第四十七話「昇格」
目が覚めた。
「…………」
ぼんやりとした頭で身体を起こし、辺りを見回す。
誰も起きていない。
ラントも、ギレウスも、コルドもまだ眠っている。
随分寝た気がする。
窓の外へ目を向けると、太陽はすでに高く昇っていた。
「……昼じゃねぇか」
また寝過ぎた。
昨日はグランドに着いてから色々あったし、思っていた以上に疲れていたのかもしれない。
それに、あの声。
あれは夢じゃないと言っていた。
俺に直接話しかけているとか、転移魔法陣が放つ光がどうとか……。
結局、よく分からないことばかりだった。
そんなことを考えていると、ベッドの方から物音がした。
「……ん」
最初に身体を起こしたのはコルドだった。
それに続くようにギレウスが目を覚まし、最後にラントも眠そうに身体を起こす。
「おはよ」
俺がそう言うと、三人もまだ眠そうに返事をする。
しばらくして、コルドが口を開いた。
「……変な夢を見た」
「え?」
思わずコルドを見る。
すると、ギレウスが反応した。
「コルドも?」
「……何だ、お前もか?」
「ああ。僕も変な夢を見たんだ」
「え……」
今度はラントまで声を上げた。
「私も見たよ」
「…………」
待て。
三人とも?
「え? 俺だけじゃないのか?」
そう口にすると、今度は三人の視線が一斉に俺へ向いた。
「シャウトもか?」
コルドが聞いてくる。
「あ、ああ……」
どういうことだ?
俺だけじゃない。
コルドも、ギレウスも、ラントも。
全員、変な夢を見ている。
「……どんな夢だった?」
俺が聞くと、三人は顔を見合わせた。
「声が聞こえた」
コルドが答える。
「僕も」
「私もだよ」
やっぱり同じだ。
いや、待て。
「その声、何て言ってた?」
「俺は……《光の恩寵》を持つ者には気をつけろ、と言われた」
「え?」
光の恩寵?
「僕も同じことを言われたよ」
ギレウスが続く。
「私も」
ラントも頷いた。
どうやら三人は、同じようなことを言われたらしい。
「シャウトは?」
「俺は……違う」
「違う?」
「ああ。俺は転移魔法陣を調べてほしいって言われた」
「転移魔法陣?」
ラントが首を傾げる。
「ああ。それと、転移魔法陣の模様が黒くなってるのは、転移魔法陣が放つ光のせいだって」
三人とも黙り込む。
俺達全員が同じ夜に変な声を聞いた。
けど、言われた内容は少し違う。
三人には《光の恩寵》を持つ者に気をつけろ。
俺には転移魔法陣を調べてほしい。
「……それより」
ギレウスが口を開いた。
「光の恩寵って、何?」
「…………」
俺はコルドを見る。
コルドも首を傾げた。
ラントを見る。
ラントも首を傾げている。
ギレウスも同じだ。
「……なんだ、それ?」
結局、四人揃って首を傾げる。
《光の恩寵》。
そんな恩寵、俺は聞いたことがなかった。
「……まあ、《光の恩寵》については分からないし、一旦置いておこう」
考えたところで、何の情報もない。
それより今は、昨夜あの声に言われたことだ。
「とりあえず、転移魔法陣を見に行ってもいいか?」
俺がそう聞くと、ラントが少し考えてから頷いた。
「まあ、見るだけならいいよ」
「僕もいいよ」
「俺も構わない」
全員の了承も得られた。
なら、行ってみるか。
俺達は宿を出て、グランドの街を歩いた。
そして――街の大広間までやって来た。
そこに、転移魔法陣はあった。
「……これか」
大広間の床に描かれた巨大な転移魔法陣。
その姿を見た瞬間、俺は足を止める。
「本当に黒くなってるな……」
転移魔法陣に刻まれた複雑な模様。
本来なら光を放つはずのその模様が、今は完全に黒く染まっていた。
これが、オジエの言っていた状態か。
周囲には、国の衛兵らしき人達が何人もいる。
何かを調べているようだった。
転移魔法陣に手を触れ、魔力を込んでいる者。
その様子を確認しながら、紙に何かを書き込んでいる者。
魔法陣の周囲を歩き、細かく状態を確認している者もいる。
どうやら国側も、この異常について色々と調べているらしい。
俺は少し離れた場所から、黒く染まった転移魔法陣の模様をじっと見つめた。
「…………」
夢のあいつ。
正確には夢ではないらしい。
本人は俺に直接話しかけていると言っていた。
けど、俺の感覚としては夢に近い。
眠っている時に声が聞こえて、目を覚ませば終わっている。
それに、俺だけじゃなかった。
コルド、ギレウス、ラントにも声をかけていた。
あいつ、一体なんなんだ?
