↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルリング! エイルとエミルのふしぎな冒険 妖精の国のSOS  作者: 稲葉トキオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/84

第22話 飛べないけど、跳んでゆく

「うげっ」


 三階フロアに足を踏み入れるなり、エイルは引いたような声をもらしました。


 あとにつづくエミルとシロン、シュガーとスノーベルも、同じように顔をしかめます。


 三階もまた、二階と同じく、床が吹き抜けの空洞になっていました。とぎれた道の奥に、次の階段があるのも同じです。


 ただし今回は、ところどころに、宙にぷかぷかと浮かぶ円形の足場が点在していました。大きさは、人間ふたりなら、なんとか乗れそうなほどです。


 どうやら、あれらを乗り継いで先へ進め、ということらしいです。二階より、さらに難易度が上がっています。


 ですが、さいわいというべきか……


「……今回は、それほど風は強くないね。これならレッディに乗って、飛んで渡れそう!」


 エミルは明るい声で言いました。


 この階も二階と同じく、階下から上昇気流が吹き上げてきています。とはいえ、飛行をさまたげるほどの強さではありません。これならムリに足場を渡らずとも、一気に空を飛んで攻略できます。


「それじゃレッディ、出ておいで……」


 エミルは指輪から、【ソルフェニックス】のレッディを呼び出そうとします……


 が、反応がありません。


「あ、あれ? レッディ、どうしたの?」


 エミルは指輪の宝石をのぞきこんでたずねてみますが、やっぱり反応がありませんでした。


『あの……レッディも同じ鳥だから、神鳥を恐れているんじゃ……?』


 シュガーが、わずかに声を震わせながら推測を口にしました。人一倍おくびょうな彼女の言うことだけに、妙な説得力があります。


 たしかに、二階で出会った【ストームバード】も、頂上にいるであろう【神獣シルフムルグ】を恐れて、引き返していきました。


 不死鳥とはいえ、同じ鳥であるレッディもまた、鳥の頂点ともいえる存在におびえるのは、ムリのないことかもしれません。


「じゃあ、シロンに乗っていけばいいよ。シロンもおっきくなったら、乗れるでしょ?」


 エイルが提案しました。


 シロンはチビドラゴンですが、エミルの生命エネルギー(マナ)をもらえば、魔法で人型や大きなドラゴンに変身できます。


 しかし……


『ううん。むりだよ。シロン、エミルひとりしかのせられないもん』


 シロンは、かぶりを振りました。


 魔法生物(ワンダー)が人間を安全に乗せて移動する《騎乗(ライド)》の魔法は、高い技術を必要とします。ふだんチビドラゴンの姿ですごしているシロンは、そんな訓練をしていません。エミルひとりを乗せて、短時間飛ぶのがせいいっぱいなのです。


 しかも、けっして安全とはいえません。この部屋の上昇気流の中では、エミルを振り落としてしまうおそれがあります。


『それに、それだけじゃない。階を登って神鳥とやらの威圧感が強まったせいか、私たちも羽をうまく動かせない。こうして宙に浮いてはいられるけど、気流の吹く中での飛行はムリよ』


 スノーベルが、わずかに顔をしかめて言うと、シロンもうんうんとうなずきました。


 どうやら、神鳥の威圧感は、羽や翼を持つものには、とくに強く影響するみたいです。


「じゃあ、しょうがないな。だったら、あの足場をジャンプで乗り継いでいくっきゃないね」


 エイルはキリッと、点在する足場を見すえると――


 助走をつけて、いきなり大ジャンプ!


「『わあっ!?』」


 取り残されたエミルたちは、いっせいに声をあげます。


 宙に浮かぶエイルは、上昇気流にも助けられ、ふわふわと浮かびながら、最初の足場へと無事に着地しました。


「『ふう~……』」


 見守っていたエミルたちは、いっせいに安堵のため息をつきました。


「ほらー! エミルたちも早くおいでよー!」


 向こう側で、エイルが元気に手を振って呼びかけてきます。


 ムリだよ。


 そう言いたい言葉を、エミルたちは飲みこみました。だって、言ってもきっとムダですもの。


 なにしろ、いまいる階段前から、エイルのいる足場までの距離は、十数メートル以上はあります。走り幅跳びの記録保持者だって、あんなに遠くには跳べません。それができるのは、エイルの超人的な身体能力と、強力すぎるパートナーたちの加護があってこそです。


 そんなとき、シロンが自信ありげに言いました。


『じゃあ、シロンがエミルをつれてとぶよ』


「え? でも、いまのシロンはうまく飛べないんでしょ?」


『とぶんじゃないよ。とぶんだよ』


『いや、なにがちがうのよ。意味わかんないんだけど』


 スノーベルも、あきれ顔でツッコミを入れます。


『だからー……』


 すると、シロンの体が光に包まれ、その姿がみるみる変わっていきました。


 それは、身長160センチ前後で、白いボブカットの髪とワンピース、クリーム色の肌に金の瞳。そして、ぷにっとしたツノとしっぽ、さらに翼を生やした、かわいらしい少女の姿でした。


 はじめて見るシュガーは、びっくり仰天です。


『私がエミルをかかえて、お姉ちゃんみたいにジャンプであっちにわたるってこと!』


 その言葉づかいからは、ふだんのシロンの幼さが薄れており、シュガーはさらにびっくりしました。


『あー、そういえば、あんた、人型になれるんだっけ』


 スノーベルは思い出したように言いました。まったく感心した様子はありません。


『そうだよ。いまの私なら、ひとっとび!』


 シロンは胸を張って言うと、さっそくエミルを抱えようとします。


「ちょ、ちょっと待って、シロン。本当にできるの?」


 エミルはあわてた様子で、いぶかしげにたずねました。


『う、うん。たぶんできる……と、思う……』


 そのトーンはだんだん落ちていき、自信のなさがにじみ出ていました。


『ちょっと! さっきのドヤ顔は、なんだったのよっ!』


 スノーベルは、くわっとシロンにつめ寄りました。


『いや、きゅうになんかこわくなっちゃって』


『早すぎでしょ、日和るの!』


 スノーベルは、ただあきれるばかりです。


 エミルとシュガーも、苦笑いを浮かべました。


 たしかに少女の姿でも、ドラゴンのシロンの身体能力は高いです。ですが、それでもエイルにはおよびません。さらにエミルを抱えてとなると、まず不可能でしょう。跳ぶ前に、それをちゃんと判断できたのは、りっぱと言えるかもしれません。


 しかし……またも八方ふさがりであるという事実は、変わりませんでした。


『そういえば、ベルもおっきくなれるんじゃないの?』


 シロンは以前、スノーベルが人型に変身しているところを見たことがあるのです。


『ザンネンだけど、あのチカラはもう使えないわ。浄化されて、なくなっちゃったからね』


『これが真の姿だー、とか言ってたくせに?』


『うるさいわね! いまはそんなことどうでもいいでしょ! それより、ここをどうくぐり抜けるかが重要でしょ!』


 シロンとスノーベルが、不毛な言い合いをしているときでした。


『あの……わ、わたしにひとつ、考えがあるんですけど……』


 シュガーが小さく手をあげるのでした。


 この塔の攻略において、冴えに冴えている彼女の提案に、エミルたちは耳をかたむけます。

お読みいただき、ありがとうございました。

このおはなしがおもしろい、つづきが気になると思っていただけたら、

ブックマーク登録や下↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。