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第三十五話 器用貧乏な野次馬


大晦日。

午後十一時。

神社は年越しを待つ人で賑わっていた。


屋台の湯気。

焼きそばの匂い。

遠くから聞こえる除夜の鐘の準備。

二年三組も自然と集まる。


「寒っ。」


「人多いね。」


「あと一時間か。」


宮坂が空を見上げる。


「今年も終わりだな!」


河野が笑う。


「今年、色々あったね。」


「ほんと。」


天野が頷く。


「キャンプ。」


江口が続ける。


「文化祭。」


安西。


「球技大会。」


北見。


「クラス替え。」


「懐かしいね。」


自然と一年を振り返る。

宮坂が笑う。


「来年も楽しみだな!」


「もう高校三年か。」


「早いね。」


陽介はみんなを見回した。


(先生。)

(もっと仲間と話してみろ。)


クリスマス。

みんなと話そうとしてうまく続かなかった。


今日は違う。

今なら聞ける気がした。


「そういえば。」


みんなが陽介を見る。


「みんな。」

「進路決めた?」


少しだけ静かになる。

最初に口を開いたのは西野だった。


「会社。」

「俺は家を作る。」

「帰りたくなる家。」

「そんな家を作る会社。」


「作りてぇ。」


陽介が笑う。


「西野らしい。」


宮坂が続ける。


「俺は!」

「スポーツで行けるとこまで行く!」


みんなが笑う。


宮坂は胸を張る。

「お前らが自慢できる俺になるから!」

「だから自慢して良い!」


「何それ。」


「宮坂らしい。」


笑いが広がる。

その流れで。

みんなも少しずつ話し始める。

それぞれの将来。

それぞれの夢。


陽介はその話を聞きながら笑っていた。


(やっぱり。)

(みんなすげぇな。)


少し黙る。


そして。


「俺、やりたい事。」


少し気まずい。


「まだ決まってないんだよ。」


「だから。」

「みんながいつもより。」

「さらにかっこよく見える。」


天野が首を傾げる。

「やりたい事ないの?」

「何でもこなすのに。」


安西も頷く。

「なんでもなれそうだけど?」


陽介は苦笑いした。

「うーん。」

「大抵の事は出来る気がしてるんだけど。」


「みんなみたいな。」

「一番がないんだよ。」


少し笑う。


「ただの器用貧乏。」


「だから。」

「みんなが羨ましい。」


少し静かになる。

西野が陽介を見る。


「はっ?違うだろ」


陽介も西野を見る。

西野は真っ直ぐ言った。


「お前の一番は器用貧乏じゃねぇだろ。」


「お前の一番は。」

「野次馬なところだろ。」


陽介は固まる。

「……野次馬?」


西野は少し考える。


「こないだ。」

「おかしかった原因はそれか。」


そう言うと。


「先、境内行く。」

一人歩いて行った。

陽介はその背中を見送る。


「野次馬……。」

隣で御影が小さく呟く。


「……あ。」


少し考える。


「野次馬か。」

「なるほどね。」


陽介が振り向く。


「何が?」


御影は首を振る。


「ううん。」

「私も先行くね。」


御影は満足した顔で歩き出す。

(陽介の良いところを一言で言うと野次馬か。)

(まいったな、西野はわかってたんだ。)


陽介だけがその場に残る。

「何なんだよ……。」


その様子を見ていた江口が吹き出した。

「スキル野次馬。」

「ウケる。」

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