何者で、どうやって俺達に話しかけている?
そもそも、どうして俺達なんだ?
「…………」
考えても分からない。
転移魔法陣の模様が黒く染まった原因は、転移魔法陣が放つ光。
それだけ教えて、肝心な理由は教えてくれなかった。
俺が考え込んでいると――。
「シャウト!」
「痛っ!」
突然、ラントに叩かれた。
「何すんだよ!」
「早く依頼をやりに行くよ!」
「あ」
そうだった。
今日はかなり寝たんだ。
起きた時には、もう昼になっていた。
転移魔法陣のことは気になる。
でも、今の俺達にはやるべきことがある。
金を稼がなければならない。
「……そうだな。行くか」
俺達は一度宿へ戻り、依頼に必要な荷物をまとめた。
準備を済ませると、そのままグランドを出る。
今回の依頼は、ハイウルフの討伐と素材の納品だ。
戦う時の配置も、旅を続けてきたことで自然と決まっていた。
俺とギレウスが前衛。
コルドとラントが後衛。
しばらく都市の外を探していると、目的のハイウルフを発見した。
「いたぞ」
俺が剣を抜く。
ギレウスも戦闘態勢に入り、後ろではコルドとラントが魔術を使う準備を始める。
それからの戦闘は――早かった。
「……俺達も討伐するの早くなったよな」
以前なら、ハイウルフ相手でももう少し時間がかかっていた。
けど今は違う。
旅の途中で何度も戦ってきた相手だ。
どう動くのかも、どこを狙えばいいのかも分かっている。
何より、俺達自身が強くなっている。
ただし、今回は素材を持って帰らなければならない。
だから、倒し方にも少し気を遣う必要があった。
基本的に、とどめを刺すのは俺かコルド。
俺が剣で首を斬る。
あるいは――。
「《ソニックカッター》」
コルドの放った中級風魔術が走り、ハイウルフの首を斬り落とす。
このどちらかだ。
「…………」
ギレウスが明らかにつまらなさそうな顔をしている。
「なんだよ、その顔」
「いや……別に」
「《インフェルノ》使えないからって拗ねるなよ」
「拗ねてないよ」
絶対拗ねてるだろ。
《インフェルノ》なんて使ったら、素材ごと燃えてなくなる。
今回の依頼とは相性が悪すぎる。
ちなみにラントは――。
「ギレウス、もう少し右!」
「はいはい」
ギレウスの肩に乗っている。
岩場を越えるために風で身体を浮かせることもできるようになったけど、完全に自由に飛べるわけじゃない。
そのせいか、こういう時は今でもギレウスの肩に乗っている。
依頼書には討伐数の指定がなかった。
そのため、俺達はこの辺りで見つけたハイウルフをまとめて狩ることにした。
最終的に討伐したのは五匹。
「これだけあれば十分だろ」
「うん。帰ろう」
問題は、この五匹をどうやって持って帰るかだ。
今回は素材の納品も含まれている。
当然、死体をここに置いていくわけにはいかない。
そこで活躍したのがコルドだった。
「《グラビティ》」
コルドが魔術を発動すると、地面に横たわっていたハイウルフの死体がふわりと浮かび上がった。
《グラビティ》。
風魔術と雷魔術を組み合わせた混合魔術だ。
ただ、この魔術。
戦闘ではほとんど使い物にならない。
浮かせることはできても、勢いをつけて動かすことができないからだ。
動かそうとしても――。
「……遅いな」
ハイウルフの死体が、ふわーっと宙を移動する。
本当にふわっとだ。
これを敵に使ったところで、大した攻撃にはならないだろう。
けど、こういう時にはかなり便利だった。
重いハイウルフの死体を持ち上げる必要もなく、そのまま浮かせて運べる。
「いいなぁ……」
ラントが浮かんでいるハイウルフを羨ましそうに見ていた。
