのは、早鐘のような鼓動。




ねぇ。






「お花っ!!ありがとう!!!!!あのっ、、、、」







ずっと、わからなかったの。



ずっと、自問してた。



あの夜、歩道橋で。





私は確かに、貴方を見た筈なんだけど。





貴方は私を見つけてくれた?




私の名前を呼んでくれた?




それとも。




全部、あれは夢だった?





もう少しで会える筈だったのに、またすれ違ったのかと、確信するのが怖くて。




眠ったままでも良いとさえ、思ったのに。




結局目は覚めてしまって、その先に、貴方は居なかった。






「あのっ、私、やっぱりっ!!」






けど、夢じゃなく。





あの時、私はちゃんと、貴方に会えていたんだね。





もしも。






これで、貴方に会うのが最後になるとしても。






最後の、告白になるとしても。






もう一度、貴方に言の葉を送ることができるのなら。






「どうしようもなく貴方が好きですっ!!!」








今紡ぐ全てが、貴方の為になればいいと願うよ。



同じ部屋の患者さん達も。



直ぐ傍にいる筈の看護師さんも。





多分、こんな大声を出している病人の私を、あんぐりと口を開けて見ているんだろうけど。





残念ながら、私は必死なので。



振り返る余裕も、気遣う気持ちも、これっぽっちもありません。






でもお願いはあります。




邪魔をしないで。






「貴方がこないだ私に言ったことは、信じませんから!!!!」






伝えたいことを、伝えさせて。






零でも、他の誰でもなく。





「私は、【空生】が言った事を信じてますっ!!!」





何にも染まらない、空生を、信じてる。





「私、期待していいですかっ!?貴方がまだ、私のことを好きになる可能性があるって、思ってていいですかっ!?」






往生際が悪いと言われても良い。





「待ってても、良いですか?!」





私はあの二輪のバラに賭けたい。





なのに。




私がこんなに叫んでも。





中堀さんは振り返ることなく。




返事なんて、皆無なままで。





また、一歩、歩き出す。







「ま、待って!まだっ、まだっ、あるんですっ!!伝えたいことが!!!」








私は慌てて、呼び止める。






「傍に居る時よりも!空生が居ない方が、私にはよっぽど苦しいってことをっ!!知っててください!!」






これは、私からのメッセージで。






「あと!!!!お養父さんからの伝言預かりました!!!」







今度は、もう居ない中堀さんからの、メッセージ。







「『私が、』!『君に逢って』!!!!」






いいながら、いつしか私の目尻には涙が溜まっていく。





―『もしも、櫻田さえ良かったら、伝えて欲しいんだ。…俺さ、前にあいつの父親に会ったことあるんだよね。』






さっき藤代くんから聞いた話は。





―『妹が死んだ直後に手がかり探しついでに、力いっぱい責めて罵ってやろうと思って会いに行ったんだけど、会って拍子抜けしたよ。』





多分一番伝わって欲しい時の為に、遠回りして届いた、メッセージ。







―『見るからに人の良さそうな人でさ。…俺には憎くてどうしようもないけど、あいつのことを大事そうに話す家族が居る。妹に、俺が居たように。…俺が、あの時、あいつに復讐するのを止めて、忘れようとできたのは、あいつの父親のおかげだよ。俺のこと、友達か何かかと勘違いしたらしくてね、伝言を頼まれて…』





だから。






「『幸せだったのと同じように』!」






どうか、自分のせいで、皆が傷付く、なんて思わないで。






「『君が幸せであるようにと、いつも願ってる』!」







貴方だって、誰かを幸せにすることができるってことに気づいて。






「お父さんは、そう貴方に伝えて欲しいって言ったそうです!!」







それは、何もはっきりと目に見えるモノじゃなくても。







「誰かを傷つけない人は、この世界に一人もいません!!」







小さく思えることでもいい。






「私もっ、空生もっ、沢山誰かを傷つけて、でも、同じくらいっ、自分も傷ついてきたでしょう?!」






ただ、そこにいる、それだけでも、十分誰かを幸せにできる。







「もうそれで、十分じゃないですか!?」






また立ち止まっていた中堀さんが、今度こそ歩き出す。









「私は貴方にこれ以上傷付いて欲しくないっ!!!!」






頬を幾筋も涙が流れていく。




こんな泣き虫で、めちゃくちゃなこと言ってる私を。





置いていかないでと、本当は言いたかったけど。






「ひっ…くっ…」





もう、貴方の姿が見えなくなった。






視界から消えた。





もどかしい。





動かない、この身体なんて、脱ぎ捨てて。





窓から飛び降りてでも、追いかけたいのに。






飛べたら、良かったのに。





力のない、アルバトロス。



上昇気流を掴めないアホウドリ。






伝わらない。



届かない。



でも想いが途切れない。







「っつ…ふっ…」





どうしようもない。




今の自分の気持ちを、なんて言い表わしたら良いのかすら、思い浮かばない。





嗚咽を漏らしながら、その場にくずおれた。




何もなくなった景色が、やけに肌寒い。









願わくば。






私が伝えたいことの、ほんの少しでも良いから。




中堀さんの心に入ってくれれば良いのにと思う。




私が変わってないって、知っていて欲しい。










いつかを期待してしまう往生際の悪い私を許してね。




花を届けてくれた理由を、考え巡らしてしまう私を笑っても良い。







もう。。





二度と会えないとしても。




二度とない恋をした。





切なくて、辛くて、苦しくて。






結局、ちゃんと交わることは、なかったけれど。






愛しくて、愛しくて、仕方ない記憶。





こんな恋ならしなければ良かったなんて、思わないよ。























―その日を境に。




毎日欠かさず届いていた無言の花束は、途絶えた。




折角できた、薄皮一枚の繋がりを、自ら絶ってしまったんだろうと思う。




なんとなく、そんな気はしてたから。




不思議ともう、涙は出てこなくて。




ただ、あなたの幸せを、心から願った。




その隣にいるのが、私じゃなくても。




私は、あなたに逢えて良かった。






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