表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんちゃって妃は怪異解決がお仕事です ~したたか娘と自堕落天狐の千夜主従物語~  作者: 狭山ひびき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/36

ユエの目的 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 ユエの生まれた国は何度か国名が変わったが、今は(さん)と名乗っているそうだ。

 シャハラの母詩夏の祖国の名前も、確か燦だった。やはりユエと母は同じ国出身だったのだ。


 ユエはそこで、長い時を生きたが、ある時、一人の人間と仲良くなったと言う。

 その男は、後に前政権を打倒して燦の国を建てた。

 ユエはその男が天下を取るのに協力し、当たり前のように宮中に居座って生活していた。


 それからまた、長い時が流れた。


「たぶん、百五十年くらいは経ったかな。あいつが死んで、その息子、孫、その次の次くらい……たぶん、四代か五代くらい皇帝の代替わりがあった。人はすぐ死ぬ」


 男が死んでも、ユエは宮中に居座り続けた。そこが自分の居場所だったからだ。

 だが、皇帝が代替わりするにつれて、ユエが燦国を建国するのに手を貸したことなど、すっかり忘れ去られていた。

 皇帝はユエを疎ましく思い、法師たちに相談した。

 そしてユエは追い出された。


「別によ、応戦してもよかったんだぜ? だがまあ、死んだあいつへの義理もあるからな。俺様が国を亡ぼすわけにもいかねえだろ。だから、俺様の方が引いてやったんだ」


 シャハラにはそれが真実かどうかわからなかったが、ユエが強い力を持った妖怪――と呼んだら怒るだろうが――なのは知っている。だから、ユエが本気を出せば国が傾く騒ぎになったかもしれないというのは本当かもしれない。


「あのまま燦の国に居座るのはあんまよくねえなと思って、俺は場所を移すことにした。そこで思い出したのがこの国だ。この国にいる精霊にファイサルって男の精霊がいるんだが、俺とあいつはダチなんだ。だから、この国でファイサルと面白おかしく暮らそうと思って来たんだがよ、あいつの気配がねえんだわ。精霊は死なねえから、どっかにいるとは思うんだが、見つからねえから困ってたところにここを見つけて住むことにしたってわけだ。ここなら食うもんにも困らねえからな」


 食べるものに困らないと言うのは、厨房に行って盗めば、の話だろう。頭が痛い。


「見つからないってことは、そのファイサルって精霊はどこか別の国に移動したってこと?」

「わからねえ。もしかしたら聖職者(カーヒン)に封じられた可能性もあるな」


 確かに、その可能性もゼロではないだろう。

 カディール国は精霊信仰の国だが、少し特殊なのだ。

 というのも、精霊にはいい精霊もいれば悪い精霊もいる。悪い精霊は悪魔(シャイターン)と呼ばれて恐れられており、人々に禍をもたらすと言われている。


 ゆえに、人々に害をなした精霊を、聖職者はランプや壺などに封じ込める術を持っているのだ。

 シャハラはふと、昨日の夜にカリムが言っていた言葉を思い出した。


 ――悪さをした精霊は聖職者によって封じられるからな。案外、その女の精霊は何かをしでかしたのかもしれん。この国で確認されている精霊の封印は三つあるが、もしかしたらそのうちのどれかに入っているのかもな。まあ、私の治世に精霊なんぞ必要ない。精霊の力を借りて国を治めていたのなんて、それこそ百年以上も前の話だ。そのような前時代的な力など、私には不要だ。


 あの時はさらりと聞き流したが、もしかして、三つの封印のうちのどれかがファイサルのものなのだろうか。


「ねえユエ。カディール国には今、三人の精霊が封印されているらしいわよ。そのうちのどれかがファイサルのものなんじゃない?」

「なんだと? それは本当か⁉」

「う、うん」

「その封印はどこだ!」

「わ、わたしにはわかんないけど、聖職者が封印するんだから、聖職者がいるところじゃない? たとえばモスクとか……」


 ユエが舌打ちした。


「モスクか。聖職者がうようよいるあそこは、俺も安易に忍び込めねえな。やってやれねえことはないが、一度忍び込んだら騒ぎになる。二度目の警備が厳重になるからな。無駄打ちはできねえ。おいシャハラ。その話が本当なら、どこに精霊の封印があるか調べられねえか? ファイサルかどうかがわかればなおいいが、贅沢は言わねえ。とりあえず、封印の場所が知りたい」


 わたしに言われても……とシャハラは困ったが、ユエがあまりに真剣な顔をしているので口には出せなかった。

 ユエにとって、その友達はとても大切な人なのだろう。少しだけ悔しいような羨ましいような気持ちになる。シャハラには、友人と呼べる存在がいない。母が死んでからずっと一人だったからだ。強いて言えばユエだが、ユエは友人とは少し違う気がする。彼もシャハラを友達だなんて思っていないはずだ。それが、なんだか悔しい。


「調べられるかどうかわかんないけど、頑張ってみる」

「おう、悪いな」


 ユエが笑う。

 シャハラはそれに笑い返そうとして、顔が少し引きつったのを感じた。


 ファイサルが見つかれば、ユエはここを去るのだろうか。

 シャハラを置いて。


 とっとといなくなってほしいと思っていたはずなのに、この傍若無人な居候がいなくなるかもしれないと思うと、どうしてか胸が痛かった。




面白い!続きが気になる!続きが読みたい!と思ってくださった皆様、

ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