第六十五話「新たな旅立ち」
四年ぶりの学校。
目の前に広がる景色を見ていると、ものすごく懐かしい気持ちになる。
「久しぶりだね」
ナージャが懐かしそうに学校を見つめながら口を開いた。
「ああ」
「本当は、もう復学してもいいんだけどね」
「確かにな……」
俺達が旅に出た理由は、転移魔法陣の調査だ。そして、その本来の目的はもう終わっている。
ただ、その過程で別の問題が出てきてしまった。
光魔術。闇。そして、まだ分からないことがいくつもある。
それを解明するまでは、まだ学校には戻れない。
すると、ナージャがこちらを向いた。
「そしたら私、家族に少し会ってくるね!」
「いや」
「え?」
「今日は一日、家族と一緒にいればいいと思う」
ナージャが驚いたように目を見開く。
「え!? いいの!?」
「もちろんだ。四年も会えてないなら尚更だろ」
それに、俺達にも会いたい人はいる。
「俺はサリナとリードに久しぶりに会いたい」
コルドが言った。
「俺はラントに会いたいよ!」
ギレウスも嬉しそうに続く。
「俺もラントには会いたいな。あとは家族にも」
せっかく四年ぶりに帰ってきたんだ。今日くらいは、それぞれ会いたい人に会えばいい。
そうと決まれば、今日は一旦別れることになった。明日の集合場所は、この王立魔導学校の門前だ。
「じゃあ、また明日ね!」
「ああ、また明日」
ナージャと別れ、俺達は学校の中へ向かった。
「よし。まずはラントに会いに行こう」
目的地は女子寮だ。
学校の敷地内を歩いていると、クリスが周囲を見回していた。
「すげぇ……」
建物を見るたびに感心している。まあ、初めて来たらそうなるか。
そのまま女子寮へ向かい、受付で尋ねる。
「すみません。ラント・シルマという生徒はいますか?」
「ラント・シルマさんですか? 今の時間は授業中ですね」
「あ……」
そうだった。学校なんだから、昼間は授業中に決まってる。
四年間も学校から離れていたせいで、そんな当たり前のことすら忘れていた。
「どうする?」
俺が聞くと、ギレウスが少し考えてから口を開いた。
「シャウト。俺も里に帰っていいか?」
「いいけど……近いのか?」
そういえば、俺はギレウスの里の場所を知らない。行ったことのない場所には、転移魔術では行けない。
「俺、里の場所を知らないから転移魔術は使えないぞ?」
「魔力車さえあれば大丈夫だよ」
「魔力車?」
「ああ。ジュワユース王国はエクスカリバーの東側にあるから、目的地を設定して魔大陸を進めば、その道中に俺の里があるんだ」
「なるほど。それなら問題ないか」
俺はコルドとクリスを見る。
「コルドとクリスも来るか?」
「いや、俺はサリナとリードを寮で待つ」
コルドはここに残るらしい。すると、クリスも手を上げた。
「じゃあ俺はコルドさんと一緒に待ってるわ!」
「さんはいらん。コルドでいい」
「ああ? そうか? じゃあ、そうさせてもらう」
これで決まりだな。
俺とギレウスは里へ。コルドとクリスは学校に残り、サリナとリードを待つ。そしてナージャは、四年ぶりに家族のもとへ。
せっかく帰ってきたんだ。今日はそれぞれ、会いたかった人に会う日だ。
アレフの東門を抜け、魔大陸へ出た俺達は魔力車に乗って進んでいた。俺は魔力車に魔力を込め、できるだけ速度を上げる。
それから一時間くらい経っただろうか。
「あそこだ」
ギレウスが前方を指差した。
俺は魔力車への魔力供給を止め、二人で降りる。そこからは歩いて里へ向かった。
「ここが……鬼人族の里か」
里には、ドーム型のガラスのような家が立ち並んでいた。
ガラスと言っても透明ではなく、少し曇っている。中で人が動いているのがぼんやりと分かる程度で、プライバシーは守られているようだ。
里の入口まで来ると、一人の門番が立っていた。
「止まれ」