「何が?」
「《グラビティ》」
どうやらラントは、この魔術を使えるようになりたいらしい。
「私もそれ使いたい……」
「覚えればいいだろ」
「簡単に言わないでよ」
まあ、混合魔術だ。
そう簡単に覚えられるものでもないんだろう。
そんな話をしながら、俺達はグランドへ向かって歩いていた。
その途中。
俺はふと思い出して、冒険者登録板を取り出した。
今回の依頼も終わったことだし、なんとなく確認してみようと思っただけだった。
「…………ん?」
登録板を見て、俺は足を止めた。
「どうしたの?」
ラントが振り返る。
「いや……これ」
登録板の一部分。
そこに表示されている文字が、光り輝いていた。
――《昇格》。
「……え?」
俺は思わず二度見した。
見間違いじゃない。
確かに《昇格》の文字が光っている。
「おい! お前らも登録板見てみろ!」
「え?」
三人もそれぞれ自分の冒険者登録板を取り出す。
「……あっ!」
ラントの登録板にも。
「僕のも光ってる!」
ギレウスの登録板にも。
「俺もだ」
コルドの登録板にも。
全員の登録板に、同じ《昇格》の文字が光り輝いていた。
「これって……」
俺は自分の登録板を見つめる。
現在の俺達のランクはゴールド。
そして、その次のランクは――。
「プラチナ……」
俺達は顔を見合わせた。
そう。
俺達は――プラチナランクへ昇格できるようになっていた。
「……マジか」
ゴールドランクになってから三ヶ月。
まさか、もう次のランクへ上がれるとは思っていなかった。
「早くギルドに行こう!」
ラントが嬉しそうに言う。
「ああ!」
俺達はコルドの《グラビティ》で浮かせた五匹のハイウルフを連れ、そのままグランドへ戻った。
都市へ入ると、真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かう。
「依頼の報告に来ました」
受付で依頼書と冒険者登録板を渡し、討伐したハイウルフについて報告する。
今回は五匹分をまとめて納品したことで、報酬も少し上乗せされた。
当初の大銀貨二枚から――大銀貨三枚。
「おお……!」
ありがたい。
昨日、宿代だけで銀貨二枚も飛んだことを考えれば、この増額はかなり大きい。
そして、俺達にはもう一つ確認したいことがあった。
「それと、帰る途中で登録板の《昇格》って文字が光ってたんですけど」
俺がそう伝えると、受付の人は俺達四人の登録板を順番に確認していく。
「はい。四名とも昇格条件を満たしていますね」
「やっぱり!」
ラントが嬉しそうに声を上げる。
「現在、皆様はゴールドランクですが、プラチナランクへの昇格が可能になっています」
受付の人は改めて俺達を見た。
「プラチナランクへ昇格されますか?」
「します!」
俺は即答した。
「するする!」
ラントが俺よりも元気よく答える。
「もちろん!」
ギレウスも嬉しそうに頷いた。
そしてコルドは――。
「ああ。頼む」
いつも通りだった。
「…………」
なんだろう。
一人だけ温度差がすごい。
「コルド、お前もうちょっと喜べよ」
「喜んでいるが?」
「どこがだよ!」
「俺なりに喜んでいる」
「分かりづらいんだよ!」
「そうかな?」
ギレウスが笑う。
「コルドらしくていいんじゃない?」
「まあ、そうだけどさ……」
ラントも楽しそうに笑っている。
そんな俺達を見て、受付の人も少し笑っていた。
「では、昇格手続きを行いますので、現在お持ちのゴールドバッヂをこちらへお願いします」
「あ、返すんですね」
