第三十六話 野次馬の才能
陽介だけがその場に残る。
「何なんだよ……。」
その様子を見ていた江口が吹き出した。
「スキル野次馬。」
「ウケる。」
「スキル野次馬って何だよっ。」
陽介が思わずツッコむ。
天野が少し考える。
「そういえば。」
「いつでもどこにでもいるよね。」
「いつも何かしながら。」
「何か探してる感じ。」
安西も思い出したように笑う。
「そうそう。」
「ミスコンの時も。」
「ベストポジションから見てた。」
「最前列のど真ん中。」
「終わったら袖の脇にいるし。」
北見が笑いながら一枚の絵を見せる。
「クラス替え初日から。」
「キョロキョロしてたよね。」
「これ。」
「初日に描いた絵。」
そこには。
教室を見回している陽介が描かれていた。
「ほんとだ……。」
大山が笑う。
「その野次馬に。」
「救われた人。」
「多いと思うよ。」
「みんなの輪に入るきっかけ。」
「作ってくれる感じで。」
河野も頷く。
「私も。」
「救われた一人かな。」
「今みんなと一緒なのは。」
「陽介の野次馬に。」
「巻き込まれたおかげ。」
柳下が笑う。
「自分のことって。」
「分からない時あるよね。」
「でも。」
「他人のことには。」
「めちゃくちゃ敏感。」
宮坂が笑う。
「人の良いとこ見つけて。」
「勝手に騒いで。」
「楽しんで。」
「最前列でニヤニヤしてた。」
最後に江口が肩をすくめる。
「お前の隣にいたら。」
「最高のものが見れるって。」
「みんな知ってるんだよ。」
「野次馬、乙。」
陽介は少し俯く。
「いや。」
「俺はただ。」
「みんなの。」
「かっこいいとこが。」
「見たかっただけで……。」
一瞬静かになる。
「だからそれだよ!」
「野次馬かー。」
「陽介しか出来ない事だね。」
宮坂が笑う。
「って事は!」
「お前がこの中で。」
「一番かっこいいって事じゃん!!」
「うわぁ!」
「野次馬に負けたー!」
笑い声が広がる。
みんな笑いながら境内へ歩いて行く。
陽介だけ少し立ち止まる。
みんなが、『かっこいい』って言ってくれる『俺は』。
みんなの、『かっこいい』ところ『が好き』なだけだったのに。
(ありがとう。)
(少し自惚れてみるよ!)
(かっこいい俺はかっこいいが好き。)
(それで良いんだ。)
陽介は笑う。
「野次馬上等!」
人混みを小走りで走る。
「野次馬参上!」
みんなが振り返る。
ニヤニヤ笑っていた。
西野が頷く。
「なんか良い顔してんじゃねぇか。」
「それでこそ陽介だな。」
御影が手を叩く。
「もう新年迎えちゃう!」
「カウントダウンするよ!」
「十!」
「九!」
「八!」
「七!」
「六!」
「五!」
「四!」
「三!」
「二!」
「一!」
「ハッピーニューイヤー!」
「新年おめでとー!」
「あけましておめでとう!」
河野が笑う。
「あと初詣して。」
「賽銭したら。」
「今日は解散だね。」
「並ぼう。」
「人混みすごいね。」
陽介が口を開く。
「みんな。」
「ちょっと良い。」
みんなが振り向く。
「俺。」
「カメラ……。」
「やってみたいと思ってた。」
「最初に。」
「みんなに聞いて欲しかったから。」
「うまく出来るかわからない。」
「でも。」
「文化祭撮った写真が。」
「凄く楽しかった。」
「どう思う?」
「聞くな。」
「天職かもね。」
「最高の最前列にいる野次馬だもんね。」
「良いんじゃない。」
「まずやってみたら。」
「モデルになったら綺麗に撮りなさいよ。」
「俺の活躍を専属取材させてやるよ。」
陽介は笑った。
みんなと一緒に境内へ並ぶ。
賽銭箱。
カラン。
その日は。
文化祭の写真を見たまま眠りについた。
翌朝。
暑い。
真夏だ。




