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第二十九話 女子と面談と将来


放課後。

担任が教卓を軽く叩いた。


「はい。今日は面談をやります」


「一人十分くらい」


「終わった人から帰っていい」


教室がざわつく。


担任が出席簿を見て首を傾げた。


「……あれ?」


「江口と参上は?」


宮坂が笑う。


「あの二人なら写真屋です」


「文化祭の写真現像しに行きました」


教室が笑う。


担任は呆れたようにため息をつく。


「自由だな、あいつら」


少し笑って出席簿を開く。


「まぁいい」


「今日は女子からやるか」



「最初。御影」


「教育学部へ進学したいです」


担任は頷く。


「教師か」


「はい」


「理由は?」


御影は少しだけ考えた。


「勉強会です」


「参上くん達と勉強して。」


「教えるって楽しいんだなって思いました」


少し照れながら笑う。


「教えるのも。」


「教わるのも。」


「どっちも好きになれました」


担任は静かに頷く。


「良い先生になれそうだ」



「次、安西」


安西は椅子に座る。


「進路は?」


「就職です」


担任は頷く。


「でも?」


「アクセサリー作りながらモデル目指します」


「モデル?」


「はい」


安西は笑った。


「かわいいものが好きなんです」


「服も。」


「アクセサリーも。」


「メイクも。」


少し照れながら続ける。


「文化祭やって思ったんです」


「ああいう場所。」


「すごく楽しかった」


少し考える。


「参上くんって。」


「好きなことしてる時、本当に楽しそうなんです」


「だから。」


「私も好きを選びたいなって」


担任は笑った。


「安西らしいな」



「次、天野」


「服飾系へ進学したいです」


担任が頷く。


「実家を継ぐためか」


「はい」


「でも、それだけじゃありません」


天野は真っ直ぐ前を見る。


「着物だけじゃなくて。」


「色んな服を作れるようになりたいんです」


「理由は?」


「参上くんです」


担任が苦笑する。


「また参上か」


天野も笑う。


「参上くんって。」


「好きなものを否定しないんです」


「だから私も。」


「好きと実用性。」


「どっちも大事にしたいです」


担任はゆっくり頷いた。


「お前らしいな」



「次、北見」


北見は少し緊張しながら座る。


「専門学校へ行きます」


「美容か?」


「メイクです」


担任は頷く。


「人を綺麗にしたい?」


北見は首を横に振った。


「違います」


少しだけ笑う。


「その人らしく見せたいんです」


「その人の良いところを。」


「もっと良く見せたい」


「理由は?」


「参上くんです」


担任は思わず笑う。


「またか」


北見も笑った。


「参上くん。」


「人を見るの上手なんです」


「私は。」


「それをメイクで出来る人になりたいです」


担任は静かに頷いた。


「なるほど」



「最後。河野」


河野はいつも通り穏やかだった。


「進路は?」


「まだ迷っています」


担任は頷く。


「でも。」


「なりたい人はいます」


「誰だ?」


河野は少しだけ笑う。


「参上くんです」


担任が小さく笑う。


「また参上か」


河野も笑った。


「彼を中心に。」


「二年三組は回っていたような気がします」


担任は黙って聞いている。


「本人は。」


「気付いてないと思いますけど」


少し間を置く。


「私も。」


「誰かが自然と集まってくる人になりたいです」


担任は静かに出席簿を閉じた。


「ありがとう」


河野は小さく頭を下げる。


女子五人の面談が終わった。


誰も。


「参上のおかげです」とは言わなかった。


それでも。


五人とも。


違う形で参上陽介という存在を語っていた。


担任は誰もいなくなった教室を見渡し、小さく笑う。


「……面白いクラスだ」

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