第二十四話 お披露目
文化祭前日。
放課後。
二年三組の教室にはまだ人が残っていた。
メイク道具。
スケッチブック。
文化祭の準備も大詰めだった。
「できた」
天野が言った。
教室が静かになる。
黒髪の安西が試着室代わりの空き教室から出てきた。
誰も声を出さない。
女子達が最初に反応した。
「すご……」
「かわいい」
「めっちゃ似合う」
「やば」
素直な感想だった。
天野は少しだけ安心した顔をする。
北見も満足そうだった。
衣装。
メイク。
髪型。
全部が一つになっていた。
その時だった。
江口が立ち上がる。
震えている。
「実在した……」
教室が静かになる。
「実在した……」
もう一回言った。
そして。
天野へ向かい歩き出す。
「ありがとう」
「本当にありがとう」
泣いていた。
「俺のヒロインが……」
「実在した……」
天野が少し引く。
「近い」
江口は構わない。
握手しようと手を伸ばす。
その瞬間。
大山と西野が動いた。
「それはアウト」
「アウトだな」
両脇を掴まれる。
「離せ!!」
「感謝だぞ!!」
「気持ち悪い」
御影が即答した。
連行された江口を、
誰も助ける事はなかった。
少し笑いが落ち着く。
御影が周囲を見る。
「男子もなんか言いなさいよ」
静かになる。
西野が言った。
「陽介、お前の出番だ」
「え?」
陽介が固まる。
「なんで俺」
西野は即答した。
「今の安西に応援はいらない」
安西を見る。
「もう覚悟決まってる」
少し間。
「だから俺じゃない」
続ける。
「大山と麟太郎は気の利いた言葉なんて言えるわけない」
「宮坂はバカだし」
「江口は気持ち悪いスイッチ入ってる」
「否定できない」
御影が呟く。
そして西野は陽介を見る。
「お前しかいないだろ」
陽介は頭をかいた。
「しょうがねぇな」
立ち上がり、
一歩前へ出ようとした。
その瞬間だった。
宮坂が前に出た。
全員が見る。
宮坂は安西を見ていた。
ただ真っ直ぐ。
そして。
「……綺麗だ」
静かだった。
誰も喋らない。
宮坂自身も。
それ以上何も言わない。
ただ見惚れていた。
安西の顔が一気に赤くなる。
「なっ……」
言葉が出ない。
教室。
沈黙。
そして。
爆発した。
「お前それ言えるのかよ!!」
「宮坂ぁぁぁ!!」
「天然怖ぇ!!」
「バカのくせに!!」
「最後だけイケメンか!!」
宮坂は首を傾げる。
意味が分からなかった。
安西は顔を真っ赤にしたまま叫ぶ。
「うるさい!!」
さらに笑いが起きた。
陽介はその様子を見ながら肩をすくめる。
「俺の出番なくなったな」
西野も笑った。
「だな」
文化祭本番まで。
あと一日。