俺達は足を止める。門番は俺の隣にいるギレウスの顔をじっと見ると、少し驚いたような表情を浮かべた。
「もしかして、団長の息子さんか?」
顔を見ただけで当てやがった。さすがだ。
「そうです。帰ってきました」
「そうか! あんなに小さかったのに、立派になったな。今日は何しに帰ってきた? 卒業したのか?」
「いえ、少し家族に会いに帰ってきました」
「そうか。入っていいぞ」
「ありがとうございます」
門を抜け、里の中へ入る。中には結構な人数がいた。
どれくらいいるんだろう。
そんなことを考えながら周囲を見渡し、ギレウスの後ろについて歩いていく。
しばらくすると、ギレウスが一軒の家の前で立ち止まった。
「ここが俺の家だ」
「ここか」
ギレウスが扉を開ける。
「ただいま」
その声を聞いて、奥から一人の女性がこちらへやって来た。そしてギレウスの姿を見るなり、顔を輝かせる。
「おかえり! ギレウス! 大きくなったわねぇ! 父さんも喜ぶわよ!」
この人がギレウスの母親か。
すると、ギレウスの母親が俺に気付いた。
「あら! その子はお友達?」
「はい。シャウト・ロータスと申します」
「あら! 礼儀正しい子ね! うちのギレウスをよろしくね!」
「はい!」
「父さんは?」
ギレウスが尋ねる。
「父さんなら、今はまだ里長のところにいると思うわ。顔を出してくるといいわ!」
「ありがとう、母さん。行ってくる」
そう言って、俺達は再び家を出た。
ギレウスに案内されながら里の中を進んでいき、辿り着いたのは周囲の家よりも大きな建物だった。
大きいな。これが里長の家なのだろう。
ギレウスが扉を開ける。
「失礼します」
俺もギレウスに続いて中へ入った。
中には三人の男がいた。真ん中にいるのが里長だろう。なら、左右にいる二人のどちらかがギレウスの父親か。
そう思っていると、そのうちの一人が立ち上がった。
「ギレウスなのか……?」
こっちが父親か。
確かに似ている。顔立ちもそうだが、身体つきもどことなくギレウスに似ていた。
父親はギレウスを見つめ、嬉しそうな顔を浮かべる。
「立派になったな……」
「父さん……」
「お前もこれで、立派な団長になれるな」
その言葉を聞いた瞬間、ギレウスの表情が変わった。さっきまでとは違う、真剣な顔だ。
「俺は団長にはなりません」
「……何?」
父親の表情が一変した。
「まだお前は、冒険者などという甘ったるい夢を見ているのか!」
大きな声が家の中に響き渡る。
すると、真ん中に座っていた里長が口を開いた。
「あまり大きな声を出すな。家族での話があるのであれば、外でしてくるが良い」
「……申し訳ございませんでした」
ギレウスの父親は頭を下げると、すぐにギレウスへ視線を戻した。
「ギレウス。ついてこい。話がある」
「……分かった」
そう言って歩き出す父親。ギレウスもその後を追う。
俺も二人について、里長の家を出た。
俺達はそのまま門の外へ向かった。
門を抜け、しばらく歩いたところにある開けた場所で、ギレウスの父親が足を止める。そして振り返り、ギレウスを真っ直ぐ見た。
「ギレウス。昔も言ったはずだ。冒険者にはなるなと」
「俺は団長よりも、冒険者として生きていきたいんだ」
ギレウスも一歩も引かない。
父親はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「どうしてもというのならば、昔も言ったはずだ。俺を倒してから出ていけ」
「俺はもう、父さんには負けない」
……どうやら、決闘をするようだ。
俺は巻き込まれないよう、少し離れることにした。
「俺が勝ったら団長になれ。ギレウス、お前が勝てば好きにしろ」
「分かった」
二人が向かい合う。
一瞬の静寂。
そして――。
「《インフェルノ》!」
いきなり!?
ギレウスの放った上級火魔術が父親へ直撃し、炎がその身体を包み込む。
……大丈夫なのか?
直撃だぞ?
