↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 妖精の国のSOS  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/84

第57話 溶岩風呂はいい湯だな?

 姉妹は、火山の中を進んでいました。


 ゴゴゴゴゴ……!


 すると、目の前の地面が大きく盛り上がり、巨大ななにかが姿をあらわします。


『でたあーっ!』


 シロンはびっくりして叫びました。


 地中から現れたのは、【マグマゴーレム】。体が溶岩でできた、石人形の魔法生物(ワンダー)です。


 雪と氷の妖精界シュネージアでも、似たような存在……女王を守る【アイスゴーレム】に襲われたことがあります。


 これもまた、同じ役割を与えられたゴーレムなのでしょう。


「まかせろ!」


 エイルは剣を抜くと、ゴーレムが襲いかかってくるよりも早く、地面を蹴って跳びかかっていきました。


 シャキーン!


 ズズーン!


 勝負は一瞬でした。


 エイルはあっという間に、ゴーレムの体を真っ二つに斬り裂いてしまいました。


『おねえちゃん、すごいすごーい!』


 シロンもくるくる飛び回って大はしゃぎ。


 そんなかわいい妹に、エイルは笑顔でVサインを送ります。


「……」


 しかし、血を分けた妹のエミルは、ぼーっと立ちつくしていました。


 いつものように、最愛の姉エイルの活躍に見とれていたわけではないようです。


「どうしたの? エミル。なんか、気になるところでもあった?」


 エイルは剣についたゴーレムの破片を払い落とし、腰におさめながらたずねました。


「う……うん。前から思ってたけど、お姉ちゃん……ゴーレムを、まるで粘土かバターみたいに斬っちゃうよね」


 塩の妖精界の岩塩生物もそうでしたし、エイルは前の冒険でも、石造りの【ストーンゴーレム】をバッタバッタと斬り倒していました。


 いくら剣の精霊たちのチカラも借りているとはいえ……簡単に斬れるものじゃないと、エミルは考えていたのです。


 エイルは自分の剣をじーっと見つめながら、こたえます。


「んー、そうだね。ふだん石を斬ってるのと変わんないかな。なんか、スパスパ斬れちゃうんだよ」


 剣を使わないエミルとシロンには、なんともよくわからない感覚です。


 というか、ふつうの石だって、スパスパ斬るものではないと思いますけれど。


「私ね、いかにも硬そうだなーってやつが相手でも、なんとなく、"あ、斬れそうだな"って思うことがあるんだよ。それで、そういうときは決まって斬れちゃう。自分でも、よくわかんないんだ」


「そう、なんだ……」


 いつものお姉ちゃんの突拍子もない言葉にも聞こえます。


 けれど、エミルはなにかが気になったようで、うーんと考えこみました。


「……でもね。最近は、なんでそうなるのかなっていうのが、わかりかけてきた気がするんだ。エミルと再会してからね」


「え?」


 エミルは目を丸くします。


「もう少し。もう少しで、それが完全にわかる気がする。だから、エミルにも協力してほしいんだ」


 エイルのやまぶき色のまなざしが、真剣な光を帯びているのが伝わってきます。


 エミルは、思わず胸が熱くなりました。


 お姉ちゃんの言っていることは、あいかわらずよくわかりません。


 けれど、大好きなお姉ちゃんの力になれるのなら……こんなにうれしいことはありません。


「……わかった。わたしになにができるのかわからないけど、協力するよ」


『シロンも!』


「ありがと!」


 エイルはにかっと、満面の笑顔を妹たちに向けるのでした。



 ☆ ☆ ☆



 その後も姉妹は、溶岩に落っこちないように気をつけながら、次々と出現するマグマゴーレムを倒し、火山を下へ下へと進んでいました。


『ゴーレムばっかり! つまんない!』


 シロンは、ぶーぶー不満を叫びます。


 どこまで進んでも、景色もあまり変わりませんし、あきっぽいシロンにとっては、おもしろくないのです。


「妖精は基本的に、戦いを好まないからね。魔法で作り出せて、自由にあやつれるゴーレムは、警備兵として使い勝手がいいんだろうね。強いし」


 魔法生物(ワンダー)の生態にくわしいエミルが説明してあげました。


「でも、食べらんないし、狩りがいがないよ。あー、石ころを食べられるような体になればいいのになー」


 こんなときでも食い意地の張っているエイルが、ぼやきながら歩いていると――


「おっ」


 突然、目の前が大きく開けました。


 そこには、広い広い溶岩の湖がひろがっていたのです。


「わあ……!」


 エミルも思わず息をのみました。


 赤く燃える溶岩が、湖いっぱいにたたえられています。ボコボコ、グツグツと煮えたぎるその様子は、まるで巨大な生きものが、ゆっくりと脈打っているかのようでした。


 熱気が一気に押し寄せてきて、三人の顔をなでます。


「ここが、この火山の火口……」


 エミルが、目の前の溶岩湖を見つめながら言いました。


「そうだね。ここがゴールって感じだ」


 エイルも目を細めながら、赤々と燃える湖を見つめます。


 しかし――そのとき。


 溶岩湖の向こう側で、なにかが動きました。


 ボコ……ボコボコ……


『……ん?』


 シロンが首をかしげます。


「どうしたの?」


『ねえ、あれ……みて!』


 エミルがたずねると、シロンは火口の中心を指差しました。


 そこには、なんと……人影が見えます。


 煙に包まれていて、その姿はよくわかりません。


 いちばん視力の高いエイルが、じっと目をこらして見てみると……


「……だれかが、溶岩のおフロで鼻歌歌ってる」


「『は??』」


 エミルとシロンは、思わずスットンキョーな声をあげてしまいました。


 だって、ふだんからよくわからないお姉ちゃんの発言以上に、わけがわからないんですもの。


 だれかが、溶岩のおフロで、鼻歌を歌ってる?


