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第十七話 下を向くんじゃねぇぇぇぇ!!


体育祭当日。

快晴。

絶好の体育祭日和だ。


開会式前。


二年三組はグラウンドの端に集まってる。

担任が出席簿を持っていつも通りの感じで言った。


「怪我しないように」

「以上です」


江口が手を上げた。


「先生」


「なんだ」


「今日みんな頑張るんで」

「ジュースお願いします」


江口、目が真剣だった。


担任は即答した。

「嫌です」

「教師の給料なめるな」


そこで陽介が言う。

「総合優勝なら?」


担任が少し考える。

二年三組を見る。

妙にやる気満々だった。


「……総合優勝なら」


担任の目の奥に何やら怪しい光が灯った。


「ピザ、つけてやる」


「うおおおおおおお!!」

二年三組は激しく揺れた。


「今ピザって言った?」


「言ったな」


「言った」


「証人いるぞ」


「録音した?」


「してない」


「何やってんだよ!!」


爆笑。


「後で無しとか言うなよ!?」


担任はため息をしながらが笑って言った。

「面倒なクラスになったな」



開会式が終わる。

競技開始前。


西野を中心に円陣を組んだ。

みんな目が真剣だ。


「おい!!」

「走れるやつは走れ!!」

「遅いやつは声出せ!!」

「担任は金出せ!!」

「何もねぇやつは勝利を祈れ!!」


「行くぞぉぉぉぉ!!」


「おおおおおおおお!!」


歓声が響いた。

担任は財布を確認していた。



体育祭が始まる。


「行けぇ!!」

「そこで抜け!!」

「まだいけるぞ!!」

「諦めんな!!」


西野は朝から全力で声を張り上げていた。


気付けば。


「団長!!」

「団長勝った!!」

「団長次どうする!?」

「団長水飲め!!」

「団長喉枯れてんぞ!!」


あのヤンキーの西野は団長と呼ばれていた。


「うるせぇ」


安西が笑う。


「もう完全に団長じゃん、頼もしい」


「うるせぇ」


でも少しだけ笑っていた。


休憩時間。

日陰で団長は水を飲んでいた。


そこへ御影が来る。

無言で何かを差し出した。


「ん?」


整髪料だった。


「何だこれ」


「髪」


「は?」


「汗で乱れてる」


団長が前髪を触る。

汗で乱れている。


御影は続ける。


「あなたのトレードマーク」

「直した方が良いかなって」



団長。

少し驚きながら


「ありがとう」


整髪料を受け取る。


「気合い入った」


御影も少しだけ笑った。


午後。

順位発表。

二年三組、総合三位。


「惜しい!」

「まだいける!!」


残るはクラス対抗リレー。

全員がコースを見る。

みんな必死だ。


そして、一位で柳下にバトンが渡る。

歓声が上がった。


「柳下ぁぁぁ!!」

「行けぇぇぇ!!」


柳下は歯を食いしばった。

速くない。

そんなことは自分が一番知っている。


それでも。

前だけを見る。


一人抜かれた。

歓声がさらに大きくなる。


もう一人。

苦しい。


でも、足は止めない。

この後、宮坂がいる。


あと少し。

あと少しだけ。


そして。

もう一人。


順位が落ちる。

悔しい。


それでも。

前へ。

宮坂へ。


「任せた!!」


柳下が叫ぶ。

宮坂は振り返らない。


「任された!!」


歓声。

全力疾走。

一人抜く。

二人抜く。

早い。

歓声が加速する。


「行けぇぇぇ!!」

「あと一人!!」


前との差が縮まる。


あと少し。


あと一歩。


届く。

そう思った。


そして。


ゴール。


惜しくも二位。

あと一歩届かなかった。

総合順位も二位。


宮坂が膝に手をつく。


「くそ……」

「任されたのに……」


下を向く。

柳下も何も言えなかった。


その瞬間だった。


「下を向くんじゃねぇぇぇぇ!!」


グラウンドに響く声。

全員が振り返る。

団長だった。


「まだ終わってねぇだろ!!」


静かになる。

団長は前を指差した。


応援団リレー。

最後の競技。


「ここからだ!!」


宮坂が顔を上げる。

柳下も前を見る。


誰も下を向いていなかった。


二年三組の視線は全部。


最後の競技へ向いていた。


応援団リレーが始まろうとしていた。


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