第二十話 ぬるスクP2パーティー衣装
担任が出席簿を閉じる。
「文化祭の質問ありますか」
教室は静かだった。
誰も手を上げない。
担任は続ける。
「毎年ミスコンがあります」
男子が少しざわつく。
安西が反応した。
「きたーー!!」
担任は去年の写真を見せた。
歓声。
ステージ。
スポットライト。
去年の優勝者。
「へぇ」
「レベル高いな」
「すご」
教室が少し盛り上がる。
担任は言う。
「参加は自由です」
その瞬間。
教室中の視線が安西へ向いた。
「なんでアタシ!?」
陽介。
「いやまぁ」
西野。
「妥当」
宮坂。
「順当」
安西
「ムカつく!!」
でも少し嬉しそうだった。
担任は肩をすくめる。
「出たい人が出れば良いです」
「先生やる気なさすぎ」
「毎年そうだから」
その時だった。
江口が手を上げる。
「先生」
「なんだ」
「服装は自由ですか?」
担任は少し考えた。
「常識の範囲なら」
その瞬間。
江口の目が変わった。
陽介が呟く。
「始まった」
安西が嫌そうな顔をする。
「何?」
江口は立ち上がった。
「実写にしたい衣装があります!!」
御影が顔を覆う。
「嫌な予感しかしない」
陽介。
「分かる」
江口は机を叩いた。
「『ぬるぬるスクールパラダイス2』パーティ衣装です!!」
教室。
沈黙。
陽介。
「タイトル終わってる」
御影。
「終わってるわね」
江口は負けない。
「違う!!」
「そこはエロシーン前だから服装はまともなんだ!!」
陽介。
「その説明が一番ダメだろ」
爆笑。
北見はすでにノートを開いていた。
鉛筆が走る。
サラサラ。
サラサラ。
数分後。
北見がノートを見せた。
フリル。
リボン。
クラシカルなデザイン。
派手すぎない。
むしろ上品だった。
安西が覗き込む。
「……あれ?」
「普通に可愛いじゃん」
江口が机を叩く。
「だろ!?」
急に早口になる。
「パーティ編だから露出より世界観重視で!」
「キャラ設定も良いし!」
「ストーリーも最高で!」
陽介。
「オタクが加速した」
北見も頷く。
「文化祭なら映えると思う」
「確かに」
安西が現実的なことを言った。
「でも高そう」
教室が静かになる。
御影。
「既製品なら結構するんじゃない?」
宮坂。
「予算足りなくね?」
江口。
「公式衣装は高い……」
急に弱くなる。
陽介が笑った。
「現実に負けた」
少し沈黙。
その時だった。
「……作れば良いんじゃない?」
教室が止まる。
陽介。
「誰が?」
天野だった。
本人も不思議そうな顔をしている。
「私?」
全員。
「できるの!?」
天野はラフを見る。
少し考える。
「型紙あれば」
「たぶん」
江口が立ち上がった。
椅子が吹っ飛ぶ。
「マジで!?」
「布は!?」
「素材は!?」
「再現度どこまでいける!?」
陽介。
「オタク特有の早口」
天野は北見のラフを見ながら答える。
「これなら」
「動きやすいように少し変えれば」
「いけると思う」
江口。
真顔。
「天才だ」
安西。
「いや普通にすごくない?」
河野。
「何でできるの?」
天野は首を傾げる。
「旅館で着物直したりするし」
教室。
再び静止。
陽介が呟く。
「また知らないスキル出てきたな……」
御影がため息をつく。
「本当に何でもできるわね、このクラス」
江口は本気で衣装の話をしている。
北見はさらに細部を描き始めた。
安西は鏡を見ながら考えている。
天野は北見のラフを見ながら構造を確認していた。
もう頭の中で段取りを組み始めている。
「採寸、三面図、型紙」
「昼間は家庭科室、夜は家のミシン」
「ギリギリ間に合いそうかな」
陽介はそんな教室を見回す。
四月には。
ただの他人だった連中。
今は違う。
誰かが思いつく。
誰かが形にする。
誰かが面白がる。
陽介は小さく笑った
「文化祭」
「絶対面白い」




