第三十四話 ただ一人
クリスマスが終わった。
部屋。
静かだった。
ベッドへ寝転ぶ。
天井を見上げる。
「将来か……。」
ぽつりと呟く。
高校生活をやり直して。
前よりずっと楽しい。
前よりずっと充実している。
でも。
「これで良いのかな。」
少し考える。
西野は会社を作るって言ってた。
あいつらしい。
自然と笑う。
「かっこいいよな。」
少し間。
「みんなも。」
「将来考えてるんだろうな。」
「あいつら。」
「すげー奴らだし。」
天井を見る。
「俺だけか。」
「何もないの。」
静かな部屋。
時計の秒針だけが響く。
その時。
担任の言葉が頭をよぎる。
『もっと仲間と話をしてみろ。』
「話す……か。」
少し考える。
「進路のことでも聞いてみるかな。」
すぐ苦笑いする。
「……なんかダサいよな。」
クリスマスを思い出す。
話しかけようとして。
話題を探して。
空回りした。
「何話せば良いんだよ。」
答えは出ない。
ベッドから起き上がる。
机の上。
文化祭の写真を手に取った。
一枚。
また一枚。
どれも笑っている。
どれも楽しい。
自然と笑ってしまう。
「良い写真だよな。」
ふと。
一枚で手が止まった。
文化祭。
安西、天野、北見。
3人が泣きながら抱き合っている写真。
何度見ても。
この写真だけ違う。
鳥肌が立つ。
「何でだろ。」
写真を近付ける。
構図を見る。
表情を見る。
背景を見る。
「……。」
分からない。
でも。
目が離せない。
写真を机へ置く。
何となくスマホを手に取る。
検索。
カメラ。
新型。
中古。
レンズ。
作例。
レビュー。
「へぇ……。」
また文化祭の写真を見る。
「このシーン。」
「このカメラだったら。」
「もう少し寄れたかな。」
また検索。
また写真。
また検索。
「夜でもこんな撮れるんだ。」
「この色好きだな。」
「これ面白い。」
ページを閉じる。
また別のページ。
気が付けば。
夢中だった。
文化祭の写真を見て。
カメラを見て。
また写真を見る。
それを何度も繰り返す。
時間だけが過ぎていく。
将来のことも。
担任の言葉も。
初詣で何を話そうとしていたのかも。
全部忘れていた。
ふと時計を見る。
「……こんな時間か。」
苦笑いする。
でも。
またスマホを手に取る。
文化祭の写真を横へ置く。
「このシーン。」
「このカメラだったら。」
また考え始める。
静かな部屋。
夜だけがゆっくり更けていった。




