第三十八話 言葉の一雫
午後十八時半。
石階段下。
狛犬前。
早く着きすぎた。
この街の景色はとても綺麗だ。
どれだけ見ても飽きない。
そこに夏祭りの匂い。
焼きそば。
イカ焼き。
りんご飴。
肉巻きおにぎり。
今日、ここにみんなで参加できる。
それだけで最高だ。
大山と河野が来た。
今日もりんご飴半分づつシェアしてる。
ニヤニヤしながら狛犬の影から、
パシャリ。
「一枚目〜。」
そのあと、西野と御影。
なんだろう。
二人の雰囲気良い。
ニヤニヤが止まらない。
パシャリ。
「二枚目〜。」
野次馬コレクションが出来ていく。
柳下と北見が合流。
「良かった、間に合った。」
「麟ちゃんが帰り遅いから間に合わないかと思った。」
「麟ちゃん?」
やべぇ。
知らないとこで関係が進んでる?
パシャリ。
「三枚目ー。」
陽介は狛犬の影から出れなくなっていた。
安西と宮坂が走って来た。
「間に合った。」
二人は今日街に帰って来たらしい。
「せっかくだから。」
パシャリ。
「四枚目〜。」
「陽介何してるの?」
ニヤニヤしながら写真を撮っている陽介の後ろから天野と江口が女性を一人連れて来た。
見られた恥ずかしさで五枚目の写真を撮り誤魔化す。
みんな合流した。
西野が笑う。
「陽介、前に出ろ。」
「おう。」
「緊張する。」
御影が微笑む。
「紹介するわ。」
天野が言う。
「この子は天野雫。」
「私の一つ下の妹よ。」
江口が笑う。
「かわいいだろ。」
「江口。」
「お前何目線?」
大山が笑う。
「陽介と似た様なタイプかなって。」
河野も頷く。
「そうだねー。」
安西が言う。
「今はうちのアクセサリー店でバイトしてる。」
宮坂が笑う。
「看板娘だよ。」
江口が笑う。
「女将の妹は看板娘。」
「シナリオ書けそう。」
柳下が背中を押す。
「話してみなよ。」
北見が微笑む。
「雫ちゃん、今日もかわいい。」
雫が頭を下げる。
「はじめまして。」
「最近皆さんに仲良くしてもらってます。」
「天野雫です。」
さすが呉服店の娘。
浴衣の着こなし。
所作。
全てが完璧。
「学生時代から良く話には聞いてました。」
「面白そうな人だなって興味ありました。」
「やっと会えました。」
西野が手を叩く。
「よーし、祭り見て回るか。」
「二十三時境内集合な。」
天野が雫を見る。
「ちゃんとエスコートよろしく。」
天野から雫が託された。
江口が笑う。
「変な事すんなよ。」
江口は天野に連行された。
二人になった。
陽介は雫に尋ねた。
「みんなの面談大丈夫だった?」
「あのメンツが満場一致ってすごいね。」
雫は笑う。
「私から頼んだんです。」
「陽介さんの隣に相応しいか見てくださいって。」
「度胸あるね。」
「みんなの話は昔から聞いてたので、楽しかったですよ。」
「お姉ちゃんが反対しなかったのが意外でしたけど。」
雫が微笑む。
「今、カメラやってるんですよね?」
「どうですか?」
「いろんなとこ行けて羨ましいです。」
陽介は笑う。
「楽しいよ。」
「この世界はいろんなかっこいいに満ち溢れてるって実感する。」
「雫ちゃんは将来何したいの?」
雫は笑顔で答えた。
「私は、いろんなもの見てまわりたいです!」
「綺麗なもの。」
「神秘的なもの。」
「面白いもの。」
「なんでも見たい。」
「私、なんでも出来ます。」
「でもこれだ!ってのが無くて。」
「器用貧乏なのかな。」
「でも、楽しい事が好きです。」
少し笑う。
「器用貧乏のおかげでいろんな経験できてます。」
「お得ですね。」
雫は笑っている。
陽介は思った。
(こういう考え方をすればよかったのか。)
(この子凄いな。)
(何もないじゃない。)
(いっぱいあるんだ。)
陽介は笑う。
「体が反射的にシャッター押してる時がある。」
「その時は最高か最悪かのどちらか。」
「あんまり意識して撮るとなんか後で違うってなるんだよなー。」
雫は少し心配そうに尋ねた。
「いろんなところ行って。」
「体とか気持ちとか辛い時無いですか?」
「心配です。」
陽介は笑う。
「でも、好きでやってるから頑張れる。」
雫は微笑む。
「最後に一つ質問良いですか?」
「それ聞いたらお祭り楽しみましょう。」
「良いよ。」
雫は静かに尋ねた。
「今、あなたが見落としてる最高はありませんか?」
陽介は返事をしない。
一歩離れる。
ポラロイドを構える。
パシャ。
写真が出てくる。
振りながらニヤッと笑う。
雫に渡す。
そこには笑っている雫。
そして、
「あるよ。」
雫は嬉しそうに笑った。
陽介は自然に言う。
「いつか、一緒に世界を見て回ろう。」
「はいっ!」
元気よく返事をする雫。
陽介は笑った。
「祭り楽しむぞー!!」
「はーい!」