あのカブラサーペントを一撃で倒す魔術を正面から……。
俺が心配しながら見ていると、炎の中から声が聞こえてきた。
「お前の魔術は、この程度か」
「……!」
そこには、皮膚が爛れながらも立っているギレウスの父親がいた。
痛そうだ……。
だが、すぐに自分へ治癒魔術をかける。
「《ヒーリング》」
爛れていた皮膚がみるみる治っていった。
「こんなの挨拶だよ!」
ギレウスが杖を構え直す。
「次は俺の番だ」
父親が手を向けた。
「《ライトニング》!」
雷がギレウスへ直撃する。
「ぐっ……!」
ギレウスの身体が痺れ、その場に膝をついた。
「ギレウス!」
思わず叫んでしまった。
すると、ギレウスがこちらを見る。
「大丈夫だ! シャウト!」
そしてすぐに自分へ治癒魔術をかけた。
「《ヒーリング》」
ギレウスは立ち上がり、再び父親と向き合う。
「父さん。俺だって、この程度なら耐えられるくらいになったんだぜ」
「……昔よりは強くなったようだな」
ギレウスが杖を構える。今度は、さっきまでとは比べものにならないほどの魔力が集まっていく。
「《ヘルブレイズ》!」
天導級火魔術――《ヘルブレイズ》。
凄まじい炎が放たれ、父親へ直撃した。
また避けないのか!?
炎が消える。
その向こうには、またしても立っている父親の姿があった。
「いいものを放つようになったじゃねえか、ギレウス。俺と同じ高みまで来るとはな」
そして、自分へ治癒魔術をかけた。
「《ヒーリング》」
負った傷が治っていく。
「だが、これでは俺に勝てんぞ」
今度は父親が手を構えた。
「《ヘルブレイズ》!」
「っ!」
ギレウスへ炎が直撃する。
まただ。
なんで避けないんだ?
もしかして、先に倒れた方が負けという決闘なのか?
炎の中からギレウスの姿が現れる。それでも倒れてはいない。
「父さんは……俺を甘く見すぎだ」
ギレウスが杖を構えた。
「……ん?」
何をするつもりだ?
その時だった。
空に雷雲が集まり始める。
……待て。
この魔力の流れ。
こいつ、もしかして!?
天導級雷魔術を使おうとしてるのか!?
あいつ、まだ一度も成功させたことないだろ!?
一か八かの賭けに出たのか!?
空を覆う雷雲を見て、ギレウスの父親が笑った。
「ふん。面白い。受けて立つ」
雷雲の中で激しい稲光が走る。
ギレウスが杖を父親へ向けた。
「これで終わりだ! 《サンダーボルト》!」
その言葉と同時に――。
ドゴォォォン!!
とてつもない音を立て、空から落雷が降り注いだ。
眩い光が視界を覆い、思わず目を細める。
そして、光が消えた。
「……」
ギレウスの父親は、地面に倒れていた。
気絶している。
「……勝った」
ギレウスが呟く。
成功した。
一度も成功させたことのなかった《サンダーボルト》を、この土壇場で成功させやがった。
ギレウスが勝ったのだ。
「父さん!」
俺達は急いで駆け寄り、すぐに治癒魔術をかける。
「《ヒーリング》!」
傷を治した後、俺達は父親を連れてギレウスの家へ戻った。
家に着くと父親を寝かせ、俺とギレウスはそのまま目を覚ますのを待つことにした。
数分後。
「イタタ……」
ギレウスの父親がゆっくりと目を開けた。
「俺は……何をしてたんだ?」
横にいた母親に尋ねる。
「あなた……」
その声を聞いた瞬間、父親がハッとした表情を浮かべた。
「ギレウスは!?」
「そこにいるわ」
母親がこちらを指す。
ギレウスと父親の目が合った。
しばらく、二人は何も言わなかった。
そして父親が、今までとは違う声色で言った。
「……本当に強くなったな」
「父さん。俺はもう一人前だ。自由にさせてもらう」
「……分かった」
それだけだった。
あれだけ言い争っていたのに、最後は驚くほど簡潔に終わった。
