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第十五話 花火と学校と夏の終わり


八月終わり。

夏休み最後の日曜日。


花火大会当日。


駅前は、

昼の時点で人だらけだった。


『人多すぎ』


『無理』


『暑い』


二年三組のグループメールは、

開始一時間で阿鼻叫喚だった。


その時。

陽介が送る。


『学校来い』


数秒。


『は?』


『なんで』


『嫌な予感しかしない』


『説明しろ』


陽介は送った。

『秘密スポット』


夕方。


二年三組は、

なぜか学校へ集まっていた。


校門。

夏空。

蝉の声。


ひまりが呆れる。


「なんで花火大会なのに学校なの?」


陽介はニヤニヤしている。

「秘密スポットだから」


グラウンド。

そこには。

簡易テーブル。

バーベキューセット。

椅子。

飲み物。


そして。

真正面に花火会場が見える、

完璧なアングル。


ひまり達が叫ぶ。

「え、ヤバ!!」


江口。

「めちゃくちゃ見える……」


御影。

「人少ない……最高……」


陽介は得意げだった。

「学校に申請した」


西野。

「何やってんのお前」


陽介は笑う。

「夏休み最後くらい」

「全員でゆっくりしたかった」


少しだけ。

空気が静かになった。


大山は折り畳み椅子を大量に持ってきていた。

「座るとこないとダルいし」


河野が笑う。

「ありがとう」

「弟達いるから助かる」


その横では。

河野の弟妹達が走り回っていた。

完全に馴染んでいる。


陽介はニヤニヤする。

「うわぁ……」


御影。

「顔がキモい」


笑いが起きた。


ひまり達は、

大量のお菓子を広げていた。


「ポテチ持ってきた!」

「チョコ溶けた!!」

「焼きそばも食べたい!」


相変わらずだった。


西野は黙々と荷物を運んでいる。


コンロ。

炭。

飲み物。

全部持つ。


宮坂が笑う。

「力仕事全部やってんじゃん!」


西野。

「うるせぇ」

「お前は落ちるな」


その頃。

宮坂は高鉄棒で大車輪していた。


夕焼け空。

グラウンド。

大車輪。


意味が分からない。


ひまり。

「なんで今それやってんの!?」


宮坂。

「テンション上がると回りたくなる!!」


陽介。

「理解できる気がする」


御影。

「できるな」


天野。

「できないよ!?」


久しぶりに全員で笑った。


江口は花火より先に、

周囲を見回していた。


「この距離感」

「青春ゲームの終盤感あるな……」


北見。

「採用」


即答。


陽介。

「お前らほんとブレないな」


柳下は、その様子を見ながら笑っていた。


日が落ちる。

炭に火が入る。


肉の音。

ジュース。

笑い声。


そして。


ドンッ――。


夜空に。

最初の花が咲いた。


「おぉぉぉ……」


自然に歓声が漏れる。

校舎越しに見える花火。


グラウンドの風。

芝生の匂い。


全部。

今しかないものだと思えた。


河野の弟妹達が、

花火を見て騒ぐ。


大山が小さい子にジュースを渡す。


天野は、

うちわで髪を押さえながら笑っていた。


御影は、

人数確認する癖がまだ抜けていない。


ひまりは、

花火より肉優先。


西野は、

黙々と焼いている。


宮坂は、

なぜかまだ汗をかいていた。


陽介は少し離れた場所から、

みんなを見ていた。


キャンプ。

球技大会。

勉強会。

夏祭り。

海。


全部思い出す。


この夏。

本当にずっと一緒にいた。


その時。

大山が小さく言った。

「……ここ、楽だな」


「?」


「人、多くないし」

「見られない」


陽介は少しだけ黙った。


クラスでは、もう普通だった。

でも世間では違う。


大山は今でも、

自分の顔を気にしてしまう。


陽介は笑った。

「でも今」

「お前、普通にかっこいいぞ」


大山。

「……うるせぇ」


少しだけ笑っていた。


夜空に。

大きな花火が咲く。

その光の下で。

二年三組は笑っていた。


来週から二学期。

また学校が始まる。


でも。

この夏があった。


だから。


陽介は花火を見上げる。

これは、夏の終わりを告げる合図で、秋の始まりを告げる合図。


少しだけ。

寂しくて。


でも。

次が待ち遠しくなる。

そんな匂いがした。

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