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なんちゃって妃は怪異解決がお仕事です ~したたか娘と自堕落天狐の千夜主従物語~  作者: 狭山ひびき


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王の気まぐれ 3

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(ほぅほぅ、盛況なこった)


 一方その頃。

 ユエはふらふらと市の中を歩き回っていた。

 もちろん、ユエの姿は誰も認識できていない。

 女たちの間を縫うように歩きながら、ユエはひょいっと天幕の下の店を見てはまた歩く。


(さぁて、どうすっかな。店のものを盗めば怪異を起こすなってシャハラが怒りそうだし。だけど、金なんて持ってねぇしな)


 ユエは考え、名案を閃いた。

 金がないなら手に入れればいい。

 店の商品を盗むのがだめなら買えばいい。

 そうだ。物事はとても単純である。


 そこでユエは、近くを歩いていた派手な格好をした女から財布を盗むと――商品ではないから盗んではだめだと言う認識はない――適当な木陰に入り、術を使った。

 するとどうだろう。

 ユエの姿は一瞬で妖艶な美女に様変わりする。姿も、他の人間に見えるようにしておいた。


(これでいいだろ)


 ユエは財布を片手に、足取り軽く店を回り、目についたものをポンポンと買っていく。


「おい親父。そこの花の形の砂糖菓子をあるだけよこしな」

「は、はい、わかりました……」


 美女の口から出た乱暴な言葉に、商人が目を丸くしながら、店に並べていた砂糖菓子を麻の袋に詰めていく。ユエから金貨を受け取り、その後でお釣りを返すとユエは首をひねった。


「うん? なんで増えるんだ?」


 金を使ったことのないユエは、金貨の下に銀貨や銅貨があることを知らない。何度も首をひねりつつ、まあいいかとまた歩き出した。


 そうして、酒を見つけては酒を買い、菓子を見つけては菓子を買う。

 両手に大量の荷物を抱えて歩くユエに、店主も女たちも不思議そうな顔を向けたが、機嫌のいいユエはちっとも気にならない。


(なんだ、はじめからこうすりゃよかったんだ。ああでも、菓子や酒はあるけど肉がねえな。ちっ)


 ユエは舌打ちしつつ、荷物を抱えたまま店を渡り歩く。

 見かねた宦官が「部屋まで運びましょうか」と声をかけて来た。


「ん? おぅ、気が利くな。じゃあ……あー、いや、いい」


 届け先が怪異のあるアズラクの間だと言えば、変に思われるだろう。あの部屋はシャハラが使っているのだ。ある意味目立つ容姿のシャハラと変化しているユエを見間違えるはずもない。


(シャハラから怪異騒ぎは起こすなって言われてるからな)


 ユエは「自分で運ぶからいい」と断り、また歩き出す。

 宦官が首をひねりながら去って行った。

 そうしてまた次々と目につくものを買っては荷物を増やしていったユエは、ある店の前で足を止めた。櫛屋だ。なかなか質のいいものを扱っている。


 ユエはこう見えて意外と目利きである。「ふぅん」とつぶやき、ユエは並べられている櫛の中で、見事なべっ甲細工の櫛に目を止めた。質のいいべっ甲に、花模様が彫ってある。


(なかなかいいじゃねーか)


 ユエは口端を持ち上げて、店主からべっ甲の櫛を買うと、また機嫌よく歩き出した。


(ま、たまには褒美っていうのも必要だよなあ。だって俺様は契約主様、つまりはご主人様だからな!)


 シャハラが聞けば、ご主人様ではなくただの居候だと激怒しただろう。


 ユエはその後も買い物を続け、ほくほく顔でアズラクの間に戻った。




面白い!続きが気になる!続きが読みたい!と思ってくださった皆様、

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