ギレウスが立ち上がり、俺もそれに続く。
俺達がそのまま家を出ようとした時、背後から父親の声が聞こえた。
「……元気でな」
どこか寂しそうな声だった。
ギレウスは一瞬だけ足を止める。
そして俺達は、家を出た。
俺達はそのまま里を出た。
しばらく無言で歩いていたが、俺は隣のギレウスを見る。
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫。これで……全部終わったから」
ギレウスは前を向いたまま答えた。
その声は少し震えていた。
今にも泣き出しそうな声だった。
「……そうか」
俺はそれ以上、何も言わなかった。
里から少し離れたところまで歩き、人気のない岩場で足を止める。
ここなら転移魔術を使っても、誰かに見られる心配はないだろう。
「じゃあ、戻るぞ」
「うん」
俺とギレウスは手を繋ぐ。
目を閉じ、頭の中に目的地を思い描く。
俺達の寮の部屋。
すると、俺達の身体が光に包まれた。
目を開ける。
そこには、懐かしい部屋があった。
「久しぶりに見たな」
「そうだな」
俺達は部屋を出る。
もう夕方だ。ラントの授業も終わっているはずだ。
廊下を歩いていると、コルドとクリスの姿が見えた。向こうも俺達に気付く。
「帰ってきてたのか」
「ああ。ついさっきだけどな。お前達はサリナとリードには会えたか?」
「ああ、会えた。旅の話もした。これからまた旅に出ることもな」
この言い方だと、詳しいことまでは話さず、普通の旅の話だけしたのだろう。
すると、クリスが口を挟む。
「俺は気まずかったぜ。なんせ知らねぇデカい翼の生やした男が三人もいたんだ。肩身が狭いったらありゃしねぇ」
「すまなかった」
「謝るほどじゃねぇよ! コルド! 気にすんなって!」
「そうか。なら良かった」
そんな話をしながら、俺達四人は女子寮へ向かった。
受付に着き、声をかける。
「ラント・シルマさんはいますか?」
「少々お待ちください。今呼んできますね」
それから数分後、奥からラントがやって来た。
俺達の姿を見つけると、その顔が一気に明るくなる。特にギレウスを見た時は、ものすごく嬉しそうな顔をしていた。
そのまま俺達のところまで近付いてくる。
以前の彼女なら、ギレウスに抱きついていたかもしれない。
でも、もう彼女も成人だ。
……まあ、小人族だから見た目は変わらないけど。
「久しぶりだね。ギレウス、シャウト、コルド」
「久しぶりだな、ラント」
ラントが俺を見上げる。
「なんかシャウト、デカくなってない?」
「ああ、そうか。この四年で身長伸びたからな」
ラントは俺と自分を見比べる。
「チビコンビも解散か……」
「お前とコンビ組んだつもりねぇよ!」
ラントが笑った。
「ほんと変わらないね」
「めっちゃ変わったけどな」
俺はラントを食事に誘うことにした。
「今日は一日こっちにいるからさ。一緒に飯食わないか? 旅の話でもしよう」
「うん!」
ラントは嬉しそうに頷いた。
俺達はそのまま食堂へ向かい、食事をしながら旅の話をすることになった。
色々な出来事を話している中、クリスだけは少し気まずそうだった。
「なあ……俺も普通に食べていいのか?」
「大丈夫だよ」
「そ、そうか」
クリスは少し安心したように、ゆっくりと食事を始めた。
その後も話を続け、食事を終える。
「さて……俺は家に帰るけど、みんなはどうする?」
コルドが答える。
「俺はサリナとリードの部屋で寝る」
「そっか。ギレウスとラントは――」
……ん?
二人の姿がない。
「どこ行ったんだ?」
さっきまでいたよな?
すると、クリスがニヤニヤしながら口を開いた。
「はは〜ん。あの二人、完全に恋してやがるぜ」
「えええ!?」
思わず声が出た。
あの二人が!?
マジで!?
