第十四話 海
八月。
海。
青空。
照りつける日差し。
そして。
「あっっっつ!!」
陽介が砂浜で叫んだ。
今日集まれたのは六人。
安西ひまり。
西野。
御影。
江口。
北見。
そして陽介。
本当はもっと来る予定だった。
でも。
河野は兄弟の子守り。
天野は実家の手伝い。
宮坂は県大会。
柳下は母親の実家へ遊びに行っている。
大山も今日は別行動だった。
夏休み後半。
意外とみんな忙しい。
陽介は、
パラソルの下でスマホを見ていた。
グループメール。
『河野、今日も来れないって』
『弟達見るらしい』
すると。
数秒後。
新着。
大山
『今日は弟達と釣り』
グループが止まる。
ひまり
『は???』
江口
『いつの間に』
陽介
『待って待って待って』
西野
『保護者二人で動いてんじゃねぇか』
完全にざわついた。
さらに。
写真が送られてくる。
川。
子供達。
釣竿。
その後ろで。
大山が普通に子供達の面倒を見ていた。
撮影は河野らしい。
陽介は腹を抱えて笑った。
「進展してるぅぅぅ!!」
御影。
「うるさい」
でも少し笑っていた。
海では。
ひまりが水着姿で腕を組んでいた。
「なんか違うんだよなー」
陽介。
「何が?」
「もっとこう」
「海のギャルになる予定だった」
「十分海のギャルだろ」
でも。
ひまりは首を傾げる。
周囲を見る。
家族連れ。
子供達。
浮き輪。
焼きそば。
そして。
「うおおおおお!!」
遠くから宮坂の声が聞こえた気がした。
「いや違うな」
「県大会だった」
自分で突っ込んで、
陽介は笑った。
その時。
海の向こうで。
西野が泳いでいた。
速い。
異様に速い。
しかも。
バタフライ。
ひまり。
「なんでアイツ競泳してんの!?」
陽介。
「海との戦い始まってる」
しばらくして。
西野が戻ってくる。
びしょ濡れ。
爽やか。
ひまり。
「イメージ違うんだけど」
西野。
「泳げる時に泳ぐだろ」
意味不明だった。
でも。
ひまりは少し笑った。
「……まぁ、これもありか」
なんだかんだ楽しそうだった。
その横で。
江口は挙動不審だった。
海の女性達を見ている。
陽介。
「お前、視線が犯罪」
江口。
「違う」
「観察」
ひまり。
「もっと危ないわ」
でも。
江口は真剣だった。
「あの麦わら帽子と白ワンピ」
「帰省先で再会した幼馴染感ある」
陽介。
「急にシナリオ始まった」
さらに。
別の女性を見る。
「あっちは」
「普段クールな先輩が海ではしゃぐギャップ」
北見。
「なるほど」
メモ。
陽介。
「描くな描くな」
北見。
「資料だから」
江口は止まらない。
「海って」
「シチュエーションの宝庫なんだよ」
ひまり。
「キモ」
陽介。
「でもちょっと分かる」
御影。
「分かるな」
ひまり。
「先生まで何言ってんの!?」
笑いが起きる。
その時。
江口の視線が止まった。
ひまり。
水着。
日差し。
海。
江口は真顔だった。
「……王道強いな」
ひまり。
「何その感想」
北見は、
もう描いていた。
陽介は笑う。
海で本気で泳ぐ西野。
シチュエーションを語る江口。
描き続ける北見。
保護者みたいな御影。
なんだかんだ楽しそうなひまり。
そして。
グループメールでは。
大山と河野が、
弟達と魚を釣っている。
天野は店を手伝っている。
宮坂は県大会で暴れている。
柳下は親戚の家でスイカを食べている。
海には来ていない。
でも。
みんなそれぞれ夏をやっていた。
陽介は空を見上げる。
青空。
白い雲。
照りつける日差し。
スマホには、
次々と通知が流れている。
前の人生では。
こんな夏休みじゃなかった。
陽介は笑った。
「……夏してんなぁ」




