表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の兄  作者: 木こる
11/24

第十一勇

「逃げんじゃねえぇ!!」


賢い選択をした山賊が首領に捕まり、戦地へと引き戻された。


「…おい上の連中!! 手ぇ止めてんじゃねえぞ!!

 あのガキはぶっ殺して構わねえ!!

 味方に当たろうが気にせず撃ちまくれ!!」


高所の弓兵は人質や味方を気にして撃たないのではなく、

エイルの奇襲を受けてそちらの対応に忙しかった。


「聞こえてねえのかよクソが……

 おい、テメェら早速出番だぞ

 山賊に憧れてたんだろ?役に立ってこいよ」


「俺はまだ新入りなので見学だけにしようかなぁと……」

「僕は回復専門なので直接殴り合うのはちょっと……」

「私は夜なら役に立てます」


「このクソどもがあぁ!!」


首領は男2人の頭を鷲掴みにし、中央で衝突させた。

その一撃で頭部が破壊され、2人は物言わぬ屍と化した。


「おい教頭さんよぉ 話が違げぇじゃねえか……

 生身で俺様並みに戦える生徒がいるなんて聞いてねえし、

 あのケモノ野郎も相当強えよなあ?

 まさか騎士団の回し者じゃあねえだろうなあ?」


「ちっ、違う!あれはうちの生徒じゃない!

 彼らはたまたま船で知り合っただけの旅人だ!

 少し世話になったからお情けで乗せてやっただけだ!」


「ふん、まあいい……

 もう半壊しちまってるし、計画は失敗だ

 ここを凌いだら兵隊揃えてまた出直しだな」


「そ、その時は是非また私も計画に参加させてくれ!

 私には頭脳と人脈がある! 役に立つぞぉ?フハハハハ!!」


「…ぁん?オメェに次なんてねえよ」


「えっ……?」


教頭の心臓を拳が貫いた。

彼は自分の身に何が起こったのか把握する前に絶命した。


首領は腕についた汚い血を拭いながら、

近くにいた指示待ちの山賊に話しかけた。


「…おい、俺様は秘密の拠点から援軍を連れてくる

 とりあえずオメェを指揮官代理に任命してやっから、

 俺様が戻ってくるまでこの場を死守しろよ?」


「お、親分……!! 秘密の拠点なんてあったんですね!?

 全然知りませんでした!! とにかく全力で頑張ります!!」


「……おい女ァ!俺様と一緒に来い!!

 それと盾の奴!特別にオメェもだ!!」


名前を覚えていない下っ端の山賊に残務を押し付け、

首領は勝ち目の薄い戦場から逃げ去った。




上の敵を全滅させたエイルは高所からの援護射撃で加勢した。

アッシュは防御したが、当たるのは敵ばかりで自分に対する殺意を感じない。

敵に寝返ったはずのエイルがなぜ助けてくれるのか理解できなかった。


「ロゼ!! 預かってるモン投げ……いや、落とすぞ!!」


そう言ってエイルは高所から盾兵の頭上に斧を落とした。

盾兵はガードしたが予想外の重量にやられて骨を折り、悲鳴を上げた。

モリガニ素材は鉄より硬い。そして鉄より重かった。


斧を手にしたロゼの狩り効率は加速した。

相手が剣や盾で防ごうが、それごと人体を真っ二つにしてしまうのだ。

武装した人間を斬るのは初めてではないが、予想以上の威力に本人も驚いた。


恐怖で逃げ出そうとした山賊を止める者がいた。

首領から指揮官代理を任命された下っ端だ。

役職を与えられた彼は責任感から潜在能力が開花し、

味方の足を引っ張ることに長けるリーダーとして覚醒したのだ。


イカれた斧使い、暴れる獣人、的確に頭を撃ち抜く弓手、無能なリーダー。

彼らの功績により総勢100人以上で構成されていた山賊団は壊滅した。

秘密の拠点などあるはずがなく、生き延びたのは元首領と元護衛たちだけだ。


勇者一行は魔法学校の生徒たちを守り抜いた。




「──こんなに汚してすまない 後で洗って返すよ」


「あ、いえ 新しいの買うからいいです……」


ロゼは制服を借りた男子に謝った。

返り血で全身ビショビショになり匂いも酷い。

たとえ綺麗になっても、もう着ようとは思わないだろう。


「…そんじゃエイルさんは裏切ったわけじゃないんですね?

 そういうのは最初に教えといてくださいよもお〜!

 オイラ本気で信じちゃったじゃないですか〜!」


「へへっ、悪りいな 時間がなかったもんでな

 本当に裏切る奴らが出たのは想定外だったが、

 結果的に全員無事で良かったぜ」


アッシュとエイルが和解した。


「私が解除した魔法封印の罠ですが、

 やはり結界の知識が深い術者の仕業で間違いありませんね

 状況的に考えれば教頭先生が仕掛けたものでしょう

 証拠集めなどの後処理は魔法学校の皆さんにお任せします」


ワイトは教師たちと話し合っている。


「はは、さっきはみっともない姿を晒してしまったね

 でもあれはボクの本当の姿ではないんだ

 封印が解けた今のボクは無敵だよ」


「オードの野郎、本当にみっともなかったぜ……

 ママ〜とか言っちゃってワーワー喚いたりしてさ!」


「しかもピーマン食えねーでやんの!

 そんくらい食えよなー ガキじゃねーんだからよー」


オードの取り巻きが離反した。


「みんな、怪しい薬物に手を出すのは危険だから絶対にやめた方がいい

 若い君たちは特にそうだ

 耐性がないから効果が強く出るし、依存性も高い

 やめたいと思ってもやめられない体になってしまうんだ

 それに、あんな風にはなりたくないだろ……?」


ヴィオが生徒たちに薬物の危険性を語り出した。

彼が指差した方向には縛られた少女の姿があった。


「ロゼ…… アタシを連れ込んでどうする気!?

 触手なんて生やしちゃって何がしたいの!?

 内容によっては断らせてもらうかんね!?」


「誤解を招く発言はやめてくれ……」


山賊撃退後、しばらく待ってみたがミズキの錯乱状態は治らなかった。

心配して登ってきた生徒に症状を見られてしまい、

隠し通せるものではないと悟って馬車まで運んだ。

専門家の見立てでは、あと半日ほどこれが続くらしい。




その後はゴブリンの群れに囲まれたりもしたが、

魔法を解禁された生徒たちの協力もあって

特に苦労することなく順調に進んだ。


そして彼らは辿り着いた。


300年の歴史を持つ学びの殿堂、魔法学校。

大陸内外から選りすぐられた名家の子息・息女が集められ、

お互いに切磋琢磨して知識と技術を高める場……のはずだが、

オードをはじめとした上級貴族の面々にとっては

他者を蹴落として悦に浸る場として機能しているようだ。


時刻はもう日没前で、船や山道での戦いのお礼として

勇者一行はここに滞在する許可を与えられた。

お言葉に甘え、旅に参加できる魔法使いが見つかるまで世話になることにした。


その夜、早速候補が1人見つかったという知らせが届いた。

その人物は山賊との一件で恥ずかしい思いをし、

学校に居づらくなって辞める決意をしたのだと言う。

今後は勇者の使命に助力し、誰にも恥じない生き方をしたいそうだ。


「皆さん、どうかよろしくお願いします……!」


その人物はミズキでもオードでもなく、若い教師だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