第三十話 男子と面談となりたい自分
次の日
担任は出席簿を開いた。
「じゃあ男子」
「最初、西野」
西野は静かに椅子へ座る。
「進路は?」
「就職です」
担任は少し驚く。
「大学じゃないのか?」
「うち片親なんで」
「昼は働きます」
少し間を置く。
「夜。」
「定時制の大学行きます」
担任は頷いた。
「大変だぞ」
「はい」
「でも。」
「会社社長になるって決めたんで」
担任は笑う。
「理由は?」
西野は少し昔を思い出す。
「小さい頃。」
「近所に工務店の社長がいたんです」
「あの人。」
「めちゃくちゃかっこよかった」
少し笑う。
「陽介とつるんで。」
「昔なりたかったもん。」
「思い出したんです」
担任は静かに笑った。
「参上か」
西野も笑う。
「はい」
「次、宮坂」
宮坂は元気よく座る。
「進路は?」
「スポーツ推薦で大学行きます!」
担任が笑う。
「その先は?」
「全国行きます!」
「それで?」
宮坂は満面の笑みで答えた。
「陽介に自慢します!」
担任は吹き出した。
「参上にか?」
「はい!」
「あいつ。」
「絶対『すげぇ!』って言うんで」
担任は笑いながら頷いた。
「宮坂らしいな」
「次、江口」
江口は静かに座る。
「進学です」
「将来は?」
「ゲームクリエイターになります」
担任は頷く。
「理由は?」
江口は迷わず答えた。
「人の人生を変える作品を作りたいからです」
少し考える。
「俺のゲーム。」
「陽介が面白いって笑ってくれたんです」
「嬉しかった」
「だから。」
「今度はもっと多くの人を笑わせたいです」
担任は静かに頷いた。
「お前らしい」
「次、柳下」
柳下は少し照れながら座る。
「営業になります」
担任は首を傾げる。
「理由は?」
柳下は少し笑った。
「小さい頃。」
「近所に工務店があったんです」
「西野は社長に憧れてました」
「俺は違いました」
少し照れながら続ける。
「親父です」
「営業やってて。」
「社長と対等に話してる姿が。」
「めちゃくちゃかっこよかった」
担任は黙って聞いている。
「それで営業か」
「はい」
少し間。
「西野。」
「会社社長になるって言ったじゃないですか」
「だったら。」
「俺が仕事持って行ける営業になります」
照れ笑いを浮かべる。
「そのくらい出来なきゃ。」
「陽介超えられないし。」
「西野の隣には俺が立ちたいです」
担任は笑った。
「良い幼馴染だな」
柳下は少し笑った。
「腐れ縁です」
「最後、大山」
大山は穏やかに座る。
「進学希望です」
「理由は?」
「キャンプ場を作りたいです」
担任は少し驚いた。
「キャンプ場?」
「はい」
「資格も取りたいし。」
「経営も勉強したいです」
「どうしてキャンプ場なんだ?」
大山は少しだけ笑う。
「あそこが。」
「初めて認めてもらえた場所だったんです」
担任は静かに聞いていた。
「コーヒーも。」
「キャンプも。」
「全部。」
「みんな褒めてくれました」
照れくさそうに笑う。
「嬉しかったんです」
「だから。」
「今度は俺が。」
「誰かが認められる場所を作りたいです」
担任はゆっくり頷いた。
「ありがとう」
大山は頭を下げて部屋を出た。
男子五人の面談が終わる。
担任は出席簿を閉じる。
女子も。
男子も。
進む道は違う。
夢も違う。
それでも。
十人全員の話に。
参上陽介という存在があった。
本人だけが。
そのことを知らない。
担任は苦笑した。
「さて。」
「最後は、お前だな」
出席簿の最後の名前を見つめた。
参上陽介。