 そんなこと、ありえるわけが……


『……あ~……いい湯だァ~♪ っはあ♪』


 ……ありました。


 エミルとシロンの耳にも、はっきり聞こえてきたのです。


 それはもう、気持ちよさそうな大音量の鼻歌が。


 煙のすき間から姿が見えたので、三人が注目してみると……


 そこには、赤い短髪とオレンジ色の肌をした男性が、ほんとうに溶岩の中に気持ちよさそうにつかっていました。


『……あれ、きもちいいのかな』


 シロンはぽかんとしながら、ぽつりとつぶやきました。


「……気持ちいいように見える?」


 エミルは、あきれながらツッコみます。


「私は溶岩、おいしそうだと思ったことはあるよ。プリンみたいでさ」


 ……まさか、本気で食べようとしたんじゃないだろうな。


 エミルは、冷ややかな目でエイルお姉ちゃんを見つめました。


 すると――


『んんっ!?』


 ザバァッ!


 姉妹の存在に気づいた男性が、溶岩しぶきをあげて立ち上がりました。


「ひゃあっ!?」


 エミルは思わず目をおおいます。


 野生児のエイルとドラゴンのシロンは、けろっとしたものですけれど。


『やあ! 人間の客人とは、なんとめずらしい! わが領域に、ようこそ!』


 男性は両手をひろげて、姉妹を歓迎してくれました。歓迎してくれているのですが……


「その前に……なにか服を着てくれませんかー?」


 エミルは目をそらしながら、大きな声で呼びかけました。


『服? ……ああ、これは失礼した!』


 男性はひとことあやまると、その全身に炎を集めはじめました。


 炎はみるみるうちに、彼の身にまとわれる服へと変化していきます。


 そして最後に、背中へ炎が集まったかと思うと――


 ボウッ!


 大きな妖精の翼が、炎をほとばしらせながらひろがりました。


(やっぱり……このヒトが、この妖精界の王様!)


 エミルは目をおおっていた手をどけ、驚きました。


 炎の妖精王は、フワーッと浮かび上がって溶岩の中から出てくると、そのまま姉妹のもとまで飛んできました。


『あらためて、わが領域へようこそ! 人間の客人たちよ! オレ様は、キミたちを歓迎する!』


 なんとさわやかで、豪快な雰囲気なのでしょう。これまで出会ってきた、どの大妖精とも違うタイプです。


 エミルとシロンは、思わず面食らってしまいました。


『して、どんな用でわざわざここに来たのかな? オレ様といっしょに、溶岩風呂を楽しみに来たのかな?』


「ちがいます」


 エミルは即答しました。


『ハッハッハッ! そうだな! すまない! オレ様のように炎の妖精にでも生まれていなければ、オススメできないシロモノだったな!』


 炎の妖精王は、そっくり返って、これまた豪快に笑い飛ばしました。


 これはもう、さっさと要件を伝えて、この場を去ったほうがよさそうです。エミルは、そう判断しました。


「実は、これこれしかじかで……わたしたちはシュクレーヌに行かなくちゃいけないんです」


『なるほど、かくかくうまうまで……その導きの光が差したのが、この火山だと』


 炎の妖精王は、事情を飲み込んでくれたようでした。


『ふむ……ところちがえど、同じ妖精界のピンチ。オレ様も、なにか力になりたいところだな……』


 炎の妖精王は、腕を組んで少し考えます。


 そして――


『よし! ここはひと肌、脱ごうじゃないか!』


「『えっ?』」


 炎の妖精王の提案に、エミルとシロンはギョッとしました。


 まさか"ひと肌脱ぐ"って、また服を脱ぐつもりじゃないだろうな。とくにエミルは、気が気ではありません。


 しかし、安心してください。その内容は、エミルが思っていたのとはちがう、まっとうなものでした。


 炎の妖精王が、パチンと指を鳴らします。


 すると――


 ゴゴゴゴゴ……!


 地鳴りとともに、溶岩の中から岩でできた円形の舞台が、ゆっくりとせり上がってきたのです。


『さあ! その舞台に上がれ! 炎の妖精流の魔法を、披露してやろうじゃないか!』


 炎の妖精王は、大きく両手をひろげ、やっぱり豪快に宣言しました。


「えっ……?」


 エミルとシロンはとまどい、炎の妖精王は、ニヤリと笑います。


 どうやら……自分と戦え、と言っているのだと、姉妹は雰囲気で理解するのでした。

お読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、

ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。