「はい。昇格の際、以前のランクのバッヂは返却していただくことになっています」
俺達はそれぞれ身につけていたゴールドバッヂを外し、受付の人へ渡した。
俺は首から下げていたゴールドバッヂを外す。
三ヶ月間、ミリンで依頼をこなし続けて手に入れたバッヂ。
こうして返すとなると、少しだけ名残惜しい。
「なんか寂しいね」
ラントも同じことを思ったらしい。
「でも、次はプラチナだよ」
ギレウスが嬉しそうに言う。
「まあ、それもそうだな」
受付の人は四つのゴールドバッヂを受け取ると、俺達の登録板と一緒に昇格の手続きを始めた。
「少々お待ちください」
俺達は受付の前で待つ。
「なんか緊張するね」
ラントが受付の奥を覗き込む。
「そうか?」
「だってプラチナだよ?」
確かに。
ゴールドになったのだって、つい最近のような感覚だ。
ミリンで三ヶ月間依頼をこなし続け、ようやくゴールドランクまで上がった。
そこから長い旅をして、グランドで受けた最初の依頼。
それを終えたところで、俺達はもう次のランクへ昇格できるところまで来ていた。
しばらく待っていると、受付の人が戻ってきた。
その手には俺達の冒険者登録板。
そして――新しい四つのバッヂがあった。
「お待たせしました。昇格手続きが完了しました」
登録板と一緒に、四つのバッヂが俺達の前へ並べられる。
「こちらがプラチナランクのバッヂになります」
「おお……!」
俺は思わず身を乗り出した。
淡い水色にも、銀色にも見える不思議な色合いのバッヂ。
光の当たり方によって、わずかに色の見え方が変わる。
これが――プラチナバッヂ。
俺は自分のものを受け取り、手のひらに乗せて眺めた。
「綺麗だな……」
「ほんとだ。ちょっと水色っぽいね」
ラントも嬉しそうに自分のバッヂを眺めている。
「銀色にも見えるよ」
ギレウスが角度を変えながら確認する。
コルドは受け取ったバッヂを一度眺めると、そのまま身につけた。
俺は受け取ったプラチナバッヂを、これまでのゴールドバッヂと同じようにネックレスとして首から下げる。
首元で、新しいバッヂが小さく揺れた。
「なんか一気に強くなった感じがする!」
ラントが嬉しそうに言う。
「バッヂが変わっただけだよ」
ギレウスが笑う。
「分かってるよ!」
俺も登録板を確認する。
そこに表示されていたランクは――。
《プラチナ》。
「……本当に上がったんだな」
ゴールドだった表示が、しっかりとプラチナへ変わっている。
受付の人が最後に説明を続ける。
「これで皆様は正式にプラチナランクの冒険者となります。今後はプラチナランクまでの依頼を受注できます」
「プラチナの依頼か……」
当然、今までより上の依頼を受けられる。
今の俺達は、とにかく金が必要だ。
受けられる依頼の幅が広がるのはありがたい。
「ありがとうございます!」
俺が頭を下げると、三人もそれぞれ受付の人に礼を言った。
こうして――。
俺達は、ゴールドランクから一つ上。
正式にプラチナランクへ昇格した。
冒険者ギルドを出た俺達は、そのまま宿へ戻った。
部屋に入るなり、俺は首元に下がったプラチナバッヂを手に取る。
淡い水色にも銀色にも見える、不思議な色のバッヂ。
ゴールドバッヂの代わりに、今はこいつがネックレスとして俺の首元に下がっている。
「プラチナか……」
思っていたより早かった。
ゴールドからプラチナへ昇格したことで、俺達の予定も少し変わってくる。
昨日、俺達は金貨三枚を目標に、このグランドで一年近く金を稼ぐことになるかもしれないと話していた。
けど、プラチナランクになった今なら、その期間を大幅に短縮できるかもしれない。
