第十八話 団長代理 柳下麟太郎
「麟太郎、ちょっと来い!」
「悔しいか?」
「……当たり前だろ!」
西野は柳下をじっと見た。
「敵は取る。」
「だから、団長代理お前やれ」
「え?宮坂のが向いてるよ。」
「うるせえ、お前に頼みたいんだよ」
西野の目は真剣だった。
「任せたぞ」
「やれるだけはやる」
そして、
「安西!」
「頼む、女子をまとめろ」
安西
「いきなり何?」
「麟太郎に団長代理頼んだ。サポート頼む。空気も変えてくれ」
「ん、もう。わかった」
「やってみる」
西野は陽介に声をかけた。
「陽介。勝つぞ!」
「当然」
柳下団長代理の横に大山が立っていた。
人前は苦手だと言っていたのに。
そして宮坂が旗を振っている。
柳下
「二年三組応援歌を、団長に捧げる!行くぞー!」
喉がいたい、裂けるような痛みが走った。
だが構わない。
明日、声出なくても良い。
今を、最高の瞬間に。
西野は驚いた顔で陽介をみる。
「ヤベェな、あれ」
「気合い入るな」
陽介目を輝かせて言う。
「……マジでかっこいい」
「羨ましいよ。」
陽介はボソッと言った。
「陽介!花はお前に持たせてやる。」
「応援もリレーも優勝するぞ」
「俺が一番に走る。アンカーは任せた。」
陽介は手を挙げて応える。
西野はスタート位置に立った。
応援席からは割れるような声援。
応援団リレー。
スタート位置。
西野は深く息を吐いた。
周りを見る。
二年三組。
みんなこっちを見ている。
「団長!!」
「頼んだぞ!!」
「勝ってこい!!」
思わず笑みがこぼれそうになった。
慣れない。
こんなに応援されるのは。
ずっと。
面倒事の中心にいることはあった。
誰かに期待されることなんて無かった。
だから。
走る。
ただ、それだけだった。
号砲。
西野が飛び出した。
速くはない。
宮坂みたいな脚も無い。
でも。
誰よりも真剣だった。
「行けぇぇぇ!!」
歓声が背中を押す。
苦しい。
肺が焼ける。
足も重い。
それでも。
前へ。
前へ。
そして。
二位でバトンを繋ぐ。
「頼んだ!!」
二走。
三走。
仲間達が繋いでいく。
誰も諦めない。
歓声は途切れなかった。
そして。
アンカー。
陽介。
バトンを受け取る。
静かだった。
周りの音が消えたみたいに。
ただ前だけを見る。
真っ直ぐ。
ゴールだけを見る。
無心だった。
何も考えていない。
ただ走る。
それが気持ち良かった。
歓声。
風。
土を蹴る音。
全部が遠い。
そして。
最後の直線。
並ぶ。
追いつく。
抜く。
抜かれる。
並ぶ。
ゴール。
歓声が爆発した。
「どっちだ!?」
「分かんねぇ!!」
結果は誰にも分からなかった。
ほとんど同時だった。
結果。
同着一位。
二年三組が揺れた。
「うおおおおおおお!!」
応援合戦。
結果発表。
二年三組。
圧倒的勝利。
誰もが確信していた。
団長。
団長代理。
副団長。
副団長代理。
そして。
二年三組全員で勝ち取った勝利だった。
総合順位。
一位。
三年一組。
一位。
二年三組。
同点。
歓声が止まる。
先生達が話し合う。
そして。
発表。
総合優勝。
三年一組。
相手は三年。
規定により優勝が決まった。
二年三組。
総合二位。
静かになる。
でも。
誰も下を向かなかった。
悔しくないわけじゃない。
でも。
不思議と。
悔しさより先に来るものがあった。
やり切った。
全力だった。
最高だった。
西野が振り返る。
二年三組がいた。
柳下は貧血で倒れている。
しかしみんな笑っていた。




