013食事、被虐
お腹の虫の音が鳴る。
それを聞いてミハは顔を耳まで真っ赤に染め上げた。
その様子を尻目にタクミは革袋をごそごそと漁り始める。
取り出したのは幾つかの果実だ。
キウイフルーツの様な繊維質の黒い皮に覆われた果実やタクミがこの世界に来て初めて食したドラゴンフルーツに類似した果実等いろいろな種類がある。
その内一つ、黒い皮の丸っこい果実をタクミは二つに割る。
透明の果汁が滴る。
現れたのは赤と白のグラデーションを描きルビーの様に透過し煌めく果肉。
タクミは二つに割った片方の果実を齧り飲み込む。
そしてもう片方の果実をミハへと手渡した。
ミハは両の手で受け取ったそれをまじまじと見つめ、顔へと近づける。
赤い果実の癖のない甘い香りがミハの鼻孔を擽った時、ミハは無意識にかぶりついた。
パイナップルの様な繊維質の食感と桃の様な甘さが口内に広がる。
一度食べ出したミハの手は止まらない。
物の十数秒で果実を食べ終える。
タクミはその様子を見ながら皮を剥いていた果実をミハへと手渡す。
ミハは手渡された大きな白い果実を躊躇いなく租借し嚥下していく……。
――そうして幾つかの果実を食べ終えたミハは涙と鼻水と果汁でぐちゃぐちゃになった顔をタクミの握る植生の綿で拭き取られていた。
「ミハ美味しかった?」
眼を充血させ瞳をうるませるミハはタクミの問に小さく頷く。
その様子を見てタクミは微笑む。
タクミはこの世界で初めて果実を口にした時のことを想起していた。
まだ数日しか経っていないのにその記憶を遠い記憶のようにタクミは感じた。
タクミは再びごそごそと革袋を漁り出す。
ミハは好奇の眼差しでその様子を見つめる。
そしてタクミが取り出したのは臓器を縫い留め作られた袋。
タクミがそれに手を突っ込み内容物を取り出した時、ミハの時間が止まった。
出てきたのは黒い体色の芋虫。
タクミはそれを至極当然の様に自分の口へ運び租借し飲み込む。
ミハの体に悪寒が走る。
タクミは再び袋から芋虫を取り出し、今度はミハの方へと近づける。
「むりむりむりむりむりむりぃ!」
ミハは必死の形相で拒否する。
「タンパク質も取らないとダメ」
タクミは引き下がらない。
ミハは必死に逃れようとするがタクミの左手がミハの腰へ回り体を固定される。
徐々にミハの口元へ近づく芋虫。
「んー」
ミハは最後の抵抗にと眼と口を固く結び顔を背ける。
その様子にタクミの眼が座る。
タクミは無自覚に少しの怒り覚える。
食べたくても食べる物がない、生きたくても生きる力がない、ミハの行動はそんな選択しすらない者達を侮辱しているようにタクミに映った。
タクミは少しの逡巡の後、動き出す。
突如、体が地面へと仰向けに押し倒される感覚にミハは驚く。
ミハは混乱したまま恐る恐る薄目を開ける。
そこにはミハの眼をまるで汚物を見るように見つめるタクミの姿があった。
その眼を見たミハはタクミに短絡的に逆らった己の浅はかさを後悔する。
だがもう手遅れだった。
ミハの両手はタクミの左手で拘束され、下半身は腿の間にあるタクミの右足が動くのを許さない。さらに、頭さえもタクミの右手に押さえつけられ自分の意思で動かすことは叶わない。
そうして完全に拘束されたミハの唇へタクミの唇が触れる。
タクミの香りがミハの鼻孔を蹂躙する。
抵抗を封じられ体を好きにされる感覚にミハの脳内は被虐で塗り潰され全身から力が抜け落ちた。
タクミの舌がミハの唇を邪魔だと押しのけ口を開かせる。
そしてタクミの口内で租借された唾液交じりの虫だった物をミハの口内へと流し込んだ。
ミハはタクミの行動の全てを抵抗せず受け入れ、口内に運ばれてくる物をただひたすら嚥下し続ける。
それは芋虫三匹分がミハの口内へ流し込まれるまで続いた。
――最後にミハの口内を指でこじ開け流し込んだ物を全て飲み込んでいること確認しタクミはミハへの拘束を解いた。
それから暫くの間ミハはぐったりとした状態で時折びくっと痙攣しながら虚ろな眼差しで虚空を見つめていた。