受けられる依頼が増えれば、それだけ報酬の高い仕事も選べるようになる。
金貨三枚。
昨日までは随分遠く感じていた金額だけど、少しだけ現実的になった気がする。
ただ――当然、良いことばかりじゃない。
プラチナランクともなれば、依頼の内容そのものが今までより危険になる。
討伐対象になる魔物も強くなるだろうし、グランドから少し離れた森や洞窟まで行かなければならない依頼もある。
それだけじゃない。
――迷宮。
そういった場所も、これからは依頼の対象に入ってくる。
「迷宮かぁ……!」
さっきからギレウスの目がずっとキラキラしている。
「お前、嬉しそうだな」
「だって迷宮だよ!」
「まだ行くって決まったわけじゃないからな」
「でも依頼があったら行くかもしれないでしょ?」
「まあ……そうだけど」
こいつ、本当にこういうの好きだな。
ラントはそんなギレウスを見ながら、少し呆れたように笑っている。
「ギレウス、危ない依頼ばっかり選ばないでよ?」
「分かってるよ!」
「本当に?」
「……多分」
「多分じゃ駄目でしょ!」
やっぱり分かってないな。
「依頼は報酬だけで決めるべきではないだろう」
コルドが冷静に口を挟む。
「俺達で達成できるかどうか。それを見てから決めればいい」
「それが一番だな」
俺も同意する。
プラチナになったからって、急に何でもできるようになったわけじゃない。
ランクが上がったからといって、俺達自身の強さまで突然変わるわけじゃないんだ。
無理な依頼を受けて死んだら意味がない。
それに、報酬の高い依頼を受けられるようになったとはいえ、全部がすぐに終わる仕事とも限らない。
遠い森や洞窟まで行くなら、往復だけでも時間がかかる。
迷宮なら、どれくらい時間が必要になるのかも分からない。
一回の依頼で稼げる金額は増える。
でも、その分、一つの依頼にかかる時間も長くなるかもしれない。
「まあ、それでも前よりは早く貯まりそうだな」
「金貨三枚だよね?」
「ああ」
ラントの言葉に頷く。
この調子なら、最初に考えていたより早くグラムへ向かえる可能性もある。
どれくらいかかるかは、まだ分からないけど。
「よし!」
俺は手を叩いた。
「難しいことは明日考えよう!」
「え?」
ラントが俺を見る。
「今日は昇格できたんだぞ? だったら今は――昇格できたことを祝おう!」
「おお!」
真っ先に反応したのはギレウスだった。
「いいね!」
ラントも嬉しそうに笑う。
「俺も異論はない」
コルドも頷いた。
決まりだ。
今日くらいは少し贅沢してもいいだろう。
何より、宿代は先に払ってある。
少しくらい使っても、今日寝る場所がなくなることはない。
俺達はその日、いつもより少しだけ良いものを食べた。
豪勢な宴というほどじゃない。
それでも、長い旅を続けてきた俺達にとっては十分なご馳走だった。
「おいしい!」
ラントが嬉しそうに料理を頬張る。
「昇格っていいね!」
「お前、それ昇格じゃなくて飯が嬉しいだけだろ」
「両方だよ!」
ギレウスも楽しそうに食べ、コルドもいつもより少しだけ機嫌が良さそうに見える。
俺は首から下がるプラチナバッヂを指先でつまみ、改めて眺めた。
淡い水色にも、銀色にも見える。
昨日まで首元にあったゴールドバッヂはもうない。
今ここにあるのは――プラチナバッヂだ。
明日からは、今までより危険な依頼を受けることになるかもしれない。
遠くの森。
洞窟。
そして、迷宮。
それでも今は、そんなことを考える必要はない。
今日くらいは――。
俺達四人で、プラチナランクへの昇格を祝おう。