いや、確かに仲は良かったけど……。
だとしても体格差がヤバすぎる。
俺はクリスにだけ分かるよう、日本語で話しかけた。
「あの二人が人間だと考えて、日本で一緒に歩いてたら、どう見ても犯罪の匂いしかしないよな」
クリスが吹き出した。
「ははははっ! そりゃ傑作だ!」
まあ、でも微笑ましい。
俺だってナージャが好きだからな。
今日は好きにさせてやろう。
「じゃあ、俺は家に帰るけど……クリスはどうする?」
「そんなん聞くなよ。コルドの部屋で寝るさ」
どうやら受付で寝具を借りるつもりらしい。
「じゃあ! 俺は帰る」
「ああ」
「またな!」
二人と別れ、俺は家へ向かった。
久しぶりの家だ。
一応、帰ってくる途中で家の近くに人通りが少なそうな場所があるか確認しておいた。次に帰ってくる時は、そこへ転移すればいいからな。
「よし!」
しばらく歩き、ようやく家が見えてくる。
……なんか、小さく見えるな。
いや、家が小さくなったんじゃない。
俺がデカくなったんだ。
家の前まで来て、ドアを開ける。
「ただいまー!」
……返事がない。
「おーい! 誰もいないのー?」
すると、奥からベルトが出てきた。
俺を見ると、少し驚いたような顔をする。
「これはこれは、シャウト様。気付きませんでした」
「え?」
「声が変わっておりましたので」
「ああ……」
そうか。
長い間いなかったんだ。
ベルトの中では、俺の声は前のままなんだろう。
ベルトが奥へ向かって声を上げる。
「シャウト様がお帰りになられました」
すると、母さんと父さんがやって来た。
俺の姿を見るなり、父さんが嬉しそうに笑う。
「大きくなったな! シャウト!」
母さんも俺を見上げていた。
母さんを見下ろすようになるとはな。
「おかえり、シャウト」
「ただいま」
そう言って、俺は久しぶりの家に入った。
その後、俺は家族とこれまでの旅について話した。
旅先での出来事や、冒険者として活動していたこと。迷宮に挑んだ時のことも話した。
父さんと母さんは興味津々で話を聞いている。
そして、今の俺の冒険者ランクについても聞かれた。
「俺、今エメラルドランクだよ」
「エメラルドまで上がったのか!」
父さんがものすごく嬉しそうな顔をする。母さんも同じだった。
二人とも、俺が冒険者として成長したことを自分のことのように喜んでくれている。
俺はエメラルドランク。
父さんと母さんはダイヤモンドランク。
まだ二人には届いていない。
俺もいつか、そこまでなれたらいいな。
そんなことを思いながら、その日は終わった。
翌日。
これからまた旅に出ることは、昨日のうちに父さんと母さんへ伝えてある。これからは、たまには顔を出すことも伝えた。
「もう帰ってきて、学校に復学したらどうだ?」
そんなことも言われた。
だけど、俺達にはまだやることがある。
「旅の途中で新しい問題を見つけたんだ。それを解決しないと」
そう伝えておいた。
そして家を出る。
学校の門前まで歩いていくと――。
「あれ?」
もうみんないた。
早いな。
「おはよー」
俺が声をかけると、みんなも返してくれた。
ナージャは一日家族と一緒にいられて嬉しかったようだ。コルドも幼馴染と過ごせて満足しているように見える。
クリスは……気まずかったらしい。
そして、ギレウス。
「……」
めちゃくちゃニヤニヤしている。
あ〜。
こいつ、完全に一線越えたやつの顔だ。
……ん?
よく見ると、ギレウスの耳には見慣れないものがついていた。
ピアスだ。
黄色い魔石と赤い魔石が埋め込まれた、綺麗なピアス。
昨日まではつけていなかったはずだ。
……これ、絶対お揃いだろ。
まあ、黙っておこう。
俺はみんなの顔を見る。
「じゃあ行くぞ。エクスカリバーへ!」
「おう!」
全員が返事をする。
俺は中央都市エクスカリバーを思い描く。
そして――。
俺達は中央都市エクスカリバーへと転移するのだった。




