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なんちゃって妃は怪異解決がお仕事です ~したたか娘と自堕落天狐の千夜主従物語~  作者: 狭山ひびき


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ユエの目的 6

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 その頃の、ユエである。


 アズラクの間を出たユエがまずしたことと言えば、扉に仕掛けをすることだ。

 外からは絶対に扉が開かないように術をかけて、ついでに扉に触れた瞬間、触れたところがビリッとしびれるようにしておいた。ちょっと触れるだけではたいしたことはないが、あんまりしつこく扉に触れれば、足腰立たなくなるくらいのしびれが全身を襲うようにしてある。


 ただ、あくまでもこれは保険。

 アズラクの部屋の前まで相手がたどり着くことはないだろう。


(さーって、行くか。やれやれ、今日は大忙しだな、おい)


 三人の妃妾に嫌がらせをして、次はこの国の王が相手と来た。いやあ、忙しいな俺。

 ユエは足取り軽く廊下を進む。

 その途中、宦官が足早にアズラクの間に向かうのを見た。

 ユエが軽く手を振ると、その宦官がぱたりとその場に倒れ込んで、大きないびきをかきはじめる。


「安心しな。春だし朝まで起きなくとも風邪はひかねえだろ」


 雑魚には用はないとつぶやき、ユエは進む。

 しばらく歩いていると、夜食だろうか、明らかに夕食と違うものを運んでいる女官を発見した。この女もアズラクの間に向かうようだ。ユエはひょいっと女官から配膳台を奪い取った。


 女官には、突然配膳台が宙に浮いたように見えただろう。悲鳴を上げ、白目をむいてぶっ倒れた。


(あ、まずい。怪異は起こすなって言われてたんだった。…………ま、いっか)


 配膳台には果物やナッツ、チーズなどが乗っていた。葡萄酒もある。ユエは手早くそれを胃の中に押し込めると、空っぽになった配膳台を女官の隣に置いた。


「ごちそうさん。酒はいまいちだったぜ。次はもっと強いのを頼む」


 気絶している女官には聞こえたいないだろうが、ユエは満足して歩き出す。

 またしばらく歩いていると、ぞろぞろと大勢の宦官を連れた二十代半ばほどの男を発見した。

 豪華な着衣を着た男だ。ハレムは男子禁制。宦官を引きつれて堂々と歩ける時点で、この男が王のカリムだろう。


(俺のおもちゃに手を出そうってぇのはてめえか)


 ユエはカリムをはじめて見たが、なかなかの色男だった。それが気に入らない。女に不自由はしていないのだから、ユエのおもちゃにまでちょっかいをかけないでほしい。

 それにしても、とユエは泰然と歩いているカリムを見やる。


(この国の女はこういう男がいいんだろ? 今から抱きに行くって言われたら舞い上がって喜ぶのが普通だよなあ? 身分もあって金もあるんだからよ。……シャハラは変わってるねえ)


 くつくつとユエは笑う。

 きっと目の前の男は、女から拒絶されたことはないだろう。シャハラは万が一この男が部屋に来ても表面上は取り繕うつもりでいたようだが、その心中を知ったらこの男のプライドはずらぼろになるだろうか。それはそれで見ものだが、それでもユエはカリムをシャハラに近づけるつもりはない。


(俺のおもちゃに贈り物(マーキング)なんてしやがって、たかだか二十数年しか生きていない小僧が生意気な)


 さて、どう料理してやろう、とユエは舌なめずりをする。


 長い夜になりそうだった。





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