第三十七話 変わらない街と変わった未来
二十五歳の時と同じ部屋。
しかし。
置いてあるものが違う。
昨日帰って来たばかりだから。
スーツケースは開いたまま。
部屋も少し散らかっている。
掃除も。
洗濯も。
まだ何も出来ていない。
ふと携帯を見る。
2026年7月31日
通知が一件。
『今日の夏祭り、遅刻すんなよ。』
二年三組のスレは。
『御影連絡スレ』
に名前が変わっていた。
陽介は返信する。
『起きてる。』
『集合十九時だよね?』
すぐ返信が来る。
『そうそう。』
『石階段下の狛犬前。』
『しっかりめかし込んで来いよ。』
『は?』
『甚平で良いじゃん。』
『良いけど。』
『しっかり着てこいよ。』
『どした?』
少し間。
『どうせ陽介独り身だろ?』
『恋人もいないと思って。』
『紹介したい人いるから。』
『え?』
『どした?』
『なんでそんな事になった?』
返信はすぐだった。
『安心しろ。』
『こっちの十人に面談済み。』
『満場一致で紹介が決まったから。』
『遅刻すんなよ。』
『じゃ、また後で。』
やり取りが終わった。
スレには十人分の既読マーク。
なのに。
誰も発言しない。
画面の向こうで。
ニヤニヤしてるんだろうな。
それだけは分かる。
まだ時間はある。
久しぶりに散歩へ出た。
昨日、この街へ帰って来た。
でも昨日は、高校生で初詣していた。
不思議な感覚だった。
学校前。
「変わらないな。」
景色も。
匂いも。
暑さも。
さらに歩く。
天野呉服店。
隣には。
コスプレ衣装レンタルします。
そんな看板が増えていた。
思わず笑う。
店の裏では。
神輿の最終準備で盛り上がっている。
さらに歩く。
西野工務店。
まだ小さい工務店。
裏から。
和太鼓。
お囃子。
それより大きな笑い声。
「西野。」
「相変わらず声デカいな。」
「さすがだ。」
さらに歩く。
提灯が並んでいる。
スポンサー名が書かれていた。
西野工務店。
天野呉服店。
安西アクセサリー。
江口シナリオカンパニー。
大山キャンプ。
河野料理教室。
宮坂陸。
「宮坂だけ本名。」
「ウケる。」
その時。
前からスーツ姿の柳下が走って来た。
「柳下。」
「仕事中?」
「お疲れ。」
柳下は笑う。
「今上がりだよ。」
陽介は思い出した。
「そういえば。」
「祭りで紹介したい人いるって。」
「誰?」
柳下は苦笑いする。
「その件は後でね。」
「急いでるから。」
「北見と待ち合わせ。」
「時間やばい。」
そう言って走って行った。
「……。」
何も分からなかった。
でも。
面白そうな匂いがする。
陽介の野次馬スイッチが入った。
祭りへ向けて。
一度家へ戻る。
カメラの準備。
今日は。
仕事用のカメラじゃない。
ポラロイドを選んだ。
撮ったら。
すぐ見たい。
今日は特別だから。




