第二十八話 後夜祭
文化祭が終わった。
片付けも終わり。
二年三組の教室には疲れ切った生徒達が集まっていた。
「終わったなぁ」
宮坂が机に突っ伏す。
「疲れた」
安西も椅子にもたれ掛かった。
その時。
担任が教室へ入ってくる。
「お疲れさん」
手には大量の箱。
「ピザだ」
教室が一気に沸く。
「マジ!?」
「先生最高!」
担任は笑っている。
「経費では落ちなかった」
「だから自腹だ」
さらに歓声が上がる。
「いただきます!」
箱が開く。
湯気。
チーズの香り。
宮坂が真っ先に手を伸ばした。
「おい」
御影が止める。
「一人で三枚取るな」
「バレた」
爆笑。
河野が自然と取り分け始める。
大山が飲み物を配る。
柳下は紙皿を並べる。
いつもの二年三組の風景がそこにあった。
「それにしても」
安西がピザを頬張りながら笑う。
「優勝しちゃった」
「今さら?」
北見が笑う。
「まだ実感ない」
天野も頷く。
「私も」
江口は満足そうにピザを食べていた。
「当然だ」
「なんでお前が偉そうなの」
安西が笑う。
教室も笑った。
柳下が西野を見る。
「そういえばさ」
「団長」
「好きな人いるんだろ?」
西野の手が止まる。
「言わねぇ」
「教えろよ」
「言わねぇ」
「ケチ」
宮坂まで乗っかる。
「気になる」
「言わねぇ」
安西も笑う。
「同じ学校?」
「言わねぇ」
「年上?」
「言わねぇ」
「先生?」
「言わねぇ!」
西野はため息をついた。
「俺はな」
少しだけ真面目な顔になる。
「なりたい自分になるために今必死なんだよ」
教室が静かになる。
「そんな好き嫌いの話してる余裕ねぇ」
少しだけ空気が変わる。
陽介が聞いた。
「なりたい自分って?」
西野は迷わず答えた。
「会社社長」
少し沈黙。
安西が首を傾げる。
「小学生か?」
教室が爆笑した。
「なんでだよ!」
西野のツッコミに。
さらに笑い声が大きくなった。
担任はその様子を見ながら笑う。
陽介も笑っていた。
文化祭は終わった。
でも。
この何でもない時間こそ。
きっと忘れられない思い出になる。
そう思った。




