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白砂のシャハラ~ハレムの千夜怪奇の物語~  作者: 狭山ひびき


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王の気まぐれ 7

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 午後六時の鐘が鳴る前、シャハラはハレムの中にある酒宴場へ向かった。

 母の形見の青い服に、シャハラはじゃらじゃらと宝石をまとった。服に合わせて青系統の石を選んだが、首飾りが恐ろしく重い。大きい方がいいだろうと、一番大きな宝石のついたものを選んだのが失敗だった。すでに肩が凝って来た。


 酒宴場の前には宦官が数名立っていて、シャハラの姿を見るとすぐに女官を呼んでくれた。

 案内役の女官がシャハラの席に案内してくれる。


 驚いたことに、シャハラの席は上座に近かった。

 酒宴場にテーブルと椅子はなく、分厚い絨毯の上に直接座る形だが、王の座る上座はわかる。一段高くなっているからだ。

 シャハラの席は、のそ上座から見て右隣の席だった。つまり、一段高くなっている上座のすぐ下である。新参者なのになんでこんな格上の席が用意されたのだろう。


 子供のような外見のシャハラが王の席のすぐ近くの場所に座ったせいか、シャハラよりも下座に座っている妃妾たちが鋭い視線を向けてきた。


 王はまだ来ていないが、妃妾は半分くらいが集まっているだろう。席がそのくらい埋まっている。


(ナジャーフ様は、まだ来ていないわね……)


 こういう時に顔見知りがいると心強いのだが、まだその姿は見えなかった。なんとなくナジャーフは王のお気に入りな気がするから、時間ぎりぎりにもったいつけて入って来そうだ。

 あちこちから向けられる視線に居心地が悪い思いをしていると、六時の鐘が鳴ったちょうどに、宦官が王の到着を告げた。


 酒宴場の入り口を見ると、王がナジャーフの腰を抱いて入って来るところだった。なるほど、王と一緒に入って来ると言うことは、ナジャーフと王の関係はシャハラが思っていた以上に親密なのだろう。


 シャハラは酒宴場にいる妃妾の表情をこっそりと観察した。

 悔し気に唇を曲げるもの、王を見てうっとりするものと様々だ。

 シャハラは思った。


(悔しそうな顔をしている人には近づかない方がよさそうね)


 つまりは、王の寵を狙っている妃妾たちである。そんな人に近づけば面倒ごとに巻き込まれかねない。シャハラは不機嫌な女たちの顔を一人ずつ記憶して言った。合計で十九人。結構多い。というか、酒宴場に呼ばれたのは全員でないはずだ。ハレムにはいったいどれだけの妃妾がいるのだろう。


 王がナジャーフの腰を抱いたまま上座に座る。

 その際に興味深げにシャハラを見た。ナジャーフはシャハラににこりと微笑を向ける。今のところ、ナジャーフはシャハラの味方でいると考えていいだろう。


 王が座ると、女官たちが酒や料理を準備しはじめた。

 ゆったりと座った王にナジャーフがしなだれかかるように寄り掛かり、その豊満な胸を王の肩にむっちりとつけている。シャハラはちょっとだけ、あの胸は気持ちよさそうだと思った。

 料理と酒がいきわたると、王が金色の杯を掲げた。


「ハレムの怪異終結に」


 そう言った瞬間、王がシャハラにちらりと視線を向けた。どうやら今日の酒宴で、シャハラは王から放置してはもらえないようだった。





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