砂に溺れた女 3
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「でかしたぞシャハラ! お前はやればできる女だな!」
アズラクの間に戻り、ユエに精霊の封印のうちの一つがリシャーフ・マスジドにあるらしいと教えると、彼は感激のあまりシャハラに抱き着いて喜んだ。よほど嬉しいのだろう。尻尾が左右に激しく揺れている。
「そうと決まれば今夜にでも――」
「あ、ユエ。もう一個あるの。というか、こっちの方がちょっと急ぐのよ」
「あん?」
ユエは抱擁を解いて眉を寄せた。
「俺様にはファイサルの封印以外に急ぐもんなんてねぇんだが」
「そう言わないで、ちょっと聞いてよ。今日ね、下級妃の一人の、ラーイダって人が亡くなったらしいんだけど」
「人間なんだ、生きてりゃ死ぬこともあるだろ」
「砂を吐いて死ぬことも?」
「……なんだって?」
「砂を吐いてミイラみたいに干からびて死んでいたんだそうよ。しかも、医官によるとお腹の中も砂でいっぱいの可能性があるんだって」
ユエはどかりと寝台の縁に座って腕を組んだ。
「なんだそりゃ。本当か? ああ、そういえばお前、少し前に妙にくさかったな」
「くさかったって言わないで!」
「やっぱりここにはほかに何かいるんだろ。幽鬼か妖怪……いや、この二つなら俺が感じ取れないはずがない。となると、精霊か? あいつらの気配は感じ取りにくいんだよな。特に故意に気配を消してやがったらわかりゃしねえ」
「だからファイサルの気配もわからないの?」
「それは違う。あいつの気配はわかる。ダチの気配がわからねえわけないだろ。感じ取れねえのは封印されているか、どっか遠くにいるからだ。俺が来てるのに姿を現さないってことは、封印されている可能性が高い」
こういうことだろうか。ユエは、知っている精霊の気配ならばわかるけれど、知らない精霊の気配は感じ取りにくい。相手が故意に気配を消していたら特に。
ということは、今回の怪異の原因をユエに突き止めてもらおうと言うのは難しいかもしれない。
「ねえ、わたし陛下に怪異の原因を探れって言われたんだけどどうしたらいい?」
「おい、やめとけ。人間をミイラにして殺すような相手だ。結構な力を持っていると見た。幽鬼を見ることしかできないようなお前じゃ、逆立ちしたってたちうちできない」
「じゃあどうしたらいいのよ」
「……ファイサルを探そう。それが一番の近道だ。精霊のことは精霊にってな。俺様が気配を感じ取れなくとも、精霊なら精霊の気配に敏感だ」
つまり、リシャーフ・マスジドに忍び込んでそこにファイサルが封印されているかどうかを探るのを優先すると言うことか。
それが怪異の原因究明の近道になるのなら、シャハラも異論はない。
「わかった。でも、場所は聖職者の住処のモスクだよ? 準備もなく向かって、失敗しない?」
ユエはぐぅと唸った。
「……三日後だ。三日後までに、準備を整えとく」
失敗すると次に忍び込むのが難しくなるとわかっているユエは、渋い顔で唸った。
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