第三十二話 御影の悩みと学期末
二学期期末テストが終わった。
数日後。
担任が教室へ入る。
「補修者。」
一拍置く。
「今回もゼロ。」
教室が歓声に包まれた。
「よっしゃー!」
宮坂が立ち上がる。
江口も珍しくガッツポーズ。
「助かった……。」
安西は笑顔で拍手した。
「これでクリスマス遊べる!」
柳下も笑う。
「年末も。」
大山も頷く。
「初詣もな。」
担任は笑う。
「お前ら。」
「浮かれるのはまだ早い。」
教室が静まる。
「冬休みの課題はちゃんと出す。」
「えぇーーー!」
教室中からブーイング。
担任は苦笑する。
「文句は聞かん。」
そう言って職員室へ戻っていった。
放課後。
教室は一気にお祭り騒ぎになった。
「クリスマスどうする?」
「ケーキ食べたい!」
「初詣行こう!」
「年越しそば!」
「初日の出も見たい!」
話題は次から次へと変わっていく。
陽介はその輪を眺めて笑っていた。
本当に。
楽しそうだった。
その時だった。
パンッ。
教卓を叩く音。
御影だ。
「静かに。」
教室が少しずつ静かになる。
「クリスマス。」
「年末。」
「初詣。」
「全部全力で楽しびたい人。」
全員の手が上がる。
御影は満足そうに頷く。
「なら。」
「冬休みの課題。」
「先に終わらせなさい。」
一瞬静まり返る。
「えぇーーー!」
また教室中から悲鳴が上がった。
江口が机に突っ伏す。
「正論は暴力。」
宮坂が笑う。
「また先生始まった。」
御影は真顔のまま。
「遊ぶ時は。」
「遊ぶ。」
「やる時は。」
「やる。」
「以上。」
西野が腕を組む。
「異議なし。」
柳下も頷く。
「結局その方が楽なんだよな。」
安西は苦笑した。
「先生には逆らえないね。」
「だから先生じゃありません。」
即答だった。
教室に笑いが広がる。
話しながら、
御影は考え込んでいた。
(参上くんの良いところ……。)
(どう言葉にすればいいんだろう。)
どれもしっくりこない。
優しい。
違う。
面倒見がいい。
違う。
観察力がある。
惜しい。
何か違う。
「御影。」
陽介が声をかける。
「最近。」
「なんか悩んでる?」
御影はハッと顔を上げる。
「え?」
「何かあった?」
(あなたのことなんだけど。)
その言葉が喉まで出かかった。
でも言えない。
思わず。
「鈍感!」
教室が静まり返る。
陽介は目を丸くした。
「え?」
「俺なんかした?」
御影は顔を赤くして教室を出て行く。
陽介はその場で固まった。
「……何で?」
沈黙。
そして。
宮坂が吹き出した。
「怒らせた!」
柳下も笑う。
「参上、お前何したんだよ!」
安西も苦笑する。
「ちゃんと謝った方がいいよ?」
北見はクスクス笑う。
「鈍感って言われてる。」
天野も笑った。
「珍しいね。」
大山はコーヒーを飲みながら頷く。
「参上でも怒られるんだ。」
西野だけがニヤリと笑う。
「バーカ。」
陽介は本気で困った顔をした。
「だから。」
「何したんだよ、俺。」
教室中が笑いに包まれた。
クリスマスまで。
まだ少し。
二年三組の冬は。
今日も賑やかだった。




