外伝 天野雫(中編)
休日。
昼過ぎ。
ファミリーレストラン。
休日ということもあり店内は賑わっていた。
その一角。
長いテーブル席へ、次々と見慣れた顔が集まってくる。
御影。
西野。
河野。
大山。
北見。
柳下。
ひまり。
宮坂。
そして、
紬、江口、雫。
誰一人欠けることなく揃った。
雫は思わず笑う。
「すごい。」
「本当にみんな来た。」
江口が笑う。
「このメンバー。」
「集合だけは異様に早いんだよ。」
「確かに。」
紬も苦笑いする。
全員が席へ着く。
ドリンクバーへ行く者。
メニューを見る者。
自由そのものだった。
そんな空気の中。
西野が口を開いた。
「雫ちゃんは。」
「陽介に合うと思うぞ。」
あまりにも早い結論だった。
御影がすぐ止める。
「竜。」
「焦るな。」
西野が首を傾げる。
「ん?」
御影は落ち着いた声で言う。
「雫ちゃんに陽介が合うかは別問題。」
「あ。」
西野も納得する。
「そっか。」
そのやり取りにみんなが笑った。
「まずは陽介の話だね。」
河野が微笑む。
そこから自然と。
陽介の思い出話が始まった。
ひまりが口を開く。
「雫ちゃんに陽介はもったいない。」
少し笑う。
「でも。」
「陽介には雫ちゃんしかいない様な気がする。」
「おぉ。」
西野が頷く。
宮坂も真顔で言う。
「あいつは誰でも合うだろ。」
「バカだから。」
全員が同時に突っ込む。
「お前が言うな。」
宮坂だけが首を傾げる。
「え?」
また笑いが起きる。
雫も笑っていた。
こんなに気軽に笑い合える仲間なんだ。
河野が雫を見る。
「雫ちゃんは興味あるの?」
雫は正直に答えた。
「顔と名前が一致しません。」
みんなが笑う。
「でも。」
「興味があります。」
「みんなの仲間なんですよね?」
その一言に。
全員が自然と頷いた。
紬が少し心配そうに口を開く。
「私は。」
「雫が陽介に迷惑かけないか心配。」
「大丈夫。」
大山が笑う。
「それすら楽しむやつだから。」
「確かに。」
西野も笑う。
柳下が思い出したように言う。
「てかさ。」
「陽介今独り身?」
北見がすぐ答えた。
「相手いないに一票。」
「俺も。」
「私も。」
「一票。」
気付けば全員が手を挙げていた。
「結果。」
「独り身に十票。」
江口が笑う。
雫は思わず聞いた。
「モテないんですか?」
江口は首を横に振る。
「いや。」
「多分モテる。」
「でも。」
「ステータスが野次馬に全振り。」
「野次馬?」
雫は首を傾げる。
西野が少しだけ考えてから言った。
「いつも。」
「最高の位置で。」
「最高の瞬間を見てるやつ。」
雫はその言葉を頭の中でゆっくり想像した。
最高の位置。
最高の瞬間。
「……凄いですね。」
「それ。」
西野が嬉しそうに笑った。
「だろ?」
雫は少しだけ遠くを見る。
「隣にいたら。」
「最高のシーン見れるって事ですよね。」
「凄く良いですね。」
少し笑う。
「会ってみたいです。」
その一言で。
空気が少しだけ変わった。
柳下が腕を組む。
「でも。」
「今どこにいるかわからないんだよね。」
御影が苦笑いする。
「スレから消えたからね。」
「噂じゃ。」
「携帯無くしたらしい。」
西野が吹き出した。
「マジか。」
「あいつ相変わらずおもしれぇな。」
「連絡手段失くすなよ。」
河野も笑う。
大山がスマホを見ながら言う。
「もう一回。」
「スレ招待してみたら?」
御影。
「やってみる。」
全員がスマホを見る。
数秒後。
ピコン。
画面に一言。
陽介参上!!
「来た!」
江口が笑う。
宮坂。
「バカが来た。」
西野。
「祭りには帰って来い。」
すぐ返信。
「了解です。団長様。」
一瞬でいつもの空気になる。
雫はそのやり取りを見ながら笑っていた。
「この空気感。」
「軽くて良いかも。」
みんなが雫を見る。
雫は少し照れながら続けた。
「是非。」
「紹介してください。」
「でも。」
「当日まで秘密にしてください。」
「私も初めてのことで戸惑ってるので。」
紬は少し驚いた顔をした。
「雫の。」
「こんなとこ初めて見たかも。」
江口が手を挙げる。
「はい。」
「じゃあ多数決。」
「陽介に紹介しても良いよって人。」
「挙手。」
一人。
また一人。
気付けば。
全員の手が上がっていた。
満場一致。
反対する者は誰もいない。
それぞれが雫と関わり、
一緒に笑い、
一緒に過ごしてきた。
だから。
紹介することに迷いはなかった。
紬だけが小さく呟く。
「……ちょっと心配。」
その一言に
みんなが笑った。
(後編へ続く)




